君が生まれた日(銀時)
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「あの……これは一体?」
鍵の閉まる音が聞こえた瞬間から、何とも言えない緊張感に包まれている。まさかこの状況は……いや、でも銀さんがそんな事……。
「詩織」
「ひゃ、ひゃいっ!」
「去年のプレゼントの髪飾り。あれは俺が選んだヤツだ」
「……へ?」
自分の恥ずかしい予想にかすりもしない銀さんの言葉が、一気に私の緊張を解いた。代わりに頭の中が疑問符で埋め尽くされる。
確かにいつもお登勢さんが選んでくれるものとは雰囲気が違うなとは思っていたけれど、他の人物が選んだとは想像もしていなかったから。
「銀さんが? 私たち、去年の誕生日には未だ顔見知り程度だったよね?」
私が銀さんを知人として認識するようになったのは、バイトの面接の時。それ以前はお登勢さんの店の二階で万事屋をやっている人というだけで、せいぜい会釈程度の関係だった。
「お登勢さんに頼まれたって事?」
「いや、俺が選びたいっつったんだわ」
「どういう事……?」
ますます銀さんの言っている意味が分からない。何で銀さんが去年の段階で、私へのプレゼントを選びたがるわけ?
「理由は一つしかねーだろうが。俺なりにお前の誕生日を祝いたかったんだよ」
「え……?」
その答えが唯一無二の如く言われても理解できず、頭の中がぐるぐるしている。そんな私に、銀さんは苦笑いをしていた。
「ホントに何も気付いてねーのか。まァばあさんの店で顔を合わせても、あの頃はいつもおふくろさんと一緒だったから話しかけ辛かったしなァ」
そう言って銀さんは懐に手を入れると、小さな箱を取り出した。開けてみろと手渡され、言われた通りに中を見れば、そこには可愛い帯留めが入っていた。
「可愛い……!」
「そういうの好きなんだろ?」
「うん! でもこれ、最初から準備してくれてたの? もし私がはっきりと欲しい物を言ってたら……」
「それとは別にコイツも渡すつもりだったんだよ。お前に似合いそうだったしな」
「銀さん……」
私の趣味ど真ん中のデザインである帯留めはきっと、銀さんが一生懸命探してくれた物なんだろう。その心遣いに、胸が一杯になった。
「ありが……」
この喜びを伝えるため、お礼を言おうとしたのに。突如ツイ、と銀さんの指が私の唇の動きを塞ぐ。続きを紡ぐことの出来ぬまま銀さんを見れば、真剣な面持ちだった。
「礼は早ェよ。お前の望むプレゼントが未だだろうが」
そう言うと、今度は優しい眼差しを私に向けた。
「お前がこの世に生まれてきてくれて良かった。俺と同じ時を生きてくれていて良かった。お前と出会えて良かった」
そこで一旦言葉を切った銀さんは、大きく一つ深呼吸をする。そして少し頬を赤らめながら言った。
「こんなにも近くで……好きな女を祝う機会を与えてくれてありがとよ」
「……っ!」
驚きで息が止まる。
だって単なる誕生祝いの言葉かと思っていたら、まさかの告白を兼ねていたから。
「銀さん……」
言葉が見つからず呆然としながら、かろうじて銀さんの名前を呼べば、挙動不審になる銀さん。
「ど、どうよ。これならぜってェ忘れらんねーだろ?」
「うん……うん」
忘れられるはずがない。
こんなにもインパクトの強いお祝いは、後にも先にも無いだろう。
しかもこの銀さんの言葉は、一瞬で私の中に恋心を生まれさせたらしい。自分でも信じられないけれど、今私の心臓は、とんでもない速さで鼓動しているから。少し前までは、単なる雇用主とアルバイトだったけれど、きっとこれから私たちの関係は変わって行くだろう。そう思った。
「……改めて誕生日おめでとさん、詩織」
「ありがとう銀さん」
「おうよ」
照れ臭そうにニカリと笑った銀さんは、私の頭をポンポンと優しく撫でる。その笑顔は私の誕生日だけでなく、芽生えたばかりの恋心をも祝ってくれているように感じられた。
〜了〜
「ところで、私を好きになったきっかけって何?」
「それは……べ、別に良いだろッ」
「誕生日プレゼントの一環って事じゃダメ?」
「くッ……卑怯な」
「ね、聞かせて?」
「……ばーさんの店で見かけて一目惚れしたんだよッ。恥ずかしーから言わせんなバカヤロー!」
「そうだったんだ……じゃあもしかして、お登勢さんが私を万事屋に紹介したのは、銀さんが頼んだから?」
「いや、そいつは偶然だ。でもまァ二つ返事で引き受けたけどよォ」
「あの面接は?」
「形だけってやつに決まってんだろ」
「……納得」
鍵の閉まる音が聞こえた瞬間から、何とも言えない緊張感に包まれている。まさかこの状況は……いや、でも銀さんがそんな事……。
「詩織」
「ひゃ、ひゃいっ!」
「去年のプレゼントの髪飾り。あれは俺が選んだヤツだ」
「……へ?」
自分の恥ずかしい予想にかすりもしない銀さんの言葉が、一気に私の緊張を解いた。代わりに頭の中が疑問符で埋め尽くされる。
確かにいつもお登勢さんが選んでくれるものとは雰囲気が違うなとは思っていたけれど、他の人物が選んだとは想像もしていなかったから。
「銀さんが? 私たち、去年の誕生日には未だ顔見知り程度だったよね?」
私が銀さんを知人として認識するようになったのは、バイトの面接の時。それ以前はお登勢さんの店の二階で万事屋をやっている人というだけで、せいぜい会釈程度の関係だった。
「お登勢さんに頼まれたって事?」
「いや、俺が選びたいっつったんだわ」
「どういう事……?」
ますます銀さんの言っている意味が分からない。何で銀さんが去年の段階で、私へのプレゼントを選びたがるわけ?
