万事屋騒動記(オールキャラ)【完結】
「げにまっことすまんかったの。とりあえずいちご牛乳の効果ははっきりしたし、あとはおまんらぁが飲めば万事解決じゃ」
にこにこと笑いながら、小太郎と晋助にコップを差し出す辰馬。だがそれは、例えこの二人であっても恐怖の対象でしか無かった。
「断る。何故俺たちがそんな怪しい物を飲まねばならんのだ」
「俺も御免だね。わざわざ好き好んで、お前みたいなおっさんになりたかねェよ」
辰馬を見て心底嫌そうに言う二人に、思わずカチンと来てしまう。
「誰がおっさんじゃぁ。おまんらぁも元はわしらと同じ『お兄さん』世代じゃろうて。まぁ飲めば分かるき、まずは飲んでみとーせ」
ズイッと二人の目の前にコップを突き出し、飲めと煽る辰馬。しかし二人は既に逃げ出す体勢を取っている。それを見た辰馬は言った。
「銀時、高杉は頼むぜよ。わしは桂じゃ」
「ああ。……ったく、面倒ごとばっか起こしてくれやがって」
のろのろとコップの一つを受け取った銀時は、辰馬と目を合わせてコクリと頷く。そして次の瞬間――。
「むぐ……!」
背後から子供たちを羽交い絞めにした二人が、強引にいちご牛乳を口の中へと流し込む。
咄嗟の事に思わず飲み込んでしまった小太郎と晋助は、辰馬同様一時の苦しみを味わいながらも、ようやく元の体に戻れたのだった。
「全く、迷惑極まりない」
ズンボラジャージを正式な形で着こなした桂が言う。
「こんな茶番に付き合わされる身になれってんだ」
不愉快さを全面に表した高杉は、床に着きそうなズンボラジャージの裾を持ち上げながら言った。
パツパツでサイズが合わず、胸元がはだけていた坂本はというと、ほぼ布を巻き付けただけのような無残な状態で三人の足元に伸びている。
体が元に戻ったことで、記憶も戻った高杉と桂からの制裁は、容赦なかったようだ。
事の流れから、全員にズンボラジャージを提供せねばならなかった銀時からもゲンコツを受け、「請求書に上乗せすっからな!」と怒鳴りつけられれば、もう立ち直る事も出来ないかった。
「とりあえずこれで一件落着ですね。それにしても、桂さん達がこんな薬を飲んでしまっていたのは驚きだなぁ。しっかりしてる二人だから、普通に警戒しそうなのに」
坂本が持っていた薬の空瓶を見ながら、新八が言う。あからさまに怪しいデザインは、新八はおろか神楽でさえも食指が動かない代物だ。
「いや、それが飲んだ記憶は無いのだ」
「はい?……ああ、未だ記憶が戻り切っていないってことですかね」
「そうではない。本当に飲んだ覚えが無いのだよ。高杉と合流した時、俺はこの薬を持ってはいなかった。エリザベスに出された茶は飲んだが、薬など口にしてはいないはずだ。違うか? 高杉」
「俺も飲んだ覚えはねェよ。大体そんな怪しげなもん、信じる方がどうかしてらァ」
話を振られた高杉が、忌々しげに答える。だがどうやら今はそんな事より、ズンボラジャージの着心地の悪さに気を取られてしまっているようだ。
――高杉ならぬ低杉の奴、未だに身長の事をずっと気にしてんだなァ。俺のジャージが長くて気に入らねェんだろうが、今ここで突っ込んだら問題が大きくなっちまうだろうし、言うのやめとこ。
一人静かに椅子に座り、皆の動向を見守りながら、銀時は心の中でそう呟いた。
「それじゃどうして二人は小さくなったネ。誰かに一服盛られたアルか?」
「盛るも何も、薬はエリザベスに預けて……ハッ! そうだ、エリザベスはどこだ!?」
突如相棒の存在を思い出した桂が叫ぶ。
「記憶が無くなっていたとはいえ、酷い事をしてしまった。許してくれエリザベス! 戻ってきてくれエリザベス~っ!」
窓から体を乗り出して何度も名を呼ぶ桂に、高杉もうんざり顔だ。
「どこかでおっ死んでんじゃねェのか? 派手に蹴り飛ばしたしな」
「馬鹿な事を言うな! エリザベスは俺の……俺のっ!」
瞳を潤ませながら高杉に掴みかかり、今の言葉を否定する桂。
新八と神楽はと言えば、もうどうでもよくなってしまったのか、全てを放棄するかのように各々の日常を取り戻そうと動き始める。
「んっとに迷惑な話だぜ」
ただ見ていた銀時もハァっと大きなため息を突きながら、いちご牛乳の補充でもするかと重い腰を上げた時。
都合よく万事屋の大家であるお登勢がやってきた。
「銀時いるかい? ちょっと出てきな」
「何だよばーさん、藪から棒に」
めんどくせェな、とグダグダになりながら玄関に向かった銀時に、お登勢は何故かプラカードを投げ渡してきた。
「え? は? 何よこれ。何でばーさんがこんなもん?」
「あたしだってこんなお荷物、運びたくなかったさ。だがさっきエリザベスとすれ違った時、どうしても渡してほしいと言われてね」
