ネクタイを結ぶのって意外と難しい(銀時)

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「……え?」
「実際に結ぶのと同じ向きの方が分かりやすいだろ? しっかり見て覚えろよ」

 肩の上から伸ばされた銀時の手が、詩織の目の前にネクタイを持ち上げる。

「左右の長さの差はこんくらいな。んで、これをこうしてこうやって……」

 言いながらあっという間に形を整えた銀時は、小剣を引きながらキュッと結び目を上げた。

「できたぞ」

 結び目をポンポンと叩き、最後に詩織の頭を撫でた銀時が、詩織から腕を離して一歩下がる。

「これで満足か?」

 そう言って詩織の肩に手をかけた銀時は、出来上がりを正面から確認しようと思ったのか、詩織の体をくるりと回転させた。
 ところがだ。

「……おいおい、大丈夫かよ。顔が真っ赤になってんぞ」

 熱でもあるのかと詩織の頬に手を伸ばす。だが触れるより先に、詩織は玄関の外へと駆け出していた。

「わ、私帰るね。それじゃ!」
「あ、おい、詩織……」

 銀時が追いかける間もなく、外階段を駆け下りていく詩織。そのまま足音も気配も、全てが遠のいたことを確認した銀時は、小さく口角を上げた。

「ったく、この程度であんなになっちまうなんて、まだまだあいつもお子ちゃまだよなァ。からかう楽しみを満喫するのも良いが、そろそろ大人的耐性も付けてくんねーと、銀さんいつまでも待ってはやれねーぞコノヤロー」

 言いながら、先程の事を思い出す。
 後ろからネクタイを結んでいた時、見つめていたのは詩織のうなじ。わざと口を近づけギリギリのところで話せば、吐息で詩織が震えるのが分かった。
 手を動かしながらさりげなく胸に触れれば、一気に耳まで赤くなる。その恥じらいがこれ以上無く銀時を煽り、そそられた。

「いやいやホント詩織の言う通り、ネクタイってなァ恐るべしだな。使い方一つでこんなにも楽しめちまうんだからよ」

 こみあげる笑いに肩を震わせていた銀時だったが、不意に気付く。

「そういやアイツ、ネクタイ持って帰っちまってんじゃねーか。このスーツに合う予備のやつ、あったっけか」

 慌てて奥の部屋へと向かい、替えのネクタイを探す。時計を見ればもう、長谷川の詮議が始まる時間も近い。

「やっべ、詩織のせいでギリギリになっちまった! 今度ネクタイを返しに来た時、文句言ってやんねーとな」

 選んだネクタイを掴み、玄関へと走る。

「ついでにネクタイの別の使い方も教えてやるとしますか」

 我ながら名案だとばかりに満足げな笑みを浮かべた銀時は、首にネクタイをかけながら万事屋を飛び出したのだった。

〜了〜
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