雷鳴を忘れて(銀時)
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「ところで、電話の用件は?」
銀さんに見えないのを良いことに、ニマニマと頬を緩ませたまま訊ねる。すると銀さんが言った。
「雷」
「え?」
「お前、雷が嫌いだったろ。こないだ出先で会った時、急な雷雨に見舞われてキャーキャー言いながら銀さんを押し倒してきたよな」
瞬間、笑顔が固まる。確かに以前そういう事はあったけれど、言い方に語弊があり過ぎるから。
さすがにそれを肯定することは出来なくて、力強く訂正した。
「お、押し倒してなんかないわよ! あの時は雷の音に驚いてぶつかっただけで、銀さんが踏ん張りをきかせなかったのが悪いんじゃない」
「俺が悪いのかよ。銀さんの上に乗って離れなかったのは詩織はじゃねーか。……でもまァあん時は可愛かったよな〜。銀さんにしがみつきながらブルブル震えちまっててよォ」
「……っ、からかわないで! 私は真剣に怖がってたんだからね!」
「とか何とか言っちゃって、ほんとは銀さんに抱きつけるチャーンス! とか思ってたんじゃねーの? っていうかむしろ押し倒した勢いで銀さんといけない事をしようとしてたとか……いやん、詩織ちゃんってばえっちィ」
「そんな事一言も言ってないでしょ! 勝手な妄想しないでよ!」
「妄想なんかじゃねーって。実際銀さんが傍にいたら安心しただろ?」
「……っ」
これには何も言えなかった。だってあの時確かに私は、銀さんの腕の中にいることで恐怖が薄れるのを感じていたから。
「ほれほれ、どーよ? 銀さんってば男らしくて頼もしくてほれぼれしちゃ〜う。素敵! 抱いて!……ってか? そうだろそうだろ」
電話の向こうから聞こえてくる得意げな声は、銀さんのニヤついた表情を想像させるもので腹立たしい。けれど納得させられる部分もあるだけに言い返す言葉が見つからなくて、胸の中がモヤ付いていた。
「もう……! そんな事を言うために電話してきたんだったら切るわよ!」
しかも銀さんの言葉を何だか妙に意識してしまう。
「じゃあね。電話ありがと!」
どうにもいたたまれなくなった私は、強引に終了宣言してスマホを耳から離すと、切るボタンに指を近づけた。
と、その時。
「そら」
電話の向こうから聞こえた二文字。
何だろうと再びスマホを耳に当てると、つい今しがたまで私をからかっていたとは思えないほど爽やかな声が聞こえてきた。
「窓の外、見えるか? キレーな空だぜ」
「空が……?」
言われてハッとする。
そう言えば、いつの間にか雷鳴が聞こえなくなっていた。
被っていた布団から這い出てみれば、眩しさに目を瞬く。やがて明るさに慣れた目に映ったのは、既に雷雲と別れを告げたきれいな青空だった。
「もう大丈夫だな」
銀さんが言う。それを聞いてようやく気付いた。
「銀さん、もしかして電話してくれたのは……」
先日の怖がりっぷりを見ていたこともあり、雷が苦手な私を心配してくれたのだろう。わざとからかったりしながら、少しでも雷を忘れられるよう気を使ってくれたわけだ。
「気にしてくれてありがとね」
胸の奥に温かい物を感じながらお礼を言う。すると銀さんは優しい声で言った。
「このくらいお安いご用だっつーの。……詩織の為ならな」
〜了〜
銀さんに見えないのを良いことに、ニマニマと頬を緩ませたまま訊ねる。すると銀さんが言った。
「雷」
「え?」
「お前、雷が嫌いだったろ。こないだ出先で会った時、急な雷雨に見舞われてキャーキャー言いながら銀さんを押し倒してきたよな」
瞬間、笑顔が固まる。確かに以前そういう事はあったけれど、言い方に語弊があり過ぎるから。
さすがにそれを肯定することは出来なくて、力強く訂正した。
「お、押し倒してなんかないわよ! あの時は雷の音に驚いてぶつかっただけで、銀さんが踏ん張りをきかせなかったのが悪いんじゃない」
「俺が悪いのかよ。銀さんの上に乗って離れなかったのは詩織はじゃねーか。……でもまァあん時は可愛かったよな〜。銀さんにしがみつきながらブルブル震えちまっててよォ」
「……っ、からかわないで! 私は真剣に怖がってたんだからね!」
「とか何とか言っちゃって、ほんとは銀さんに抱きつけるチャーンス! とか思ってたんじゃねーの? っていうかむしろ押し倒した勢いで銀さんといけない事をしようとしてたとか……いやん、詩織ちゃんってばえっちィ」
「そんな事一言も言ってないでしょ! 勝手な妄想しないでよ!」
「妄想なんかじゃねーって。実際銀さんが傍にいたら安心しただろ?」
「……っ」
これには何も言えなかった。だってあの時確かに私は、銀さんの腕の中にいることで恐怖が薄れるのを感じていたから。
「ほれほれ、どーよ? 銀さんってば男らしくて頼もしくてほれぼれしちゃ〜う。素敵! 抱いて!……ってか? そうだろそうだろ」
電話の向こうから聞こえてくる得意げな声は、銀さんのニヤついた表情を想像させるもので腹立たしい。けれど納得させられる部分もあるだけに言い返す言葉が見つからなくて、胸の中がモヤ付いていた。
「もう……! そんな事を言うために電話してきたんだったら切るわよ!」
しかも銀さんの言葉を何だか妙に意識してしまう。
「じゃあね。電話ありがと!」
どうにもいたたまれなくなった私は、強引に終了宣言してスマホを耳から離すと、切るボタンに指を近づけた。
と、その時。
「そら」
電話の向こうから聞こえた二文字。
何だろうと再びスマホを耳に当てると、つい今しがたまで私をからかっていたとは思えないほど爽やかな声が聞こえてきた。
「窓の外、見えるか? キレーな空だぜ」
「空が……?」
言われてハッとする。
そう言えば、いつの間にか雷鳴が聞こえなくなっていた。
被っていた布団から這い出てみれば、眩しさに目を瞬く。やがて明るさに慣れた目に映ったのは、既に雷雲と別れを告げたきれいな青空だった。
「もう大丈夫だな」
銀さんが言う。それを聞いてようやく気付いた。
「銀さん、もしかして電話してくれたのは……」
先日の怖がりっぷりを見ていたこともあり、雷が苦手な私を心配してくれたのだろう。わざとからかったりしながら、少しでも雷を忘れられるよう気を使ってくれたわけだ。
「気にしてくれてありがとね」
胸の奥に温かい物を感じながらお礼を言う。すると銀さんは優しい声で言った。
「このくらいお安いご用だっつーの。……詩織の為ならな」
〜了〜
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