いつだって君のそばに(土銀)【完結】
「普通に暮らしてりゃ、足を踏み入れる事の無かった世界に引きずり込んじまったんだぜ? 未だ二十歳にも満たないガキが命のやり取りをするなんて、あっちゃなんねーだろ」
「……そんなもんか?」
コイツの言葉は予想出来ていたから、こちらも答えるのは簡単だ。
「じゃあ聞くが、お前が攘夷戦争に参戦していた時はいくつだった?」
「それは……!」
ハッと俺を見た瞳に、未だ鈍いが光が宿る。当時の事を思い出しているのか、その表情は苦悶していた。
「そん時のお前は、どんな理由で参戦していた? 身近な大人に引きずり込まれてってわけじゃねーよな。あいつらも同じだろ。それに……」
「それに?」
苦しげな表情のまま、万事屋は俺に言葉の続きを促す。俺は一つ深呼吸すると、秘めていた胸の内を明かした。
「もしそれを悩まなきゃなんねーのなら、俺も同じだ。総悟を引きずり込んだって事になっちまう」
総悟自身が選んだ道だとは思いながらも、割り切れない自分は確かに存在している。だがそれを口にすれば、俺自身が揺らいでしまうからと隠し通してきたのだ。
「お前の気持ちも分からなくはねェ。だがガキはガキなりに自分で身の振り方を考えてんだ。だったら大人の俺たちはそれを受け入れて、守ってやりゃァ良いだろ?」
「あいつらを守る……」
「別にガキより俺たちの方が、特別優れてるわけでも強いわけでもねーけどよ。それでも少しだけ長く生きてる分、見てきた物や経験は多い。って事はそれなりに器も広いんじゃねーのか? 少なくとも俺はそのつもりでいる」
そう言って、俺は万事屋の目をじっと見つめた。
「ついでに言うと、お前を受け入れられるだけの余裕もあるからな。一人で抱え込むくらいなら、俺に吐き出せ」
「……土方……」
俺の言葉に、万事屋の顔がくしゃりとゆがむ。
あぁ、こんなにもコイツは追い詰められていたのかと思うと、俺の心も痛んだ。
「よろず……いや、銀時」
少しだけ迷いはしたが、俺はコイツの名前を呼んだ。
一瞬驚いたように目を見開いた万事屋だったが、すぐにフッと照れたような笑みを見せる。
「何だよ」
「いつだって俺はお前の側にいる。俺が好きで勝手にお前の隣にいる事を選ぶんだ。お前は気にせず俺に寄り掛かれば良い。あのガキ共が重く感じるほど疲れたら、俺が支えてやるから。俺だけじゃ無理なら真選組がいる。なんてったって市民を守る町の警察だからな。お前たち市民の一人や二人、簡単に守れるさ」
そう一息に言った俺は、壁に着いていた手をゆっくりと万事屋の後頭部に回した。
「だからもう、心配いらねーよ」
そのまま顔を近付け、キスをする。何の抵抗もなく重なった万事屋の唇は、少しだけ震えていた。
「約束の印、な。まぁここは外っつー事でこれは認印レベルだが、場所を変えれば実印レベルのもんをシてやるぜ」
「ばァか。おかしな例えをしてんじゃねェよ。ガラじゃねーだろ」
「……だな」
二人してクスリと笑う。その顔は先ほどまでとは違い、明るいものだった。
「あー……その、ありがとよ、土方」
うっすらと頬を染め、照れくさそうに言う万事屋に俺は答える。
「そんな顔見せられたら、直ぐにでも実印を押したくなっちまうだろうが。……確か近くに良い宿があったな。行くぞ」
「ちょっ、マジで!? 土方君ってこんなにがっつくキャラだったっけ?」
「お前限定に決まってんだろ」
~了~
「……そんなもんか?」
コイツの言葉は予想出来ていたから、こちらも答えるのは簡単だ。
「じゃあ聞くが、お前が攘夷戦争に参戦していた時はいくつだった?」
「それは……!」
ハッと俺を見た瞳に、未だ鈍いが光が宿る。当時の事を思い出しているのか、その表情は苦悶していた。
「そん時のお前は、どんな理由で参戦していた? 身近な大人に引きずり込まれてってわけじゃねーよな。あいつらも同じだろ。それに……」
「それに?」
苦しげな表情のまま、万事屋は俺に言葉の続きを促す。俺は一つ深呼吸すると、秘めていた胸の内を明かした。
「もしそれを悩まなきゃなんねーのなら、俺も同じだ。総悟を引きずり込んだって事になっちまう」
総悟自身が選んだ道だとは思いながらも、割り切れない自分は確かに存在している。だがそれを口にすれば、俺自身が揺らいでしまうからと隠し通してきたのだ。
「お前の気持ちも分からなくはねェ。だがガキはガキなりに自分で身の振り方を考えてんだ。だったら大人の俺たちはそれを受け入れて、守ってやりゃァ良いだろ?」
「あいつらを守る……」
「別にガキより俺たちの方が、特別優れてるわけでも強いわけでもねーけどよ。それでも少しだけ長く生きてる分、見てきた物や経験は多い。って事はそれなりに器も広いんじゃねーのか? 少なくとも俺はそのつもりでいる」
そう言って、俺は万事屋の目をじっと見つめた。
「ついでに言うと、お前を受け入れられるだけの余裕もあるからな。一人で抱え込むくらいなら、俺に吐き出せ」
「……土方……」
俺の言葉に、万事屋の顔がくしゃりとゆがむ。
あぁ、こんなにもコイツは追い詰められていたのかと思うと、俺の心も痛んだ。
「よろず……いや、銀時」
少しだけ迷いはしたが、俺はコイツの名前を呼んだ。
一瞬驚いたように目を見開いた万事屋だったが、すぐにフッと照れたような笑みを見せる。
「何だよ」
「いつだって俺はお前の側にいる。俺が好きで勝手にお前の隣にいる事を選ぶんだ。お前は気にせず俺に寄り掛かれば良い。あのガキ共が重く感じるほど疲れたら、俺が支えてやるから。俺だけじゃ無理なら真選組がいる。なんてったって市民を守る町の警察だからな。お前たち市民の一人や二人、簡単に守れるさ」
そう一息に言った俺は、壁に着いていた手をゆっくりと万事屋の後頭部に回した。
「だからもう、心配いらねーよ」
そのまま顔を近付け、キスをする。何の抵抗もなく重なった万事屋の唇は、少しだけ震えていた。
「約束の印、な。まぁここは外っつー事でこれは認印レベルだが、場所を変えれば実印レベルのもんをシてやるぜ」
「ばァか。おかしな例えをしてんじゃねェよ。ガラじゃねーだろ」
「……だな」
二人してクスリと笑う。その顔は先ほどまでとは違い、明るいものだった。
「あー……その、ありがとよ、土方」
うっすらと頬を染め、照れくさそうに言う万事屋に俺は答える。
「そんな顔見せられたら、直ぐにでも実印を押したくなっちまうだろうが。……確か近くに良い宿があったな。行くぞ」
「ちょっ、マジで!? 土方君ってこんなにがっつくキャラだったっけ?」
「お前限定に決まってんだろ」
~了~
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