「エリザベスに会ったのか?」
「ああ、すぐそこの道でね」
にこにこと笑いながら、小太郎と晋助にコップを差し出す辰馬。だがそれは、例えこの二人であっても恐怖の対象でしか無かった。
「断る。何故俺たちがそんな怪しい物を飲まねばならんのだ」
「俺も御免だね。わざわざ好き好んで、お前みたいなおっさんになりたかねェよ」
辰馬を見て心底嫌そうに言う二人に、思わずカチンと来てしまう。
「誰がおっさんじゃぁ。おまんらぁも元はわしらと同じ『お兄さん』世代じゃろうて。まぁ飲めば分かるき、まずは飲んでみとーせ」
ズイッと二人の目の前にコップを突き出し、飲めと煽る辰馬。しかし二人は既に逃げ出す体勢を取っている。それを見た辰馬は言った。
「銀時、高杉は頼むぜよ。わしは桂じゃ」
「ああ。……ったく、面倒ごとばっか起こしてくれやがって」
のろのろとコップの一つを受け取った銀時は、辰馬と目を合わせてコクリと頷く。そして次の瞬間――。
「むぐ……!」
背後から子供たちを羽交い絞めにした二人が、強引にいちご牛乳を口の中へと流し込む。
咄嗟の事に思わず飲み込んでしまった小太郎と晋助は、辰馬同様一時の苦しみを味わいながらも、ようやく元の体に戻れたのだった。
「全く、迷惑極まりない」
ズンボラジャージを正式な形で着こなした桂が言う。
「こんな茶番に付き合わされる身になれってんだ」
不愉快さを全面に表した高杉は、床に着きそうなズンボラジャージの裾を持ち上げながら言った。
パツパツでサイズが合わず、胸元がはだけていた坂本はというと、ほぼ布を巻き付けただけのような無残な状態で三人の足元に伸びている。
体が元に戻ったことで、記憶も戻った高杉と桂からの制裁は、容赦なかったようだ。
事の流れから、全員にズンボラジャージを提供せねばならなかった銀時からもゲンコツを受け、「請求書に上乗せすっからな!」と怒鳴りつけられれば、もう立ち直る事も出来ないかった。
「とりあえずこれで一件落着ですね。それにしても、桂さん達がこんな薬を飲んでしまっていたのは驚きだなぁ。しっかりしてる二人だから、普通に警戒しそうなのに」
坂本が持っていた薬の空瓶を見ながら、新八が言う。あからさまに怪しいデザインは、新八はおろか神楽でさえも食指が動かない代物だ。
「いや、それが飲んだ記憶は無いのだ」
「はい?……ああ、未だ記憶が戻り切っていないってことですかね」
「そうではない。本当に飲んだ覚えが無いのだよ。高杉と合流した時、俺はこの薬を持ってはいなかった。エリザベスに出された茶は飲んだが、薬など口にしてはいないはずだ。違うか? 高杉」
「俺も飲んだ覚えはねェよ。大体そんな怪しげなもん、信じる方がどうかしてらァ」
話を振られた高杉が、忌々しげに答える。だがどうやら今はそんな事より、ズンボラジャージの着心地の悪さに気を取られてしまっているようだ。
――高杉ならぬ低杉の奴、未だに身長の事をずっと気にしてんだなァ。俺のジャージが長くて気に入らねェんだろうが、今ここで突っ込んだら問題が大きくなっちまうだろうし、言うのやめとこ。
一人静かに椅子に座り、皆の動向を見守りながら、銀時は心の中でそう呟いた。
「それじゃどうして二人は小さくなったネ。誰かに一服盛られたアルか?」
「盛るも何も、薬はエリザベスに預けて……ハッ! そうだ、エリザベスはどこだ!?」
突如相棒の存在を思い出した桂が叫ぶ。
「記憶が無くなっていたとはいえ、酷い事をしてしまった。許してくれエリザベス! 戻ってきてくれエリザベス~っ!」
窓から体を乗り出して何度も名を呼ぶ桂に、高杉もうんざり顔だ。
「どこかでおっ死んでんじゃねェのか? 派手に蹴り飛ばしたしな」
「馬鹿な事を言うな! エリザベスは俺の……俺のっ!」
瞳を潤ませながら高杉に掴みかかり、今の言葉を否定する桂。
新八と神楽はと言えば、もうどうでもよくなってしまったのか、全てを放棄するかのように各々の日常を取り戻そうと動き始める。
「んっとに迷惑な話だぜ」
ただ見ていた銀時もハァっと大きなため息を突きながら、いちご牛乳の補充でもするかと重い腰を上げた時。
都合よく万事屋の大家であるお登勢がやってきた。
「銀時いるかい? ちょっと出てきな」
「何だよばーさん、藪から棒に」
めんどくせェな、とグダグダになりながら玄関に向かった銀時に、お登勢は何故かプラカードを投げ渡してきた。
「え? は? 何よこれ。何でばーさんがこんなもん?」
「あたしだってこんなお荷物、運びたくなかったさ。だがさっきエリザベスとすれ違った時、どうしても渡してほしいと言われてね」
「エリザベスに会ったのか?」
「ああ、すぐそこの道でね」