極上スイーツ(銀時)
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仕事で大きなミスをしてしまった。
残業して何とか取り繕うことはできたけれど、自分のせいで周りにかけてしまった迷惑は甚大で。帰る道すがら、私の頭の中はミスの後悔でパンクしそうになっていた。
でもいつまでもこの暗い気持ちを引きずっているわけにはいかない。こうなったら大好きなスイーツで気持ちを切り替えよう。夕食代わりに目一杯食べてお腹を満たせば、また明日から頑張れるはずだ。
そう思った私は早速お気に入りのカフェへと向かった。
普段なら絶対に頼まない品数を注文し、空いていたソファ席を陣取る。やがて運ばれてきたスイーツの山は、テーブルを埋め尽くした。
「よーし、食べるぞ〜!」
まずは手前からと手を伸ばす。一品目を平らげ、次の皿を手元に引き寄せたれど、気持ちの問題なのだろうか。何だか全然美味しくなくて、どうにも口に運ぶのが辛くなる。
「……失敗したなぁ」
お腹いっぱい好きなものを食べれば、気分が変わると思ってたのに。むしろ食べきれないという罪悪感を背負う事になってしまうとは。
テーブルの上に置かれた手付かずのスイーツを眺めて、重い溜息を吐く。注文した以上きちんと食べきりたいけれど、口もお腹も断固拒否をしている状況だ。
「このお店、持ち帰りも出来ないし……」
まさかフォークを握る事すら苦痛に感じるとは。これは詰んだなとスイーツの代わりに泣き言を口にした時だった。
「美味そ〜」
「え?」
不意に聞こえた男の声。
驚いて顔を上げると、そこにいたのは銀時だった。しかも何故か当たり前のように私の隣に座り、スイーツの一つを手に取る。
「銀時……いつの間に?」
「たまたま店の前を歩いてたら、詩織がスイーツを眺めて呆然としてたのが見えてよォ。大方注文しすぎて食い切れなくなっちまったんだろ? 仕方ねェから銀さんが食ってやるよ」
空いている手で私からフォークを取り上げた銀時の顔は、とても幸せそうだ。
「仕方ないって、普通に自分が食べたいだけでしょ」
「あ、やっぱ分かる? でも注文しすぎたってのは合ってんだろ。どう見たってお前が食いきれる量じゃねェもん」
「それはまぁ……仰る通りでして……」
「だろ? こんくらいなら銀さんのお腹に丁度良い量だし、まァ任せとけって」
任せとけ、の台詞は、正確には「まふぁふぇふぉけ」。
誰も食べて良いなんて言っていないのに、手にしていたスイーツの半分は既に銀時の口の中へと移動していた。
そしてもう半分もペロリと平らげると、「次はこれだな」と目をキラキラさせて新たな皿を手にし、これまた当然のように口に運んでいく。私が苦戦していたスイーツたちは、面白いほどあっさりと銀時の胃に収められていった。
「んー、流石にこんだけ食やァ腹いっぱいだな」
膨れたお腹を叩き、大きくゲップをする。宣言通り全ての皿を空にした銀時は、唇に付いた砂糖を舐めながら言った。
「お前があれこれ頼みたくなるのも分かるわ。どれも皆美味かった」
「うん……ありがと。ごめんね」
「別に礼も謝罪も必要ねーだろ」
「だって……キャパオーバーだったでしょ、この量」
平静を装ってはいたが、最後の方は苦しかったのだろう。何度か小さく息を吐いていたのを私は見逃さなかった。
どんなに甘いものが好きでも、度を超せばまずくなる。それなのに銀時は一言も文句を言わずに食べきってくれたのだから、本当に申し訳なくて。
「無理させちゃってごめんなさい」
「……そう思うんなら、今後は必ず銀さんを誘うように」
「どういう事?」
「こういうモンは、誰かと一緒に食うから美味いんだよ。何かを忘れたい時や、気持ちを切り替えたい時なんかは尚更な」
「……よく分かったね。私が凹んでたこと」
「甘いモン好きだからっつって、銀さんを甘く見んなよ。そんくらい表情を見りゃ一発よ。……まァ詩織限定だけどな」
サラリと恥ずかしい台詞を言う銀時。でも実はその頬がほんのり赤くなっていることに気付き、何ともくすぐったかった。
「……甘いよね、銀時は」
「だから銀さんを甘く見んなって……」
「だって私のことを甘やかすんだもん」
「そいつは仕方ねーだろ。お前が甘いんだから」
「……はい?」
甘さでゲシュタルトが崩壊しそうになりながら銀時を見つめれば、まっすぐに見つめ返される。
「銀さんにとっちゃァ、詩織はどんなもんにも勝る極上のスイーツなんだよ」
そう言った銀時は私に口付けると、「ほらな、一緒に食うと美味いだろ?」と囁いて意味深に笑った。
