万事屋騒動記(オールキャラ)【完結】
「これ、本当に飲んでも大丈夫なのか? 毒でも入ってんじゃねェだろうな」
「うむ……あのダークマターとやらを見る限り、警戒はしておくべきか」
ひそひそと話す子供たちに、気持ちは分かる反面、飲んでもらわなければと焦る新八。
「何も心配いらないよ。普通にその辺で売られてるやつだから……って言ってみたところでなぁ。どうしたら信じてもらえるか……」
良い案が思いつかず、頭を抱えた時だった。
「おまんらぁ、何を警戒しとるんかのぅ。心配ならまずわしが飲んじゃるき、見とれよ」
元の姿に戻れるという喜びからか、満面の笑みでコップを持ち上げ、勢いよくいちご牛乳を煽ったのは辰馬。小太郎が止める間もなくあっという間に飲み干した辰馬は、達成感に溢れていた。ところが――。
「う~ん、美味い! これでわしらも……!う、ぐ……うッ!」
「辰馬?」
突如胸を押さえて苦しみ始めた辰馬に驚き、小太郎と晋助の目が見開かれる。
尋常ではない苦しみ方に、さすがの銀時も慌てて辰馬に駆け寄った。
「おい、どうした? しっかりしろ!」
「ぎ、銀時……体が……体が引き裂かれそうぜよ……ッ!」
銀時の腕の中に倒れ込みながら、苦しみを訴える辰馬。抱き留めた銀時はその体の熱さに絶句した。吹き出す冷や汗が瞬時に気化するほどに体温の上がった辰馬が、震えながら銀時に縋り付く。
「何だよこれ……おい新八! お前マジでいちご牛乳に何か混ぜたのか?」
「んな事するはずないでしょうが! いつも銀さんが飲んでるやつですよ!」
身に覚えのない新八は慌てて答えるが、辰馬の苦しみは増すばかり。
「これはバツかのぅ。わしはもう、ダメかも……しれん……迷惑かけてすまんかった、銀時……」
「おい、気をしっかり持て、辰馬!」
「わしを……許してくれ……るか……?」
「迷惑なんて、昔からかけまくってんだろうが! んな事今更気にしちゃいねェってんだよ!」
「そ、か……高杉と桂も……すま……ん……」
最後まで言えぬまま、辰馬の全身から力が抜ける。
そして誰もが言葉を失い、ただ辰馬を見つめる事しかできない中、事は動いた。
「な……」
最初にその変化に気付いたのは、銀時だった。腕の中の辰馬の体が、とんでもない勢いで大きくなっていく。
「ちょ、え?」
慌てる銀時を他所に、支えきれなくなった辰馬の体がドサリと床に落ちる。そのまま体は大きくなり続け、やがて元の大きさになった所で止まった。
「辰馬……?」
異様な光景に頭が付いて行かず、皆が戸惑いを隠せぬまま床に伸びている辰馬を覗き込んでいると――。
「……っくぅ~」
ため息のような唸り声と共に、のろのろと起き上がったのは辰馬。
床に落ちた時にぶつけたのか、うっすらと赤くなっている額を撫でながらきょろきょろと周りを見回した。そして皆の視線を一斉に受けていた事に気付き、ポンっと手を叩く。
「いやぁ、心配かけてしまったようじゃのぅ。皆すまんかったき。お陰でもうすっかり元通りぜよ」
スッキリとした顔で「あはははは~」と笑う辰馬。その姿にどっと力が抜けてしまった銀時たちだったが、やがてふつふつと怒りが沸き上がってきた。
「あはははは~、じゃねェよ。このバカ! ちったァ反省しやがれ!」
「イテッ! 何するがじゃ銀時~」
代表して辰馬を殴り飛ばした銀時に、涙目で抗議する。だが目の前にいる鬼の銀時の向こう側で、化け物を見るような眼差しを送ってくる子供たちに気付き、困ったようにため息を吐いた。
「ちっくと子供には刺激が強かったかのぅ」
ポリポリと頭を掻きながら言う辰馬だったが、それを見てハッと自分の役割を思い出したらしい新八が突っ込みを入れる。
「大人でも刺激が強いわッ! あんた今、自分の姿分かってます? 一気に大人に戻ったんですよ?」
「自分の体じゃき、そんくらい分かっとる。いやぁ、やっぱり本来の姿が一番楽で良いぜよ。子供の体も昔を思い出して悪くは無いんじゃが、なんぞ締め付けられてるような気がしとったからのぅ」
「……そりゃぁ今は楽でしょうよ。服が破れて何も着てない状態なんですから」
「レディもいるってのに、きったねェ租〇ンさらしてヘラヘラしてんじゃないネ、この変態」
「へ?」
神楽に軽蔑の眼差しを向けられ、間の抜けた表情で下を見た辰馬の目に映ったのは、開放感あふれるもう一人の自分だった。
「おお、おまんもしっかり元に戻っとったか。まっことめでたい」
「めでたかねェよッ! さっさと何か着ろっての。んでもって話を終わらせてくれ」
あまりにも馬鹿らしい展開が、銀時を脱力させる。
「着替えなんぞ持っとらんし、貸してくれんかの」という辰馬に、仕方なく銀時の古くなったズンボラジャージを渡してやると、ようやくまともに話ができる空間となった。
