初蝶(銀時)
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その日、俺は詩織の買い物に付き合っていた。
正直女の買い物に付き合うなんざ面倒だが、一緒に来てくれと頼まれたからまァ仕方なく、な。
何やらお気に入りの店に入った詩織は、数着選んだ服を持って試着室に入る。ここで待っててと言われ暫くすると、中からカーテンが開けられた。
「どうかな? ちょっとイメージを変えてみたんだけど……似合う?」
はにかみながら言う詩織を見れば、確かにいつもとは違う雰囲気になっている。何つーか、動きやすさ重視から見た目重視に変わったって感じか?
「良いんじゃねーの?」
「あっさりとした感想だなぁ」
「他に言いようがねーもん」
「……そっか」
少し悲しげに言った詩織は、次の服を試着をするから待っててと再びカーテンを閉める。
感想を聞かれたんだからもっと誠実に答えてやるべきだったか? でも実際あの服に感じるものが無かったし、変に世辞を言うのも違うしなァ。
そんな事を考えていると、着替え終わった詩織によってまたも中からカーテンが開かれる。次はもう少しきちんと答えてやるか、と思いながら中を見ると──。
「マジか……」
思わず息を呑んだ。更には生唾まで飲み込んじまう。
俺の目の前にいるのは、間違いなく詩織だ。だがいつもの男勝りなイメージを完全に払拭したその姿は、まるで別人を見ているかのようだった。
「こっちはどうかな?」
不安そうに上目遣いで言われ、答える言葉を探す。
ぶっちゃけ好みだ。
すげー好みだ。
信じらんねーくらいに好みだ。
見慣れたラフな服装も悪くはねーが、このふんわりと可愛らしい感じの服を着てると、コイツの魅力が前面に押し出されまくってやがるから。
詩織には元々こういう服が一番似合うんだろうと確信できてしまったこの瞬間、俺に言える言葉はこれしか無いと思った。
「この後のデートはそのカッコで決まりな」
「それって……似合ってるってこと?」
「ほら、さっさと買ってこいよ」
「うん!」
嬉しそうに頷いた詩織が、急いで会計を済ませる。店を出て日の光に照らされた詩織は、試着室で見た時よりも更に数段可愛く見えて。ずっと愛でてきた蛹が蝶になる瞬間を見た気がした。
「買い物に付き合うってのは、こういう特典もあんだな」
「どういう事?」
「さ〜て、どういう事かねェ」
曖昧に答えた俺は、詩織の肩に手を回す。さっきからチラチラと感じる周りの男たちの視線を遮るように引き寄せると、耳元に口を近づけた。
「二人きりになった時に教えてやるよ」
「……っ!」
俺の囁きに耳を真っ赤に染めた詩織が、躊躇いがちにコクリと頷く。その反応が俺だけのものだというのが嬉しくて、頬の緩みを抑えることが出来なかった。
〜了〜
正直女の買い物に付き合うなんざ面倒だが、一緒に来てくれと頼まれたからまァ仕方なく、な。
何やらお気に入りの店に入った詩織は、数着選んだ服を持って試着室に入る。ここで待っててと言われ暫くすると、中からカーテンが開けられた。
「どうかな? ちょっとイメージを変えてみたんだけど……似合う?」
はにかみながら言う詩織を見れば、確かにいつもとは違う雰囲気になっている。何つーか、動きやすさ重視から見た目重視に変わったって感じか?
「良いんじゃねーの?」
「あっさりとした感想だなぁ」
「他に言いようがねーもん」
「……そっか」
少し悲しげに言った詩織は、次の服を試着をするから待っててと再びカーテンを閉める。
感想を聞かれたんだからもっと誠実に答えてやるべきだったか? でも実際あの服に感じるものが無かったし、変に世辞を言うのも違うしなァ。
そんな事を考えていると、着替え終わった詩織によってまたも中からカーテンが開かれる。次はもう少しきちんと答えてやるか、と思いながら中を見ると──。
「マジか……」
思わず息を呑んだ。更には生唾まで飲み込んじまう。
俺の目の前にいるのは、間違いなく詩織だ。だがいつもの男勝りなイメージを完全に払拭したその姿は、まるで別人を見ているかのようだった。
「こっちはどうかな?」
不安そうに上目遣いで言われ、答える言葉を探す。
ぶっちゃけ好みだ。
すげー好みだ。
信じらんねーくらいに好みだ。
見慣れたラフな服装も悪くはねーが、このふんわりと可愛らしい感じの服を着てると、コイツの魅力が前面に押し出されまくってやがるから。
詩織には元々こういう服が一番似合うんだろうと確信できてしまったこの瞬間、俺に言える言葉はこれしか無いと思った。
「この後のデートはそのカッコで決まりな」
「それって……似合ってるってこと?」
「ほら、さっさと買ってこいよ」
「うん!」
嬉しそうに頷いた詩織が、急いで会計を済ませる。店を出て日の光に照らされた詩織は、試着室で見た時よりも更に数段可愛く見えて。ずっと愛でてきた蛹が蝶になる瞬間を見た気がした。
「買い物に付き合うってのは、こういう特典もあんだな」
「どういう事?」
「さ〜て、どういう事かねェ」
曖昧に答えた俺は、詩織の肩に手を回す。さっきからチラチラと感じる周りの男たちの視線を遮るように引き寄せると、耳元に口を近づけた。
「二人きりになった時に教えてやるよ」
「……っ!」
俺の囁きに耳を真っ赤に染めた詩織が、躊躇いがちにコクリと頷く。その反応が俺だけのものだというのが嬉しくて、頬の緩みを抑えることが出来なかった。
〜了〜
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