after(銀時と高杉)703訓ネタバレあり

 たった今まで憎まれ口を叩いていたはずなのに。俺の言葉に「上等だ」と口角を上げた高杉は、そのまま息を引き取った。

 おかしいよなァ。
 これまで数え切れないほどの死を見てきた俺が、今この瞬間、目の前のたった一つの死にこんなにも胸を痛めている。

「……なァ、高杉」

 未だ温もりの残る体を支えながら、言った。

「俺はちゃんと笑えてたか?」

 ふ抜けたツラなんかじゃない、お前が好敵手と認める俺を、その右目に焼き付けられたのか。今となってはもう、確かめる事も出来ない。

「笑えてーー」

「いただろ?」と言ってやりたかったのに、心はそれを許してはくれず。込み上げるものを抑え込もうと、震える唇を強く引き締めた俺は、正面に浮かぶ夕日を仰ぎ見た。
 眦から溢れる熱い雫は止められなくとも、その顔を高杉に見られる事はないから。

 高杉と夕日の熱が次第に入れ替わっていく。
 そんな残酷な現実を受け止められるまで、俺はしばしその場に佇んでいた。


〜了〜
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