BLEACH(現在13編)
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【幸せの笑みを】(浦原)
12月31日というのは、とかく忙しいもので。
年越しの準備にばかり気を取られ、それ以外の事には頭が回らぬものだ。
そして例に漏れず今日が誕生日の浦原は、もう夜になろうというのに誰からも祝いの言葉一つかけられてはいない。
「分かっちゃいるんですけど、結構寂しいもんなんスよねぇ」
キッチンでは、香織が夕食用に年越しそばの準備中だ。従業員は皆一護たちと夕方から集まり、そのまま初詣コースだという事で、今夜は二人きりだった。
「ちょっとは期待してたんスけどね」
はは、と自嘲気味に笑いながら、浦原はテレビを点ける。画面の向こうでは、タレントたちが楽しそうに馬鹿騒ぎしていたが、一緒に笑う気にはなれなかった。
そこに、香織が蕎麦を持ってやってくる。
「お待たせ、喜助さん。お蕎麦できたよ〜」
ふんわりと温かな湯気をまといながら部屋に入ってきた香織は、浦原の前にそっと蕎麦の器を置いた。
「ありがとうございます。うわ〜、美味そうっスね」
一瞬で笑顔を作った浦原が言うと、香織も笑顔を見せる。
「今夜は二人だけだから、ちょっぴり奮発して良いエビを買っちゃった。早速食べよ」
「はいっス」
ニコニコと嬉しそうな香織を横目に「では」と置かれた箸を手に取った浦原は、珍しく紙の箸袋に入れられた箸を取り出そうと袋を開いた。すると紙の内側に何かが書かれている事に気付く。
「何スか? これ」
不思議に思いながら全て開いて中を見ると、そこにはーー。
喜助さん、お誕生日おめでとう。
喜助さんに出会えて良かった。
生まれてきてくれてありがとう。
今夜は二人きりだし、お祝いに一つだけ何でもお願いを聞くからね。
大好きだよ
香織
と書かれていた。
「香織さん……っ!」
感動のあまり言葉を失いながらも浦原が香織を見ると、真っ赤な顔で必死に蕎麦をすする香織の姿がある。
それを見た浦原はフッと小さく笑うと、もう一度箸袋に書かれたメッセージを読み返して言った。
「香織さんが大好きと伝えてくれたのって、初めてっスよね。誕生日を祝ってくれて、しかも今夜は本当の意味でアタシのものになってくれるという確約まで。こんなに嬉しい誕生日は初めてっス」
浦原の言葉に、ますます香織の顔が赤くなる。恥ずかしさで顔を上げられず、必死に蕎麦をすすり続ける香織に本当の笑顔を見せた浦原は、
「そんじゃ、急いで食べてお祝いをいただく事にしましょうか」
と言うと、香織に負けじと蕎麦をすすり始めたのだった。
〜了〜
12月31日というのは、とかく忙しいもので。
年越しの準備にばかり気を取られ、それ以外の事には頭が回らぬものだ。
そして例に漏れず今日が誕生日の浦原は、もう夜になろうというのに誰からも祝いの言葉一つかけられてはいない。
「分かっちゃいるんですけど、結構寂しいもんなんスよねぇ」
キッチンでは、香織が夕食用に年越しそばの準備中だ。従業員は皆一護たちと夕方から集まり、そのまま初詣コースだという事で、今夜は二人きりだった。
「ちょっとは期待してたんスけどね」
はは、と自嘲気味に笑いながら、浦原はテレビを点ける。画面の向こうでは、タレントたちが楽しそうに馬鹿騒ぎしていたが、一緒に笑う気にはなれなかった。
そこに、香織が蕎麦を持ってやってくる。
「お待たせ、喜助さん。お蕎麦できたよ〜」
ふんわりと温かな湯気をまといながら部屋に入ってきた香織は、浦原の前にそっと蕎麦の器を置いた。
「ありがとうございます。うわ〜、美味そうっスね」
一瞬で笑顔を作った浦原が言うと、香織も笑顔を見せる。
「今夜は二人だけだから、ちょっぴり奮発して良いエビを買っちゃった。早速食べよ」
「はいっス」
ニコニコと嬉しそうな香織を横目に「では」と置かれた箸を手に取った浦原は、珍しく紙の箸袋に入れられた箸を取り出そうと袋を開いた。すると紙の内側に何かが書かれている事に気付く。
「何スか? これ」
不思議に思いながら全て開いて中を見ると、そこにはーー。
喜助さん、お誕生日おめでとう。
喜助さんに出会えて良かった。
生まれてきてくれてありがとう。
今夜は二人きりだし、お祝いに一つだけ何でもお願いを聞くからね。
大好きだよ
香織
と書かれていた。
「香織さん……っ!」
感動のあまり言葉を失いながらも浦原が香織を見ると、真っ赤な顔で必死に蕎麦をすする香織の姿がある。
それを見た浦原はフッと小さく笑うと、もう一度箸袋に書かれたメッセージを読み返して言った。
「香織さんが大好きと伝えてくれたのって、初めてっスよね。誕生日を祝ってくれて、しかも今夜は本当の意味でアタシのものになってくれるという確約まで。こんなに嬉しい誕生日は初めてっス」
浦原の言葉に、ますます香織の顔が赤くなる。恥ずかしさで顔を上げられず、必死に蕎麦をすすり続ける香織に本当の笑顔を見せた浦原は、
「そんじゃ、急いで食べてお祝いをいただく事にしましょうか」
と言うと、香織に負けじと蕎麦をすすり始めたのだった。
〜了〜