万事屋騒動記(オールキャラ)【完結】

 わなわなと震えるエリザベス。わけは分からないが、エリザベスをここまで追い込む存在が近付いている事だけは理解できた万事屋三人は、いつでも対応できるように臨戦態勢を取った。
 その数秒後……!

「エリザベスめ~っけ~!」

 ドゴォッ! という大きな音と共に、エリザベスが無抵抗のまま窓から吹っ飛んでいく。
 まさかの事態に呆気にとられる三人だったが、この後更なる驚きが待っていた。

「おい、さすがにあれはやりすぎじゃないか? 殴り飛ばさずとも捕まえるだけで良かったはずだぞ」
「別に良いだろ? 面白けりゃァよ」
「あはは~。そうそう、面白いのが一番ぜよ〜」

 勢いよく飛び込んで来た、三人の子供たち。
 年の頃でいえば、十歳前後だろうか。やんちゃ盛りで元気が有り余っているのが見て取れる。そもそも三人がかりとは言え、エリザベスを吹っ飛ばせるほどの力を持っているというのが恐ろしい。
 だが、そんな事よりもっと気になることが、万事屋メンバーにはあった。

「銀さん……気のせいですかね? 何か僕たちの目の前に、見知った人がそのまま小っちゃくなったような子供たちがいるんですけど……僕の眼鏡、壊れちゃったんでしょうか」
「ん〜、幻覚でも映るようになっちまったか? 銀さんにはな~んにも見えてないからね。っつーか何も見なかった事にして、一回出かけてくっからね。帰って来た頃には、これはぜ~んぶ悪い夢だったってオチになってるはずだからね、きっと」

 顔を引きつらせながら子供たちの顔を一人ずつ確認すれば、嫌な予感は増していく。特に銀時の顔色は、見て分かるほどに血の気が引いて真っ青になっていた。
 そこに神楽がダメ押しをする。

「おいガキども! 人ん家に来たらまず自己紹介するアルよ。お前達誰ネ? エリーの友達アルか?」
「あ、申し遅れました。僕は桂小太郎です。こちらの二人は友達の高杉晋助と坂本辰馬で……」
「やっぱりかぁっ!」

 自己紹介を最後まで聞くことなく、銀時が絶叫する。
 子供たちを見た瞬間から分かってしまっていたが、認めたくなくて逃げ出そうとしていたのに間に合わず、現実を突きつけられた銀時はさすがに混乱していた。

「ななな何これ? 何でこいつらがこんなにちっこくなってるわけ? っつーか何でこんな三人が一緒になって遊んでんのよ。特に高杉、お前が合流してること自体がおかしくね? ……あーそっか。同姓同名の別人か。それとも俺が知らないだけで、アイツらはいつの間にかガキをこさえてたってか? そうだな、きっとそうだ。そうであってくれ、うん、そうそう……」

 顔の作りが見えない程の速さでガクガクと首を振る銀時の頭からは、今にも煙が出てきそうだ。

「銀さん、落ち着いてください! あぁもう、壊れちゃったよ」
「壊れてるのはいつもの事ネ。それよりもコイツらどうするアルか? ボスケテって言ってたエリーは吹っ飛んでったし、このままここに置いとくわけにもいかないネ」

 意外と冷静な神楽が、目の前にいた小太郎の頭に手を置きながら言った。

「うわぁ、小っちゃいネ。オイお前、本当にヅラだったら、あのセリフを言うあるか?」
「ヅラじゃない、桂だ!」
「おお~! 間違いないネ。銀ちゃん、やっぱコイツほんもののヅラアルよ」

 嬉しそうに言う神楽とは対照的に、銀時は魂が抜け、完全に抜け殻となっている。

「戻ってきて下さいよ、銀さん! ああもう、一体何がどうなってるのか……」

 新八は頭を掻きむしりながら、この状況を整理しようと必死に頭を回転させた。

「銀さんは使い物にならないし、子供たちは放っておけないし、肝心のエリザベスさんは――ってそうだよ! エリザベスさんっ!」

 ハッと気づいた新八が窓から外を見下ろすと、血を流しながらも立ち上がり、こちらを見ているエリザベスの姿があった。
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