万事屋騒動記(オールキャラ)【完結】
銀時に視線を投げ返す小太郎は、子供とは思えないほどにどっしりと構えている。だがその拳が小さく震えていることに、銀時は気付いていた。
それは一番銀時に近い位置に座っている晋助も同じらしく、さりげなく二人を庇うように前のめりに座り、銀時の視界の邪魔をする。
――そういやこいつらって、いつもこんな感じだったよなァ……。
未だ松陽が健在だった頃。
常にライバル心を燃やし、毎日傷だらけになりながらもぶつかり合っていたのに。いざ誰かがピンチになると不思議な連帯感が生まれ、一緒に敵に立ち向かっていた。
例えどんなに怖さを感じていても、決して見捨てる事などせずに庇いあう。素直にはなれないが、お互いが唯一無二の存在だったという事は間違いない。
――あの頃は未だ辰馬がいなくて、俺があそこにいたんだよな。
そう思うと、胸にチクリと痛みが走った。
「チッ……らしくねェな」
まさか悪友たちの過去の姿を見て、感傷に浸る日が来ようとは。ポリポリとバツが悪そうに頭を掻いた銀時は、気持ちを切り替えるべく言った。
「新八ィ。何か甘いもん出してくれ。銀さん頭が疲れちまったわ」
「はぁ? あんた別に何もしてないでしょうが。……でもまぁ一度気持ちを落ち着けましょうか。君たちも小腹が空いてたんだよね」
ニコリと子供たちに微笑みかけ、「何か出せるようなものってあったかなぁ」と言いながら、新八が台所へと向かう。そして冷蔵庫や棚の中をゴソゴソあさっている時だった。
「いちご牛乳」
「うわぁっ!」
突然後ろから聞こえた声に、思わず悲鳴を上げる新八。驚いて振り向くと、そこにいたのは先ほどまで小太郎と晋助の陰に隠れていた辰馬だった。
「た、辰馬君、いつの間についてきてたんだい?」
「いきなり驚かしてすまんき。まっことすまんが、いちご牛乳を出してくれんかの?」
何故かひそひそ声で頼んでくる辰馬は、そわそわとしていて落ち着きがない。その様子を訝しんだ新八は言った。
「それは構わないけど……いちご牛乳なんて、あまり普段飲みそうにないものをチョイスする理由を聞かせてくれないかな?」
「それは、中和作用が……あ、いや、その、甘いし美味いしっちゅーわけで……」
更に落ち着きが無くなっていく辰馬は、明らかに怪しい。
こうなると、新八の本体である眼鏡もキラリと輝くわけで。
「辰馬君……いえ、坂本さん。貴方何か知ってますね? むしろ貴方が今回の事件の現況なんじゃないですか?」
「い、いや、わしは何もしとらんき」
「さーかもーとさーん……」
眼鏡が鋭く光り、今にもビームを放ちそうな殺気をまとう。その姿に、辰馬は言い知れぬ恐怖を覚えたようだ。
「お、落ち着こうね? 新八君。……何でわしの頭ん中が、大人のままじゃと分かったんかのぅ」
「それだけ挙動不審になっていれば、誰だって分かります! それよりちゃんと説明してくださいよ。でないと……」
「わ~かった、分かったき、ちっくと落ち着きや」
新八の勢いに押されて観念したのか、辰馬はこれまでの経緯を語り始めた。
「つい先日の事なんじゃが、宇宙で商いの最中に『素直になる薬』っちゅーモンの試供品を貰うたんじゃ。貰うたからにゃ試さんといかん思うて、どこで使うかと考えとった時に思い出したんが、高杉ぜよ。これを使えば、いがみおうとるわしらでも腹ァ割って話せるかもしれんじゃろ。そんでまずは一番掴まりにくい高杉を桂んトコに来るよう手配して、わしがこっちに戻り次第、この万事屋に集まろうっちゅー手はずにしとったはずなんじゃ。それなのに、戻ってきたら何故かこんな事になっとってのぅ。まさかと思うて先に桂に渡しておいた薬の残りを飲んでみたら、わしもこんな姿になっとった」
