believe(土銀)【完結】

 別に本気で信じているわけじゃねぇが、今この瞬間だけは、神だの何だのはいるのかもしれない、なんて思っちまう。
 腕の中にいる愛しい人の幸せそうに眠る顔が、まるで天使のようだから。
 きっと本人に言ったら、ぶん殴られちまうんだろうけどな。それでも心の底から思っちまうんだよ。

――綺麗だ

と。

 例え血の紅にまみれたとしても、その美しさは変わらないだろう。清らかさが汚される事はないだろう。
 それが少し羨ましくて。幸せそうに眠っているコイツが妬ましくなった。
 大切だからこそ全てが欲しいのに。俺の色にも染まらない、この上なく綺麗な存在。

「おい、そろそろ起きろよ」

既に一服を終えた俺は、銀時を起こす。

「ん……何? もう朝……?」
「相変わらず朝には弱いんだな」
「……銀さん未だ眠いから……もうちょい寝かせ……ぐぅ」
「ちょっ! また寝ようとしてんじゃねぇよ。さっさと起きやがれ」
「起きな……ん……っ」

 目を瞑ったまま、口だけぼそぼそと動かして起きる気配を見せない銀時に業を煮やし、いきなり口付ける。口を塞がれた銀時はさすがに驚き、手足をじたばたさせて抵抗した。

「……ぷはっ、いきなり何すんだよ! 息ができねーだろうが!」
「素直に起きねぇてめーが悪い」
「起きないから口塞ぐって……脈絡ないことすんな!」
「でもちゃんと起きれただろ? おはようさん」

 にっこりと笑顔で言ってやれば、ばつが悪そうに頭をかきつつ「おはよう」と返してくる銀時。
 やっぱり綺麗で……可愛いと思う。
 しかもほんのり頬を染めてたりしやがるから、我慢できなくなってついまた、手を出しちまうんだよな。夕べも体力を完全に奪っちまったってのに。コイツの寝起きが悪いのは、自分が原因と言うことを分かっていながら。

 それはいつもと同じ朝。
 けれど毎朝コイツの寝顔を見るたびに、信じてもいないはずの神はいるのかもしれない、と思っちまってる自分がいる。


~了~
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