「理由は一つしかねーだろうが。俺なりにお前の誕生日を祝いたかったんだよ」
「え……?」
その答えが唯一無二の如く言われても理解できず、頭の中がぐるぐるしている。そんな私に、銀さんは苦笑いをしていた。
「ホントに何も気付いてねーのか。まァばあさんの店で顔を合わせても、あの頃はいつもおふくろさんと一緒だったから話しかけ辛かったしなァ」
そう言って銀さんは懐に手を入れると、小さな箱を取り出した。開けてみろと手渡され、言われた通りに中を見れば、そこには可愛い帯留めが入っていた。
「可愛い……!」
「そういうの好きなんだろ?」
「うん! でもこれ、最初から準備してくれてたの? もし私がはっきりと欲しい物を言ってたら……」
「それとは別にコイツも渡すつもりだったんだよ。お前に似合いそうだったしな」
「銀さん……」
私の趣味ど真ん中のデザインである帯留めはきっと、銀さんが一生懸命探してくれた物なんだろう。その心遣いに、胸が一杯になった。
「ありが……」
この喜びを伝えるため、お礼を言おうとしたのに。突如ツイ、と銀さんの指が私の唇の動きを塞ぐ。続きを紡ぐことの出来ぬまま銀さんを見れば、真剣な面持ちだった。
「礼は早ェよ。お前の望むプレゼントが未だだろうが」
そう言うと、今度は優しい眼差しを私に向けた。
「お前がこの世に生まれてきてくれて良かった。俺と同じ時を生きてくれていて良かった。お前と出会えて良かった」
そこで一旦言葉を切った銀さんは、大きく一つ深呼吸をする。そして少し頬を赤らめながら言った。
「こんなにも近くで……好きな女を祝う機会を与えてくれてありがとよ」
「……っ!」
驚きで息が止まる。
だって単なる誕生祝いの言葉かと思っていたら、まさかの告白を兼ねていたから。
「銀さん……」
言葉が見つからず呆然としながら、かろうじて銀さんの名前を呼べば、挙動不審になる銀さん。
「ど、どうよ。これならぜってェ忘れらんねーだろ?」
「うん……うん」
忘れられるはずがない。
こんなにもインパクトの強いお祝いは、後にも先にも無いだろう。
しかもこの銀さんの言葉は、一瞬で私の中に恋心を生まれさせたらしい。自分でも信じられないけれど、今私の心臓は、とんでもない速さで鼓動しているから。少し前までは、単なる雇用主とアルバイトだったけれど、きっとこれから私たちの関係は変わって行くだろう。そう思った。
「……改めて誕生日おめでとさん、詩織」
「ありがとう銀さん」
「おうよ」
照れ臭そうにニカリと笑った銀さんは、私の頭をポンポンと優しく撫でる。その笑顔は私の誕生日だけでなく、芽生えたばかりの恋心をも祝ってくれているように感じられた。
〜了〜
「ところで、私を好きになったきっかけって何?」
「それは……べ、別に良いだろッ」
「誕生日プレゼントの一環って事じゃダメ?」
「くッ……卑怯な」
「ね、聞かせて?」
「……ばーさんの店で見かけて一目惚れしたんだよッ。恥ずかしーから言わせんなバカヤロー!」
「そうだったんだ……じゃあもしかして、お登勢さんが私を万事屋に紹介したのは、銀さんが頼んだから?」
「いや、そいつは偶然だ。でもまァ二つ返事で引き受けたけどよォ」
「あの面接は?」
「形だけってやつに決まってんだろ」
「……納得」
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