目を覚ますと、体がやけに熱かった。
　嫌な予感がして体温計を取り出せば案の定、表示された数字は39.1。仕事にも町にも慣れたつもりではいたけれど、体は疲れていたらしい。

「参ったなぁ……」

　今日は食料品の買い出しに行くつもりだったのに。こうして座っているだけでも辛い状態では、買い物どころではない。
　かと言ってこの町には未だ、助けを求められるような友達もいないのだ。

「一人でなんとかしなきゃ……」

　不安な気持ちを振り払って立ち上がろうとしたものの、体は重くて動かない。

「せめて水を……」

　ぼんやりとしていく意識の中、遠くに見える冷蔵庫に手を伸ばした。



　額がヒンヤリとして、気持ちいい。
　続いてストローのようなものが唇に押し付けられ、ゆっくりと口内に冷たい水が流れ込んでくるのが分かった。

「美味しい……」

　ふわふわとした意識の中、小さく呟いた私に答えてくれたのは、低くて優しい声。

「飲んだらゆっくり寝ておけ」

　それが誰かは分からなかったけれど、ふと気付いた時には部屋には誰もおらず。代わりにテーブルの上には数本のペットボトルと水差し、そしてタバコの残り香があった。