「うむ……あのダークマターとやらを見る限り、警戒はしておくべきか」
ひそひそと話す子供たちに、気持ちは分かる反面、飲んでもらわなければと焦る新八。
「何も心配いらないよ。普通にその辺で売られてるやつだから……って言ってみたところでなぁ。どうしたら信じてもらえるか……」
良い案が思いつかず、頭を抱えた時だった。
「おまんらぁ、何を警戒しとるんかのぅ。心配ならまずわしが飲んじゃるき、見とれよ」
元の姿に戻れるという喜びからか、満面の笑みでコップを持ち上げ、勢いよくいちご牛乳を煽ったのは辰馬。小太郎が止める間もなくあっという間に飲み干した辰馬は、達成感に溢れていた。ところが――。
「う~ん、美味い! これでわしらも……!う、ぐ……うッ!」
「辰馬?」
突如胸を押さえて苦しみ始めた辰馬に驚き、小太郎と晋助の目が見開かれる。
尋常ではない苦しみ方に、さすがの銀時も慌てて辰馬に駆け寄った。
「おい、どうした? しっかりしろ!」
「ぎ、銀時……体が……体が引き裂かれそうぜよ……ッ!」
銀時の腕の中に倒れ込みながら、苦しみを訴える辰馬。抱き留めた銀時はその体の熱さに絶句した。吹き出す冷や汗が瞬時に気化するほどに体温の上がった辰馬が、震えながら銀時に縋り付く。
「何だよこれ……おい新八! お前マジでいちご牛乳に何か混ぜたのか?」
「んな事するはずないでしょうが! いつも銀さんが飲んでるやつですよ!」
身に覚えのない新八は慌てて答えるが、辰馬の苦しみは増すばかり。
「これはバツかのぅ。わしはもう、ダメかも……しれん……迷惑かけてすまんかった、銀時……」
「おい、気をしっかり持て、辰馬!」
「わしを……許してくれ……るか……?」
「迷惑なんて、昔からかけまくってんだろうが! んな事今更気にしちゃいねェってんだよ!」
「そ、か……高杉と桂も……すま……ん……」
最後まで言えぬまま、辰馬の全身から力が抜ける。
そして誰もが言葉を失い、ただ辰馬を見つめる事しかできない中、事は動いた。
「な……」
最初にその変化に気付いたのは、銀時だった。腕の中の辰馬の体が、とんでもない勢いで大きくなっていく。
「ちょ、え?」
慌てる銀時を他所に、支えきれなくなった辰馬の体がドサリと床に落ちる。そのまま体は大きくなり続け、やがて元の大きさになった所で止まった。
「辰馬……?」
異様な光景に頭が付いて行かず、皆が戸惑いを隠せぬまま床に伸びている辰馬を覗き込んでいると――。
「……っくぅ~」
ため息のような唸り声と共に、のろのろと起き上がったのは辰馬。
床に落ちた時にぶつけたのか、うっすらと赤くなっている額を撫でながらきょろきょろと周りを見回した。そして皆の視線を一斉に受けていた事に気付き、ポンっと手を叩く。
「いやぁ、心配かけてしまったようじゃのぅ。皆すまんかったき。お陰でもうすっかり元通りぜよ」
スッキリとした顔で「あはははは~」と笑う辰馬。その姿にどっと力が抜けてしまった銀時たちだったが、やがてふつふつと怒りが沸き上がってきた。
「あはははは~、じゃねェよ。このバカ! ちったァ反省しやがれ!」
「イテッ! 何するがじゃ銀時~」
代表して辰馬を殴り飛ばした銀時に、涙目で抗議する。だが目の前にいる鬼の銀時の向こう側で、化け物を見るような眼差しを送ってくる子供たちに気付き、困ったようにため息を吐いた。
「ちっくと子供には刺激が強かったかのぅ」
ポリポリと頭を掻きながら言う辰馬だったが、それを見てハッと自分の役割を思い出したらしい新八が突っ込みを入れる。
「大人でも刺激が強いわッ! あんた今、自分の姿分かってます? 一気に大人に戻ったんですよ?」
「自分の体じゃき、そんくらい分かっとる。いやぁ、やっぱり本来の姿が一番楽で良いぜよ。子供の体も昔を思い出して悪くは無いんじゃが、なんぞ締め付けられてるような気がしとったからのぅ」
「……そりゃぁ今は楽でしょうよ。服が破れて何も着てない状態なんですから」
「レディもいるってのに、きったねェ租〇ンさらしてヘラヘラしてんじゃないネ、この変態」
「へ?」
神楽に軽蔑の眼差しを向けられ、間の抜けた表情で下を見た辰馬の目に映ったのは、開放感あふれるもう一人の自分だった。
「おお、おまんもしっかり元に戻っとったか。まっことめでたい」
「めでたかねェよッ! さっさと何か着ろっての。んでもって話を終わらせてくれ」
あまりにも馬鹿らしい展開が、銀時を脱力させる。
「着替えなんぞ持っとらんし、貸してくれんかの」という辰馬に、仕方なく銀時の古くなったズンボラジャージを渡してやると、ようやくまともに話ができる空間となった。