あははははー、と笑う辰馬に、話を聞かされた新八が頭を抱える。こうなってしまった原因は分かったものの、あまりにも無責任な辰馬の態度に、新八の頭は沸騰寸前だった。
それは一番銀時に近い位置に座っている晋助も同じらしく、さりげなく二人を庇うように前のめりに座り、銀時の視界の邪魔をする。
――そういやこいつらって、いつもこんな感じだったよなァ……。
未だ松陽が健在だった頃。
常にライバル心を燃やし、毎日傷だらけになりながらもぶつかり合っていたのに。いざ誰かがピンチになると不思議な連帯感が生まれ、一緒に敵に立ち向かっていた。
例えどんなに怖さを感じていても、決して見捨てる事などせずに庇いあう。素直にはなれないが、お互いが唯一無二の存在だったという事は間違いない。
――あの頃は未だ辰馬がいなくて、俺があそこにいたんだよな。
そう思うと、胸にチクリと痛みが走った。
「チッ……らしくねェな」
まさか悪友たちの過去の姿を見て、感傷に浸る日が来ようとは。ポリポリとバツが悪そうに頭を掻いた銀時は、気持ちを切り替えるべく言った。
「新八ィ。何か甘いもん出してくれ。銀さん頭が疲れちまったわ」
「はぁ? あんた別に何もしてないでしょうが。……でもまぁ一度気持ちを落ち着けましょうか。君たちも小腹が空いてたんだよね」
ニコリと子供たちに微笑みかけ、「何か出せるようなものってあったかなぁ」と言いながら、新八が台所へと向かう。そして冷蔵庫や棚の中をゴソゴソあさっている時だった。
「いちご牛乳」
「うわぁっ!」
突然後ろから聞こえた声に、思わず悲鳴を上げる新八。驚いて振り向くと、そこにいたのは先ほどまで小太郎と晋助の陰に隠れていた辰馬だった。
「た、辰馬君、いつの間についてきてたんだい?」
「いきなり驚かしてすまんき。まっことすまんが、いちご牛乳を出してくれんかの?」
何故かひそひそ声で頼んでくる辰馬は、そわそわとしていて落ち着きがない。その様子を訝しんだ新八は言った。
「それは構わないけど……いちご牛乳なんて、あまり普段飲みそうにないものをチョイスする理由を聞かせてくれないかな?」
「それは、中和作用が……あ、いや、その、甘いし美味いしっちゅーわけで……」
更に落ち着きが無くなっていく辰馬は、明らかに怪しい。
こうなると、新八の本体である眼鏡もキラリと輝くわけで。
「辰馬君……いえ、坂本さん。貴方何か知ってますね? むしろ貴方が今回の事件の現況なんじゃないですか?」
「い、いや、わしは何もしとらんき」
「さーかもーとさーん……」
眼鏡が鋭く光り、今にもビームを放ちそうな殺気をまとう。その姿に、辰馬は言い知れぬ恐怖を覚えたようだ。
「お、落ち着こうね? 新八君。……何でわしの頭ん中が、大人のままじゃと分かったんかのぅ」
「それだけ挙動不審になっていれば、誰だって分かります! それよりちゃんと説明してくださいよ。でないと……」
「わ~かった、分かったき、ちっくと落ち着きや」
新八の勢いに押されて観念したのか、辰馬はこれまでの経緯を語り始めた。
「つい先日の事なんじゃが、宇宙で商いの最中に『素直になる薬』っちゅーモンの試供品を貰うたんじゃ。貰うたからにゃ試さんといかん思うて、どこで使うかと考えとった時に思い出したんが、高杉ぜよ。これを使えば、いがみおうとるわしらでも腹ァ割って話せるかもしれんじゃろ。そんでまずは一番掴まりにくい高杉を桂んトコに来るよう手配して、わしがこっちに戻り次第、この万事屋に集まろうっちゅー手はずにしとったはずなんじゃ。それなのに、戻ってきたら何故かこんな事になっとってのぅ。まさかと思うて先に桂に渡しておいた薬の残りを飲んでみたら、わしもこんな姿になっとった」
あははははー、と笑う辰馬に、話を聞かされた新八が頭を抱える。こうなってしまった原因は分かったものの、あまりにも無責任な辰馬の態度に、新八の頭は沸騰寸前だった。