〜了〜
残業して何とか取り繕うことはできたけれど、自分のせいで周りにかけてしまった迷惑は甚大で。帰る道すがら、私の頭の中はミスの後悔でパンクしそうになっていた。
でもいつまでもこの暗い気持ちを引きずっているわけにはいかない。こうなったら大好きなスイーツで気持ちを切り替えよう。夕食代わりに目一杯食べてお腹を満たせば、また明日から頑張れるはずだ。
そう思った私は早速お気に入りのカフェへと向かった。
普段なら絶対に頼まない品数を注文し、空いていたソファ席を陣取る。やがて運ばれてきたスイーツの山は、テーブルを埋め尽くした。
「よーし、食べるぞ〜!」
まずは手前からと手を伸ばす。一品目を平らげ、次の皿を手元に引き寄せたれど、気持ちの問題なのだろうか。何だか全然美味しくなくて、どうにも口に運ぶのが辛くなる。
「……失敗したなぁ」
お腹いっぱい好きなものを食べれば、気分が変わると思ってたのに。むしろ食べきれないという罪悪感を背負う事になってしまうとは。
テーブルの上に置かれた手付かずのスイーツを眺めて、重い溜息を吐く。注文した以上きちんと食べきりたいけれど、口もお腹も断固拒否をしている状況だ。
「このお店、持ち帰りも出来ないし……」
まさかフォークを握る事すら苦痛に感じるとは。これは詰んだなとスイーツの代わりに泣き言を口にした時だった。
「美味そ〜」
「え?」
不意に聞こえた男の声。
驚いて顔を上げると、そこにいたのは銀時だった。しかも何故か当たり前のように私の隣に座り、スイーツの一つを手に取る。
「銀時……いつの間に?」
「たまたま店の前を歩いてたら、詩織がスイーツを眺めて呆然としてたのが見えてよォ。大方注文しすぎて食い切れなくなっちまったんだろ? 仕方ねェから銀さんが食ってやるよ」
空いている手で私からフォークを取り上げた銀時の顔は、とても幸せそうだ。
「仕方ないって、普通に自分が食べたいだけでしょ」
「あ、やっぱ分かる? でも注文しすぎたってのは合ってんだろ。どう見たってお前が食いきれる量じゃねェもん」
「それはまぁ……仰る通りでして……」
「だろ? こんくらいなら銀さんのお腹に丁度良い量だし、まァ任せとけって」
任せとけ、の台詞は、正確には「まふぁふぇふぉけ」。
誰も食べて良いなんて言っていないのに、手にしていたスイーツの半分は既に銀時の口の中へと移動していた。
そしてもう半分もペロリと平らげると、「次はこれだな」と目をキラキラさせて新たな皿を手にし、これまた当然のように口に運んでいく。私が苦戦していたスイーツたちは、面白いほどあっさりと銀時の胃に収められていった。
「んー、流石にこんだけ食やァ腹いっぱいだな」
膨れたお腹を叩き、大きくゲップをする。宣言通り全ての皿を空にした銀時は、唇に付いた砂糖を舐めながら言った。
「お前があれこれ頼みたくなるのも分かるわ。どれも皆美味かった」
「うん……ありがと。ごめんね」
「別に礼も謝罪も必要ねーだろ」
「だって……キャパオーバーだったでしょ、この量」
平静を装ってはいたが、最後の方は苦しかったのだろう。何度か小さく息を吐いていたのを私は見逃さなかった。
どんなに甘いものが好きでも、度を超せばまずくなる。それなのに銀時は一言も文句を言わずに食べきってくれたのだから、本当に申し訳なくて。
「無理させちゃってごめんなさい」
「……そう思うんなら、今後は必ず銀さんを誘うように」
「どういう事?」
「こういうモンは、誰かと一緒に食うから美味いんだよ。何かを忘れたい時や、気持ちを切り替えたい時なんかは尚更な」
「……よく分かったね。私が凹んでたこと」
「甘いモン好きだからっつって、銀さんを甘く見んなよ。そんくらい表情を見りゃ一発よ。……まァ詩織限定だけどな」
サラリと恥ずかしい台詞を言う銀時。でも実はその頬がほんのり赤くなっていることに気付き、何ともくすぐったかった。
「……甘いよね、銀時は」
「だから銀さんを甘く見んなって……」
「だって私のことを甘やかすんだもん」
「そいつは仕方ねーだろ。お前が甘いんだから」
「……はい?」
甘さでゲシュタルトが崩壊しそうになりながら銀時を見つめれば、まっすぐに見つめ返される。
「銀さんにとっちゃァ、詩織はどんなもんにも勝る極上のスイーツなんだよ」
そう言った銀時は私に口付けると、「ほらな、一緒に食うと美味いだろ?」と囁いて意味深に笑った。
〜了〜
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