時の泡沫

【移ろう時に戯るは 淡く儚き泡沫で
 愛し恋しと弾ければ 新たなる世に還り咲く】



 空に月は無く、提灯があっても腕を伸ばした先がやっと見えるくらいの闇。激しく打ち付ける雨音は、うちの足音を完全に消してしもてる。

 せやからかな? 誰にも気付かれへんかったんや。

 あない近くまで寄ってたんに――神経尖らして、命張って。纏わり付いた血の匂いを雨で打ち消しながら走り去った彼らは誰一人、うちの存在に気付かんかった。

 これは、あの人がくれた好機やったんかな……?
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