君が生まれた日(銀時)
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「なァ、何か欲しいモンあるか?」
いつものようにアルバイトで万事屋を訪れた私が開口一番、銀さんに言われた台詞がそれだった。
「欲しい物?」
いきなりの事で銀さんが何を言いたいのかがさっぱり分からず、とりあえず復唱して銀さんを見つめる。こうしていれば、多分その意味を説明してくれるだろうと期待して。
案の定、面倒臭そうな顔をしながらも銀さんは言った。
「だ〜から欲しいモンだよ。お前、今日が誕生日なんだろ?」
「え? 何で知ってるの?」
万事屋でアルバイトとして働くようになって、半年あまり。母の友達であるお登勢さんの紹介ということで、履歴書も何も準備すること無く、たった一度の面接で採用決定。しかもその時の内容は、
「お前、甘いモン好き?」
「大好きです」
「採用! あ、俺のことは銀さんって呼んでくれれば良いから。あと敬語なんかも不要な。んじゃ明日からヨロシク〜」
「……えぇ!?」
という超絶スピーディーかつ、意味の分からないものだった。
だからこそ銀さんは、私の個人情報になんて興味が無いんだと思ってたんだけど……。
「私、銀さんに誕生日なんて言ったこと無かったよね?」
「それは……あ〜……ババアがうちにお前を紹介する時に、その辺りの話は聞いてたんだよ」
「そうだったの? まぁ確かに、小さい頃からお登勢さんには可愛がってもらってからな〜。毎年誕生日には髪飾りや帯留めなんかを贈ってくれたりしてね。去年も可愛い髪飾りをくれたんだよ」
「あのババアが可愛い物を選ぶなんざ、考えらんねーな」
呆れたように言う銀さん。本当は誰よりもお登勢さんの優しさを知っている癖に、またわざと憎まれ口を叩いてる。
今となっては銀さんが、素直になれない性格だと分かっているけれど、ここで働き始めた当初は、口も性格も捻くれてるなと思っていた。もちろん本人には言ってない。
でもこれでようやく銀さんの言葉の意味が分かった。要するに、私に誕生日プレゼントをくれようとしているわけだ。それならば遠慮なく要望を伝えた方が良いだろう。そう思い、欲しいものを頭に思い浮かべようとしたのだけれどーー。
「あの〜真面目な話、欲しい物が思いつかないんですが」
「マジで?」
そう、思いつかない。
な〜んにも、これっぽっちも、一欠片も。
そりゃあ『美味しい物』とか『癒やしの時間』みたいな物ならいくらでもウェルカムだけど、そういう物は誕生日っぽくないし、できればもっと特別感のある物が嬉しい。
「女ってのは、いつでも欲しいモンがあるんじゃねェのか?」
「人によるんじゃない。それともお約束で『ビッチのバッグ』みたいな物をねだった方が良い?」
「銀さんの懐事情を誰よりも知ってるお前が言う!? んな金どこにあるんだっつーの」
「言ってみただけですよ〜っだ。お金があっても別に欲しくないから安心してよ」
焦る銀さんに苦笑いしつつ、改めて欲しい物とやらを考えてみる。
特別感があって、ついでに銀さんの懐に優しいプレゼントか〜。だとしたら今思いつくのはーー。
「言葉」
「はァ?」
眉間にシワを寄せた銀さんが、驚きとも呆れとも取れる声を上げた。まぁそれは当然のことだろう。私だって逆の立場ならわけが分からず戸惑うはずだ。
「何だよ言葉って。意味分かんねーんだけど」
天パな白髪をくしゃくしゃとかき乱し、死んだ魚のような目で私を見つめる銀さん。そんな彼に、私は真意を説明した。
「えっとですね、ややこしいようで実は単純な話なんだけど……誕生日だからこそ、後々まで記憶に残る言葉が欲しいなと思ってね。物も良いけど、心を打つような、記憶に深く刻まれる言葉をもらえると嬉しいな〜なんて」
「誕生日おめでとう」という決まり文句は確かに嬉しい。でも世の中には、今日が誕生日という人が山ほどいるわけで。
そんな中、同じ誕生日の中でもたった一人、私のためだけに贈られる言葉を紡いでもらえたら感動物じゃないですか。
その思いを説明下手ながら一生懸命話せば、真剣に聞いてくれる銀さん。そして私が話し終えると、銀さんは「特別な言葉、ねェ……」と何かを考える素振りを見せた。そして「ちょっと待ってろ」と言って、何故か部屋の戸を全て閉め始める。
「銀さん?」
「神楽と新八は志村家だよな?」
「え? あ、うん、そうだけど……」
私の答えを聞き、窓も襖も、果ては玄関の鍵までも閉めた銀さんは、最後にもう一度全ての戸がしまっている事を確認して私の前に戻ってきた。
