幸せの時間(銀時)
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ーーそれはありきたりの、何気ない時間。
ーーでも大切な人がいつも傍らにいる、かけがえのない幸せの時間。
昨日までの雨が嘘のように快晴の朝。ぼんやりと目を覚ました詩織は、寝ぼけ眼を擦りながら、横にいるいつもの間抜け面を確認してホッとする。
この顔を毎朝見られるようになってから、一年の時が過ぎた。
宇宙規模の戦いに身を置き、筆舌に尽くし難い過去を乗り越え。今こうして共に過ごせていることは、詩織にとって何より嬉しいことだ。
時計を見れば未だ七時。今日は土曜日で、特に依頼も来てはいない。
せっかく気持ち良さそうに寝ているところを起こすのも悪いから、と思った詩織は、銀時の腕枕からゆっくり体を起こし、静かに布団から抜け出ようとした。
ところがだ。
「未だはえェだろ」
声が聞こえると同時に掴まれた腕。ぐいと引き戻され、ポフリと布団に着地した詩織の体は、そのまま強い力で背中から抱きしめられた。
「あ、ごめんね、起こしちゃった?」
「んにゃ……起きてた」
そうは言いながらも寝ぼけているのか、銀時の声はふにゃふにゃだ。目も開いてはおらず、ただ腕の中にあるぬくもりで、詩織の存在を確かめている。
「未だ眠いんでしょ? ゆっくり寝てて。私は目が覚めちゃったから、朝食の準備をしてくるよ」
銀時の腕を優しくぽんぽんと叩いた詩織は、再び布団を抜け出そうとした。しかし銀時の腕は詩織を抱きしめたまま。
「もう、銀さんってば。これじゃご飯作れないじゃない」
そう言って体を捻ってみても、「ん……」と気のない返事をするだけで、決して詩織を離そうとはしない。そんな銀時に苦笑いをしながら、詩織は言った。
「あ〜そっか。うんうん分かるよ。私と片時も離れたくないんだよね。銀さんってば、私のこと好き過ぎなんだもん。いやぁ、愛されちゃってるな〜。そんなに私ってば魅力的?」
煽る言葉をポンポンと投げかける詩織。そこまで言われてはさすがに恥ずかしくなったのか、銀時の腕の力が緩む。その隙を見逃さず、スルリと銀時の腕から抜け出した詩織は、開ききらない眼で不満げにこちらを見ている銀時に向けて、してやったりのドヤ顔を見せた。
「じゃ、そういうことでご飯の準備してくるね。パンは甘いの? 甘くないの?」
「……甘いやつ」
「りょーかい」
クスクスと笑いながら銀時の額に軽く口付ける詩織。そして「今朝はシナモンシュガートーストにするね。出来たら呼ぶからもうしばらく寝てて」と言いながら立ち上がりかけた時だった。
「足んねェよ」
声と共に詩織の後頭部が、大きな手のひらに覆われる。思わず詩織が息を呑んだのと、その唇が柔らかな熱を感じたのとは同時だった。
「こんくらいはしてくんなきゃ、糖分が足りねーっつってんの!」
詩織の唇を軽く食み、最後にペロリと舌を這わせる。思わず頬を赤らめた詩織に、銀時は言った。
「幸せそーな顔しちゃってまァ。好き過ぎんのはどっちなんだか」
優しい眼差しで詩織を見つめ、もう一度キスを落とす。その表情は詩織への愛しさに溢れていて、詩織の頬を緩ませた。
「……っ! だからそれは銀さんでしょ。今だって『詩織が好きだ〜!』ってメロメロな顔してるじゃない」
「お前こそ、銀さんが好きで好きで仕方ないって顔してんぞ」
「違うもん。銀さんの方が私を……」
「いいや、違うね! 詩織の方が俺を……」
その後しばらく不毛な言い争いは続くも、それは単なる甘い痴話喧嘩でしか無かった。
やがて空腹を思い出した二人は、たった今まで言い争っていたことを忘れてしまったかのように、仲良く肩を並べてキッチンへと向かう。
「銀さん、卵はオムレツで良い?」
「ああ。そんじゃ銀さんはコーヒー淹れるわ」
「ん、お願い」
ごく自然に役割を分担し、朝食の準備をする。そんな二人の表情は、幸せに満ちていた。
ーーそれはありきたりの、何気ない時間。
ーーでも大切な人がいつも傍らにいる、かけがえのない幸せの時間。
