永劫の間で(九尾銀時)
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「それは……何?」
女を見つめたまま何も言わない銀時の瞳が、少しだけ揺れている。その切ない眼差しを不思議に思いながらも、女は答えの先を求めた。
銀時をまっすぐ見返す女に、先程までの祓い屋としての気概は感じられない。今はただ純粋に、銀時の答えが聞きたかった。
「アンタにとって、前世の私とやらはどういう存在だったの?」
鎖骨に浮かぶ紅を指でなぞりながら口にした問いは銀時の胸を締めつけ、今度こそ答えを導く。ただしその答えは、女の耳元で囁かれた。
「好き、だった」
「……っ!」
それは、消え入りそうに小さな声。だが女の耳にはっきりと届いた『好き』の二文字は、女に大きな衝撃を与えた。その言葉と共に、恐る恐るではあるが全身を包み込んだ優しい熱が、女の心の奥底へと浸透していく。
「好き……? 妖怪が、私を……?」
驚く女に小さく頷いた銀時は、懐に手を入れると何かを取り出した。
「あァ。だからこそもう再会を望んじゃいけねェって、ずっと自分に言い聞かせてたんだがなァ……やっぱこうして会っちまうと、そんな決心なんて吹っ飛んじまう。生まれ変わったお前の姿形 は違っていても、俺の思いはあの頃と全く変わっちゃいねェよ」
そう言って銀時が差し出したのは、古びてはいるが大切にされていたであろう美しい簪。何かの罠かと疑いはするも、銀時の瞳に曇りは無い。ならばとゆっくり伸ばした手で女がそれを掴んだ瞬間ーー。
「……っ!」
女の中に深く沈み込んでいた遠い記憶が、一気に呼び起こされた。
「ぎ……んさん……?」
声を震わせながら、女が言う。ハッとして息を飲んだ銀時が女を見つめると、再び女は言った。
「銀さん……」
「……思い出したのか?……詩織」
ここにきて初めて銀時が、不安げな声で女を詩織と呼ぶ。申し訳なさそうに、でも嬉しそうに微笑んだ女は、コクリと頷いた。
「うん……全部思い出したよ。ごめんね、すぐに思い出せなくて……」
「詩織……ッ!」
今度は叫ぶように呼ばれた名前。
目の前にいる女が詩織だと確信した瞬間から、呼びたかった愛しい名。だが記憶が戻るまでは口にすまいと、必死に耐えていたのだ。
「詩織……詩織……ッ」
もう何も躊躇うことはない。懐かしく甘い匂いに引き寄せられながら、銀時は貪るように唇を重ねて詩織の名を呼んだ。
何度も、何度も。
それ以外の言葉を忘れてしまったかのように。
女を見つめたまま何も言わない銀時の瞳が、少しだけ揺れている。その切ない眼差しを不思議に思いながらも、女は答えの先を求めた。
銀時をまっすぐ見返す女に、先程までの祓い屋としての気概は感じられない。今はただ純粋に、銀時の答えが聞きたかった。
「アンタにとって、前世の私とやらはどういう存在だったの?」
鎖骨に浮かぶ紅を指でなぞりながら口にした問いは銀時の胸を締めつけ、今度こそ答えを導く。ただしその答えは、女の耳元で囁かれた。
「好き、だった」
「……っ!」
それは、消え入りそうに小さな声。だが女の耳にはっきりと届いた『好き』の二文字は、女に大きな衝撃を与えた。その言葉と共に、恐る恐るではあるが全身を包み込んだ優しい熱が、女の心の奥底へと浸透していく。
「好き……? 妖怪が、私を……?」
驚く女に小さく頷いた銀時は、懐に手を入れると何かを取り出した。
「あァ。だからこそもう再会を望んじゃいけねェって、ずっと自分に言い聞かせてたんだがなァ……やっぱこうして会っちまうと、そんな決心なんて吹っ飛んじまう。生まれ変わったお前の
そう言って銀時が差し出したのは、古びてはいるが大切にされていたであろう美しい簪。何かの罠かと疑いはするも、銀時の瞳に曇りは無い。ならばとゆっくり伸ばした手で女がそれを掴んだ瞬間ーー。
「……っ!」
女の中に深く沈み込んでいた遠い記憶が、一気に呼び起こされた。
「ぎ……んさん……?」
声を震わせながら、女が言う。ハッとして息を飲んだ銀時が女を見つめると、再び女は言った。
「銀さん……」
「……思い出したのか?……詩織」
ここにきて初めて銀時が、不安げな声で女を詩織と呼ぶ。申し訳なさそうに、でも嬉しそうに微笑んだ女は、コクリと頷いた。
「うん……全部思い出したよ。ごめんね、すぐに思い出せなくて……」
「詩織……ッ!」
今度は叫ぶように呼ばれた名前。
目の前にいる女が詩織だと確信した瞬間から、呼びたかった愛しい名。だが記憶が戻るまでは口にすまいと、必死に耐えていたのだ。
「詩織……詩織……ッ」
もう何も躊躇うことはない。懐かしく甘い匂いに引き寄せられながら、銀時は貪るように唇を重ねて詩織の名を呼んだ。
何度も、何度も。
それ以外の言葉を忘れてしまったかのように。
