永劫の間で(九尾銀時)
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「一体何故……詩織は誰に殺されたんだッ!?」
「詳しくは分からねェ。今んとこ分かってんのは、お前に恨みを持った妖怪だってェことくらいだ」
「俺に恨みがあんなら、直接来りゃァ良いじゃねェか! 何でわざわざ詩織を……」
「俺だって知らねェよ! だが昨夜あの女の家の近くで、九尾を倒すと息巻いていた妖怪が人間に目撃されてる。その直後に女が死んでたってェ話だ」
「そんな……詩織……ッ!」
銀時が、絞り出すように詩織の名を呼ぶ。白くなるほど強く握られた拳は食い込んだ爪によって傷つき、赤い血を零した。足元に咲く花々はそれを受け止め、悲しみの色に染まっていく。肩を震わせて浅い呼吸を繰り返しながら、銀時はその色の変わりゆく様をただ見つめていた。
もう随分と長い付き合いだが、こんなにも打ちひしがれる銀時の姿を見るのは初めてで、さすがの十四郎も戸惑いを隠せない。しかしだからと言ってこのままにしておくわけにもいかないと悩んだ末、十四郎は慰めの言葉の代わりに言った。
「女に手をかけたと思しき妖怪は、未だ里の周辺をうろついてるらしいぜ」
十四郎の言葉が、今何をすべきか考えろと銀時の背中を押す。それは功を奏し、動揺と哀しみに呆然としていた銀時を現実へと引き戻した。
「……悪ィ。俺が戻るまでここを頼むわ」
「あァ、引き受けた」
たった今まで肩を落としていたはずなのに。一瞬で赤い瞳に強い光を宿らせ、里に向けて走り出した銀時の姿はもう、見えない。
「バカが……本気になった九尾を敵に回そうなんざ、命がいくらあっても足りねェよ。そもそも気付いた時には存在を消されちまってるだろうしな」
呆れたように十四郎が言う。
その言葉通り、日が傾く頃に山へと戻ってきた銀時の尻尾には、よく見なければ分からないほどの小さな赤いシミが一つ付いていただけだった。
「随分と早かったな」
「あァ……雑魚だったしな。跡形も残さず消しといたわ」
覇気のない表情で事も無げに言う銀時。だがそれは悲しみの裏返しだという事を知っている十四郎は、ただ一言「そうか」と返すにとどめた。
すると銀時が握った手を差し出す。
「俺が余計な事をしなけりゃ、こんな事にはならなかったんだろうなァ……」
そう呟やきながら開いて見せた手の中にあったのは、血に染まった簪。
「それは?」
「詩織が里に帰る時に渡したんだよ。……あの妖怪が詩織を襲ったのは、詩織の体のそこかしこに俺のニオイが染み付いてたからだ。特に俺が付けた痕は執着の強さが感じられて、俺の足枷になる人質として使えると思ったらしい。だが詩織は俺に迷惑はかけられないと抵抗して……」
もう片方の手で鎖骨に触れ、ため息を吐く。
「あの痕は再会の為だけじゃなく、妖怪除けのつもりでもあったんだがなァ。思いっきり逆効果になっちまった」
そう言って浮かべた自嘲の笑みは、目の当たりにした十四郎の心を締め付けるほどに悲しかった。
「詳しくは分からねェ。今んとこ分かってんのは、お前に恨みを持った妖怪だってェことくらいだ」
「俺に恨みがあんなら、直接来りゃァ良いじゃねェか! 何でわざわざ詩織を……」
「俺だって知らねェよ! だが昨夜あの女の家の近くで、九尾を倒すと息巻いていた妖怪が人間に目撃されてる。その直後に女が死んでたってェ話だ」
「そんな……詩織……ッ!」
銀時が、絞り出すように詩織の名を呼ぶ。白くなるほど強く握られた拳は食い込んだ爪によって傷つき、赤い血を零した。足元に咲く花々はそれを受け止め、悲しみの色に染まっていく。肩を震わせて浅い呼吸を繰り返しながら、銀時はその色の変わりゆく様をただ見つめていた。
もう随分と長い付き合いだが、こんなにも打ちひしがれる銀時の姿を見るのは初めてで、さすがの十四郎も戸惑いを隠せない。しかしだからと言ってこのままにしておくわけにもいかないと悩んだ末、十四郎は慰めの言葉の代わりに言った。
「女に手をかけたと思しき妖怪は、未だ里の周辺をうろついてるらしいぜ」
十四郎の言葉が、今何をすべきか考えろと銀時の背中を押す。それは功を奏し、動揺と哀しみに呆然としていた銀時を現実へと引き戻した。
「……悪ィ。俺が戻るまでここを頼むわ」
「あァ、引き受けた」
たった今まで肩を落としていたはずなのに。一瞬で赤い瞳に強い光を宿らせ、里に向けて走り出した銀時の姿はもう、見えない。
「バカが……本気になった九尾を敵に回そうなんざ、命がいくらあっても足りねェよ。そもそも気付いた時には存在を消されちまってるだろうしな」
呆れたように十四郎が言う。
その言葉通り、日が傾く頃に山へと戻ってきた銀時の尻尾には、よく見なければ分からないほどの小さな赤いシミが一つ付いていただけだった。
「随分と早かったな」
「あァ……雑魚だったしな。跡形も残さず消しといたわ」
覇気のない表情で事も無げに言う銀時。だがそれは悲しみの裏返しだという事を知っている十四郎は、ただ一言「そうか」と返すにとどめた。
すると銀時が握った手を差し出す。
「俺が余計な事をしなけりゃ、こんな事にはならなかったんだろうなァ……」
そう呟やきながら開いて見せた手の中にあったのは、血に染まった簪。
「それは?」
「詩織が里に帰る時に渡したんだよ。……あの妖怪が詩織を襲ったのは、詩織の体のそこかしこに俺のニオイが染み付いてたからだ。特に俺が付けた痕は執着の強さが感じられて、俺の足枷になる人質として使えると思ったらしい。だが詩織は俺に迷惑はかけられないと抵抗して……」
もう片方の手で鎖骨に触れ、ため息を吐く。
「あの痕は再会の為だけじゃなく、妖怪除けのつもりでもあったんだがなァ。思いっきり逆効果になっちまった」
そう言って浮かべた自嘲の笑みは、目の当たりにした十四郎の心を締め付けるほどに悲しかった。