〜了〜
ーーでも大切な人がいつも傍らにいる、かけがえのない幸せの時間。
昨日までの雨が嘘のように快晴の朝。ぼんやりと目を覚ました詩織は、寝ぼけ眼を擦りながら、横にいるいつもの間抜け面を確認してホッとする。
この顔を毎朝見られるようになってから、一年の時が過ぎた。
宇宙規模の戦いに身を置き、筆舌に尽くし難い過去を乗り越え。今こうして共に過ごせていることは、詩織にとって何より嬉しいことだ。
時計を見れば未だ七時。今日は土曜日で、特に依頼も来てはいない。
せっかく気持ち良さそうに寝ているところを起こすのも悪いから、と思った詩織は、銀時の腕枕からゆっくり体を起こし、静かに布団から抜け出ようとした。
ところがだ。
「未だはえェだろ」
声が聞こえると同時に掴まれた腕。ぐいと引き戻され、ポフリと布団に着地した詩織の体は、そのまま強い力で背中から抱きしめられた。
「あ、ごめんね、起こしちゃった?」
「んにゃ……起きてた」
そうは言いながらも寝ぼけているのか、銀時の声はふにゃふにゃだ。目も開いてはおらず、ただ腕の中にあるぬくもりで、詩織の存在を確かめている。
「未だ眠いんでしょ? ゆっくり寝てて。私は目が覚めちゃったから、朝食の準備をしてくるよ」
銀時の腕を優しくぽんぽんと叩いた詩織は、再び布団を抜け出そうとした。しかし銀時の腕は詩織を抱きしめたまま。
「もう、銀さんってば。これじゃご飯作れないじゃない」
そう言って体を捻ってみても、「ん……」と気のない返事をするだけで、決して詩織を離そうとはしない。そんな銀時に苦笑いをしながら、詩織は言った。
「あ〜そっか。うんうん分かるよ。私と片時も離れたくないんだよね。銀さんってば、私のこと好き過ぎなんだもん。いやぁ、愛されちゃってるな〜。そんなに私ってば魅力的?」
煽る言葉をポンポンと投げかける詩織。そこまで言われてはさすがに恥ずかしくなったのか、銀時の腕の力が緩む。その隙を見逃さず、スルリと銀時の腕から抜け出した詩織は、開ききらない眼で不満げにこちらを見ている銀時に向けて、してやったりのドヤ顔を見せた。
「じゃ、そういうことでご飯の準備してくるね。パンは甘いの? 甘くないの?」
「……甘いやつ」
「りょーかい」
クスクスと笑いながら銀時の額に軽く口付ける詩織。そして「今朝はシナモンシュガートーストにするね。出来たら呼ぶからもうしばらく寝てて」と言いながら立ち上がりかけた時だった。
「足んねェよ」
声と共に詩織の後頭部が、大きな手のひらに覆われる。思わず詩織が息を呑んだのと、その唇が柔らかな熱を感じたのとは同時だった。
「こんくらいはしてくんなきゃ、糖分が足りねーっつってんの!」
詩織の唇を軽く食み、最後にペロリと舌を這わせる。思わず頬を赤らめた詩織に、銀時は言った。
「幸せそーな顔しちゃってまァ。好き過ぎんのはどっちなんだか」
優しい眼差しで詩織を見つめ、もう一度キスを落とす。その表情は詩織への愛しさに溢れていて、詩織の頬を緩ませた。
「……っ! だからそれは銀さんでしょ。今だって『詩織が好きだ〜!』ってメロメロな顔してるじゃない」
「お前こそ、銀さんが好きで好きで仕方ないって顔してんぞ」
「違うもん。銀さんの方が私を……」
「いいや、違うね! 詩織の方が俺を……」
その後しばらく不毛な言い争いは続くも、それは単なる甘い痴話喧嘩でしか無かった。
やがて空腹を思い出した二人は、たった今まで言い争っていたことを忘れてしまったかのように、仲良く肩を並べてキッチンへと向かう。
「銀さん、卵はオムレツで良い?」
「ああ。そんじゃ銀さんはコーヒー淹れるわ」
「ん、お願い」
ごく自然に役割を分担し、朝食の準備をする。そんな二人の表情は、幸せに満ちていた。
ーーそれはありきたりの、何気ない時間。
ーーでも大切な人がいつも傍らにいる、かけがえのない幸せの時間。
〜了〜
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