卒業式の後で(銀八)
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「私が平気だと思った? 感傷的になれない、非情な女だと思った?」
そう言ってグイと涙を拭った詩織は、ゆっくりとタラップを下りる。そして銀八の前に立つと、濡れた瞳でまっすぐ銀八を見つめて言った。
「寂しく無いわけないでしょ。私も先生と同じ目線で彼らを見てきたんだから」
言われて確かにそうだと気づく。
チャランポランな銀八をサポートする存在としてこの一年、詩織は全力で子供達に向き合ってきた。例年を遥かに上回る問題児たちに頭を悩ませながらも、持ち前の明るさと生真面目さで乗り越えてきたのだ。その姿を間近で見守ってきたのは、誰よりも銀八に他ならない。
「……悪ィ」
言葉が素直に出た。それを聞いて満足したのか、詩織が小さく微笑む。
「分かったならさっさと仕事を終わらせてよね。無事卒業生を送り出したんだもの。今夜は目一杯飲んでお疲れ様会するんだから」
「なるほどねェ……んじゃとっとと終わらせて、詩織先生ん家へと繰り出しますか」
「……は?」
間の抜けた声をあげ、硬直する詩織。だがうんうんと頷きながら教室への階段に向けて歩き出した銀八を見て、慌てて追いかける。
「ちょっと待って。何でそうなるのよ」
「何でって、お疲れ様会なんだろ? 相棒が一緒じゃなくてどうすんだよ」
「それはそうだけど……いやそうじゃなくて、何でうちなのよ。居酒屋とか屋台とか、選択肢は色々あるでしょ?」
スタスタと歩く銀八の服の裾を掴んで引っ張る詩織に、銀八は言った。
「周りに人がいちゃァ、酒にも感傷にも浸り切れねェしな。それにお前だって、俺と二人きりの時しか泣けねェだろ?」
「何よそれ……っていうか、何で急にお前呼ばわり!?」
「まぁまぁ、固いこと言うなって。とりあえず一旦ここで解散な。各々仕事を終わらせたら、駐車場で集合でェす」
「あ、ちょっと、坂田先生!」
スルリと詩織の手から抜け出し、あっという間に階段を下りていく銀八。咄嗟に小走りで詩織が追うも、何故か引き離されるばかり。
「もー! 勝手なんだからぁっ!」
追うことを諦めた詩織が、肩で息をしながら悔しそうに叫ぶ。その声を背中で受けながら、銀八は口元を緩ませるのだった。
〜了〜
そう言ってグイと涙を拭った詩織は、ゆっくりとタラップを下りる。そして銀八の前に立つと、濡れた瞳でまっすぐ銀八を見つめて言った。
「寂しく無いわけないでしょ。私も先生と同じ目線で彼らを見てきたんだから」
言われて確かにそうだと気づく。
チャランポランな銀八をサポートする存在としてこの一年、詩織は全力で子供達に向き合ってきた。例年を遥かに上回る問題児たちに頭を悩ませながらも、持ち前の明るさと生真面目さで乗り越えてきたのだ。その姿を間近で見守ってきたのは、誰よりも銀八に他ならない。
「……悪ィ」
言葉が素直に出た。それを聞いて満足したのか、詩織が小さく微笑む。
「分かったならさっさと仕事を終わらせてよね。無事卒業生を送り出したんだもの。今夜は目一杯飲んでお疲れ様会するんだから」
「なるほどねェ……んじゃとっとと終わらせて、詩織先生ん家へと繰り出しますか」
「……は?」
間の抜けた声をあげ、硬直する詩織。だがうんうんと頷きながら教室への階段に向けて歩き出した銀八を見て、慌てて追いかける。
「ちょっと待って。何でそうなるのよ」
「何でって、お疲れ様会なんだろ? 相棒が一緒じゃなくてどうすんだよ」
「それはそうだけど……いやそうじゃなくて、何でうちなのよ。居酒屋とか屋台とか、選択肢は色々あるでしょ?」
スタスタと歩く銀八の服の裾を掴んで引っ張る詩織に、銀八は言った。
「周りに人がいちゃァ、酒にも感傷にも浸り切れねェしな。それにお前だって、俺と二人きりの時しか泣けねェだろ?」
「何よそれ……っていうか、何で急にお前呼ばわり!?」
「まぁまぁ、固いこと言うなって。とりあえず一旦ここで解散な。各々仕事を終わらせたら、駐車場で集合でェす」
「あ、ちょっと、坂田先生!」
スルリと詩織の手から抜け出し、あっという間に階段を下りていく銀八。咄嗟に小走りで詩織が追うも、何故か引き離されるばかり。
「もー! 勝手なんだからぁっ!」
追うことを諦めた詩織が、肩で息をしながら悔しそうに叫ぶ。その声を背中で受けながら、銀八は口元を緩ませるのだった。
〜了〜
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