時の泡沫2
淀城に着いて早々、私は誠の旗を探した。キョロキョロと辺りを見回していると……。
「山崎!」
最も聞きたかった声が、私を呼んだ。
「と……局長代理!」
思わず駆け寄り抱きつきそうになったが、周りの視線に気付いて慌てて頭を下げる。
「ご無事で何よりです」
「お前こそ、伏見奉行所があんな事になっちまって……よく無事でいてくれた」
「御心配をおかけしました。それで、皆は?」
「ああ、あいつらなら……」
「山崎ぃっ!」
ドンっと大きな衝撃を受け、その勢いで局長代理の胸に飛び込んだ私は、突然の出来事に驚いて目を瞬かせた。
「悪ぃ、山崎。喜びのあまりつい……大丈夫か?」
「もう少し加減しろ!馬鹿が!」
原田さんに怒鳴りつける局長代理の腕に抱きしめられた形となり、ついホッとしてしまう自分を叱咤して振り返る。
「痛いですよ原田さん。敵より先に味方に殺されそうです」
「だってよ~、奉行所の混乱でお前が何処にいるか分からねぇって聞いたから心配してたんだって。やっぱ新選組の仲間を失いたくねぇだろ」
そう言って、私の頭にポンと手を置く原田さんの手の温もりは、皆が無事だという事を実感させてくれた。
「皆さん無事で何よりです。永倉さんや井上さん達も?」
「ああ、あっちで隊士達と歓談中だ。島田がすげぇ活躍してよ。奉行所の壁を登れなかった新八を、片手で引き上げたんだぜ?」
「島田さんが? さすがですね」
どうやら監察の者達も無事なようだ。私はホッと胸を撫で下ろした。
「あいつらにも顔を見せてやってくんねぇか。すげぇ心配してたんだぜ。ほら土方さん、山崎の肩を放してやれよ」
言われて気付いたが、局長代理の腕は、先程私を受け止めた状態のままだった。
「ん? あ、ああ、悪ぃ」
「ま、一番山崎を心配してたのは土方さんだからな。土方さんにしちゃ珍しく顔面蒼白だったんだぜ?」
にやにやと笑う原田さんに、局長代理が「うるせぇよ!」と睨みを効かせる。それを見て更に笑みを深くした原田さんは「んじゃ、土方さんとの愛の語らいが終わってからで良いから後で絶対来てくれよ!」と私の耳元で囁くと、永倉さん達の所へと走って行った。
「ひょっとして……」
「ああ、知ってる。新八と源さんも、な」
「いつの間に!? 何か失態をやらかしてましたか?」
慌てる私に、局長代理はポリポリと頭を掻きながら申し訳なさそうに答えた。
「いや、俺の失態だ。奉行所炎上でお前の居場所が分からなかっただろ? それでその……」
「動揺してばらしてしまった、と。ありえない……」
「仕方ねぇだろ! あん時は俺も混乱してたしよ」
今まで必死に隠していたというのに。秘密というものは、一度明るみに出てしまうと、あっという間に広がり伝わってしまうものなのだな。
私は大きく嘆息した。
「でも考えようによっちゃ助かるぜ? この事を知ってるのは未だ幹部だけだし、配置もしやすくなる。ってなわけでお前はこのまま後方支援に徹してくれ。怪我人の数も尋常じゃねぇしな」
「その事についてですが……」
ばれてしまったものは仕方ない。苦笑いをしながら局長代理の指示に頷くと、私は先程感じていた戦い方についての話に切り替えた。
「山崎!」
最も聞きたかった声が、私を呼んだ。
「と……局長代理!」
思わず駆け寄り抱きつきそうになったが、周りの視線に気付いて慌てて頭を下げる。
「ご無事で何よりです」
「お前こそ、伏見奉行所があんな事になっちまって……よく無事でいてくれた」
「御心配をおかけしました。それで、皆は?」
「ああ、あいつらなら……」
「山崎ぃっ!」
ドンっと大きな衝撃を受け、その勢いで局長代理の胸に飛び込んだ私は、突然の出来事に驚いて目を瞬かせた。
「悪ぃ、山崎。喜びのあまりつい……大丈夫か?」
「もう少し加減しろ!馬鹿が!」
原田さんに怒鳴りつける局長代理の腕に抱きしめられた形となり、ついホッとしてしまう自分を叱咤して振り返る。
「痛いですよ原田さん。敵より先に味方に殺されそうです」
「だってよ~、奉行所の混乱でお前が何処にいるか分からねぇって聞いたから心配してたんだって。やっぱ新選組の仲間を失いたくねぇだろ」
そう言って、私の頭にポンと手を置く原田さんの手の温もりは、皆が無事だという事を実感させてくれた。
「皆さん無事で何よりです。永倉さんや井上さん達も?」
「ああ、あっちで隊士達と歓談中だ。島田がすげぇ活躍してよ。奉行所の壁を登れなかった新八を、片手で引き上げたんだぜ?」
「島田さんが? さすがですね」
どうやら監察の者達も無事なようだ。私はホッと胸を撫で下ろした。
「あいつらにも顔を見せてやってくんねぇか。すげぇ心配してたんだぜ。ほら土方さん、山崎の肩を放してやれよ」
言われて気付いたが、局長代理の腕は、先程私を受け止めた状態のままだった。
「ん? あ、ああ、悪ぃ」
「ま、一番山崎を心配してたのは土方さんだからな。土方さんにしちゃ珍しく顔面蒼白だったんだぜ?」
にやにやと笑う原田さんに、局長代理が「うるせぇよ!」と睨みを効かせる。それを見て更に笑みを深くした原田さんは「んじゃ、土方さんとの愛の語らいが終わってからで良いから後で絶対来てくれよ!」と私の耳元で囁くと、永倉さん達の所へと走って行った。
「ひょっとして……」
「ああ、知ってる。新八と源さんも、な」
「いつの間に!? 何か失態をやらかしてましたか?」
慌てる私に、局長代理はポリポリと頭を掻きながら申し訳なさそうに答えた。
「いや、俺の失態だ。奉行所炎上でお前の居場所が分からなかっただろ? それでその……」
「動揺してばらしてしまった、と。ありえない……」
「仕方ねぇだろ! あん時は俺も混乱してたしよ」
今まで必死に隠していたというのに。秘密というものは、一度明るみに出てしまうと、あっという間に広がり伝わってしまうものなのだな。
私は大きく嘆息した。
「でも考えようによっちゃ助かるぜ? この事を知ってるのは未だ幹部だけだし、配置もしやすくなる。ってなわけでお前はこのまま後方支援に徹してくれ。怪我人の数も尋常じゃねぇしな」
「その事についてですが……」
ばれてしまったものは仕方ない。苦笑いをしながら局長代理の指示に頷くと、私は先程感じていた戦い方についての話に切り替えた。