いつものようにアルバイトで万事屋を訪れた私が開口一番、銀さんに言われた台詞がそれだった。
「欲しい物?」
いきなりの事で銀さんが何を言いたいのかがさっぱり分からず、とりあえず復唱して銀さんを見つめる。こうしていれば、多分その意味を説明してくれるだろうと期待して。
案の定、面倒臭そうな顔をしながらも銀さんは言った。
「だ〜から欲しいモンだよ。お前、今日が誕生日なんだろ?」
「え? 何で知ってるの?」
万事屋でアルバイトとして働くようになって、半年あまり。母の友達であるお登勢さんの紹介ということで、履歴書も何も準備すること無く、たった一度の面接で採用決定。しかもその時の内容は、
「お前、甘いモン好き?」
「大好きです」
「採用! あ、俺のことは銀さんって呼んでくれれば良いから。あと敬語なんかも不要な。んじゃ明日からヨロシク〜」
「……えぇ!?」
という超絶スピーディーかつ、意味の分からないものだった。
だからこそ銀さんは、私の個人情報になんて興味が無いんだと思ってたんだけど……。
「私、銀さんに誕生日なんて言ったこと無かったよね?」
「それは……あ〜……ババアがうちにお前を紹介する時に、その辺りの話は聞いてたんだよ」
「そうだったの? まぁ確かに、小さい頃からお登勢さんには可愛がってもらってからな〜。毎年誕生日には髪飾りや帯留めなんかを贈ってくれたりしてね。去年も可愛い髪飾りをくれたんだよ」
「あのババアが可愛い物を選ぶなんざ、考えらんねーな」
呆れたように言う銀さん。本当は誰よりもお登勢さんの優しさを知っている癖に、またわざと憎まれ口を叩いてる。
今となっては銀さんが、素直になれない性格だと分かっているけれど、ここで働き始めた当初は、口も性格も捻くれてるなと思っていた。もちろん本人には言ってない。
でもこれでようやく銀さんの言葉の意味が分かった。要するに、私に誕生日プレゼントをくれようとしているわけだ。それならば遠慮なく要望を伝えた方が良いだろう。そう思い、欲しいものを頭に思い浮かべようとしたのだけれどーー。
「あの〜真面目な話、欲しい物が思いつかないんですが」
「マジで?」
そう、思いつかない。
な〜んにも、これっぽっちも、一欠片も。
そりゃあ『美味しい物』とか『癒やしの時間』みたいな物ならいくらでもウェルカムだけど、そういう物は誕生日っぽくないし、できればもっと特別感のある物が嬉しい。
「女ってのは、いつでも欲しいモンがあるんじゃねェのか?」
「人によるんじゃない。それともお約束で『ビッチのバッグ』みたいな物をねだった方が良い?」
「銀さんの懐事情を誰よりも知ってるお前が言う!? んな金どこにあるんだっつーの」
「言ってみただけですよ〜っだ。お金があっても別に欲しくないから安心してよ」
焦る銀さんに苦笑いしつつ、改めて欲しい物とやらを考えてみる。
特別感があって、ついでに銀さんの懐に優しいプレゼントか〜。だとしたら今思いつくのはーー。
「言葉」
「はァ?」
眉間にシワを寄せた銀さんが、驚きとも呆れとも取れる声を上げた。まぁそれは当然のことだろう。私だって逆の立場ならわけが分からず戸惑うはずだ。
「何だよ言葉って。意味分かんねーんだけど」
天パな白髪をくしゃくしゃとかき乱し、死んだ魚のような目で私を見つめる銀さん。そんな彼に、私は真意を説明した。
「えっとですね、ややこしいようで実は単純な話なんだけど……誕生日だからこそ、後々まで記憶に残る言葉が欲しいなと思ってね。物も良いけど、心を打つような、記憶に深く刻まれる言葉をもらえると嬉しいな〜なんて」
「誕生日おめでとう」という決まり文句は確かに嬉しい。でも世の中には、今日が誕生日という人が山ほどいるわけで。
そんな中、同じ誕生日の中でもたった一人、私のためだけに贈られる言葉を紡いでもらえたら感動物じゃないですか。
その思いを説明下手ながら一生懸命話せば、真剣に聞いてくれる銀さん。そして私が話し終えると、銀さんは「特別な言葉、ねェ……」と何かを考える素振りを見せた。そして「ちょっと待ってろ」と言って、何故か部屋の戸を全て閉め始める。
「銀さん?」
「神楽と新八は志村家だよな?」
「え? あ、うん、そうだけど……」
私の答えを聞き、窓も襖も、果ては玄関の鍵までも閉めた銀さんは、最後にもう一度全ての戸がしまっている事を確認して私の前に戻ってきた。
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