BLEACH(現在13編)
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【還るべき場所(浦原)】
あの人を初めて目にしたのは、ある夏の日。
草むらに咲いていた1本のひまわりを撮ろうとしていた時、偶然ファインダーを横切った名も知らぬ彼を、何故か忘れる事が出来なかった。
数日後。ふと花屋で見かけたサンリッチオレンジ。
残り3本だと言われ、何とは無しに買って帰る途中、この辺りでは珍しい作務衣のあの人を見かけた。
不思議な懐かしさで心を締め付けられる感覚に思わず隠れてしまったけれど、胸のドキドキは隠せなかった。
それからしばらくして。あの人の帽子に似た模様の一輪挿しを見つけ、思わず買ってしまった。
せっかくだからと毎日違うひまわりを買って帰り、今日で7日目。花束にすると、切なさと愛しさが募った。
あの人を意識するようになってから、私が目にしたひまわりは全部で11本。いつしか私にとってあの人は、最愛の人になっていた。
「あの、私……!」
その日、私は決死の覚悟で彼を呼び出した。初めて彼を見た時から縁のある、ひまわり畑をわざわざ指定して。
突然の事に断られるかと思ったけれど、彼は嫌な顔一つせずやって来てくれた。
「いきなりごめんなさい。ずっと貴方を見てました。きっと私の事なんて知らなかったと思いますけど……」
「知ってたっすよ」
「……え?」
まさかの言葉に驚いて彼を見ると、その口元は優しく笑っていた。
「私の事を知ってたんですか? でも、いつから……」
「最初からっす」
そう言った彼は、咲き乱れるひまわりに視線を移す。その姿が何故か切なげに見えて、私は胸を押さえた。
「相変わらず好きなんすね、ひまわり」
「何の事ですか?」
意味が分からず私が尋ねると、彼は何故か話題を変える。
「名前、教えてくれませんかね? 貴女の今の名前を」
「今の名前、ですか……? 松永香織です」
「香織さんっすか。……良い名前ですね」
これは私の自惚れかもしれないけれど、彼が私の名を呼んだ時、深く愛おしい気持ちが込められているように思えた。
「ねぇ香織さん、知ってますかね? このひまわり畑のひまわりの本数」
「え? いえ、すみません。ひまわり畑と呼ぶには小さいって事くらいは分かるのですが、本数までは……」
ここは商業的な場所ではなく、個人の趣味で作った畑らしい。その為人は少なく、穴場的存在だった。
「答えは1000本っす。その中で、一番手前の少しだけ色が違うひまわりは100本あるんすよ」
「そうなんですか。よくご存じですね」
「そりゃぁアタシがきっちり数えてましたからね」
「じゃあひょっとしてこの畑の持ち主は……」
「はい、アタシっす」
そう答えた彼はクスクスと笑い、最も近くにあった、色の違うひまわりを一本手折った。
「どうぞ、香織さん」
「あ、ありがとうございます」
突然ひまわりを手渡され、慌てて受け取る私。鮮やかな黄色い花弁の中に数枚違う色の混ざっているこの品種は、初めて見るはずなのに妙な懐かしさを覚えていた。
「凄く可愛いですね、このひまわり。改良か何かをしたんですか?」
私が言うと、何故か彼は一瞬悲し気な顔をする。でも小さくため息を吐くと、ひまわりを持つ私の手をそっと包み込んできた。
「あの……?」
大きな手の温もりにドキドキしながら見上げれば、そこにあるのは優しい眼差し。
「もう一度始めましょうかね。――最初から」
「最初から、とは……?」
「香織さんは、ひまわりの花言葉を知ってますか? 1本のひまわりは『一目惚れ』なんすよ」
「え? あの、それって……」
突然の話に頭が回らず、動揺を隠せない私。
でもそんな事など気にならないのか、彼は話を続けた。
「今香織さんが持っている改良したひまわりは、たった今手折った事で99本になりました。99本の意味は……『永遠の愛』または『ずっと一緒にいよう』」
チクリ、と、何かが胸に引っかかった。彼を見る度に感じていた愛おしさと切なさが入り混じり、自分でも分からない感情が溢れそうになる。
「そしてここにあった1000本のひまわりも、手折った事で999本になりました。999本の意味は……『何度生まれ変わっても君を愛している』」
「生まれ変わって……あ……!」
記憶が、蘇る。
それは未だ、私が現世に生まれ変わる前。尸魂界にいた頃の記憶。
――私ね、花の中ではひまわりが一番大好きなの。私の気持ちを代弁してくれる、大切な花なんだ。
花言葉なんて興味が無かったくせに。私の言葉で必死になって調べてくれた彼。
その数日後に108本のひまわりの花束を持ってきてくれたつもりが、数えてみれば実際は何と109本。慌てて1本を抜き出し
「一目惚れからスタートしたっす」
と言いながら冷や汗をかいていた彼に、私は笑いを禁じ得なかった。
全てを思い出した私は、『ああ、だからこんなひまわり畑を作っていたのか』とその意味を理解する。
「これだけの数を手入れするのは、大変だったんすよ。どれだけ生きてみても、待ち続けるってのは結構辛いもんっすね」
「……喜助、さん……」
涙が溢れた。それに気付いた喜助さんが、私をそっと抱き寄せてくれる。
「ほんと、待ちくたびれたっすよ」
「ごめんなさい……」
あの頃と変わらない喜助さんの温もりに、涙が止まらない。
胸に縋り付いて泣き続ける私を強く抱きしめながら、喜助さんは優しく言った。
「お帰りなさいっす。……香織」
「うん……ただいま、喜助さん」
~了~
あの人を初めて目にしたのは、ある夏の日。
草むらに咲いていた1本のひまわりを撮ろうとしていた時、偶然ファインダーを横切った名も知らぬ彼を、何故か忘れる事が出来なかった。
数日後。ふと花屋で見かけたサンリッチオレンジ。
残り3本だと言われ、何とは無しに買って帰る途中、この辺りでは珍しい作務衣のあの人を見かけた。
不思議な懐かしさで心を締め付けられる感覚に思わず隠れてしまったけれど、胸のドキドキは隠せなかった。
それからしばらくして。あの人の帽子に似た模様の一輪挿しを見つけ、思わず買ってしまった。
せっかくだからと毎日違うひまわりを買って帰り、今日で7日目。花束にすると、切なさと愛しさが募った。
あの人を意識するようになってから、私が目にしたひまわりは全部で11本。いつしか私にとってあの人は、最愛の人になっていた。
「あの、私……!」
その日、私は決死の覚悟で彼を呼び出した。初めて彼を見た時から縁のある、ひまわり畑をわざわざ指定して。
突然の事に断られるかと思ったけれど、彼は嫌な顔一つせずやって来てくれた。
「いきなりごめんなさい。ずっと貴方を見てました。きっと私の事なんて知らなかったと思いますけど……」
「知ってたっすよ」
「……え?」
まさかの言葉に驚いて彼を見ると、その口元は優しく笑っていた。
「私の事を知ってたんですか? でも、いつから……」
「最初からっす」
そう言った彼は、咲き乱れるひまわりに視線を移す。その姿が何故か切なげに見えて、私は胸を押さえた。
「相変わらず好きなんすね、ひまわり」
「何の事ですか?」
意味が分からず私が尋ねると、彼は何故か話題を変える。
「名前、教えてくれませんかね? 貴女の今の名前を」
「今の名前、ですか……? 松永香織です」
「香織さんっすか。……良い名前ですね」
これは私の自惚れかもしれないけれど、彼が私の名を呼んだ時、深く愛おしい気持ちが込められているように思えた。
「ねぇ香織さん、知ってますかね? このひまわり畑のひまわりの本数」
「え? いえ、すみません。ひまわり畑と呼ぶには小さいって事くらいは分かるのですが、本数までは……」
ここは商業的な場所ではなく、個人の趣味で作った畑らしい。その為人は少なく、穴場的存在だった。
「答えは1000本っす。その中で、一番手前の少しだけ色が違うひまわりは100本あるんすよ」
「そうなんですか。よくご存じですね」
「そりゃぁアタシがきっちり数えてましたからね」
「じゃあひょっとしてこの畑の持ち主は……」
「はい、アタシっす」
そう答えた彼はクスクスと笑い、最も近くにあった、色の違うひまわりを一本手折った。
「どうぞ、香織さん」
「あ、ありがとうございます」
突然ひまわりを手渡され、慌てて受け取る私。鮮やかな黄色い花弁の中に数枚違う色の混ざっているこの品種は、初めて見るはずなのに妙な懐かしさを覚えていた。
「凄く可愛いですね、このひまわり。改良か何かをしたんですか?」
私が言うと、何故か彼は一瞬悲し気な顔をする。でも小さくため息を吐くと、ひまわりを持つ私の手をそっと包み込んできた。
「あの……?」
大きな手の温もりにドキドキしながら見上げれば、そこにあるのは優しい眼差し。
「もう一度始めましょうかね。――最初から」
「最初から、とは……?」
「香織さんは、ひまわりの花言葉を知ってますか? 1本のひまわりは『一目惚れ』なんすよ」
「え? あの、それって……」
突然の話に頭が回らず、動揺を隠せない私。
でもそんな事など気にならないのか、彼は話を続けた。
「今香織さんが持っている改良したひまわりは、たった今手折った事で99本になりました。99本の意味は……『永遠の愛』または『ずっと一緒にいよう』」
チクリ、と、何かが胸に引っかかった。彼を見る度に感じていた愛おしさと切なさが入り混じり、自分でも分からない感情が溢れそうになる。
「そしてここにあった1000本のひまわりも、手折った事で999本になりました。999本の意味は……『何度生まれ変わっても君を愛している』」
「生まれ変わって……あ……!」
記憶が、蘇る。
それは未だ、私が現世に生まれ変わる前。尸魂界にいた頃の記憶。
――私ね、花の中ではひまわりが一番大好きなの。私の気持ちを代弁してくれる、大切な花なんだ。
花言葉なんて興味が無かったくせに。私の言葉で必死になって調べてくれた彼。
その数日後に108本のひまわりの花束を持ってきてくれたつもりが、数えてみれば実際は何と109本。慌てて1本を抜き出し
「一目惚れからスタートしたっす」
と言いながら冷や汗をかいていた彼に、私は笑いを禁じ得なかった。
全てを思い出した私は、『ああ、だからこんなひまわり畑を作っていたのか』とその意味を理解する。
「これだけの数を手入れするのは、大変だったんすよ。どれだけ生きてみても、待ち続けるってのは結構辛いもんっすね」
「……喜助、さん……」
涙が溢れた。それに気付いた喜助さんが、私をそっと抱き寄せてくれる。
「ほんと、待ちくたびれたっすよ」
「ごめんなさい……」
あの頃と変わらない喜助さんの温もりに、涙が止まらない。
胸に縋り付いて泣き続ける私を強く抱きしめながら、喜助さんは優しく言った。
「お帰りなさいっす。……香織」
「うん……ただいま、喜助さん」
~了~
