今日もまた、いつもの飲み屋に足を運ぶ。週末のこの時間は、私にとって癒しになっていた。

「この間のなす煮、また食べたいな」
「あいよ。ちょっと待ってな」

　オヤジさんとの気心も知れるようになり、会話も弾む。顔見知りも増え、とても和やかで楽しい時間を過ごせる場所だ。

「そう言えば、土方さんに教えていただいたマヨネーズ、美味しかったです」

　前回、ほろ酔いで饒舌になった土方さんが『一番美味い！』と皆に力説していた、とあるメーカーのマヨネーズ。早速私も買ってみたら、確かに他のものとはひと味違っていた。

「凄く濃厚なのに自己主張し過ぎないので、どんな食材にも合いますね」
「だろ？」

　たった二文字の言葉なのに、心から喜んでいるのが伝わってきたのは、いつもは無愛想な彼が、少年のような笑顔を見せてくれたから。

「はい。教えて下さってありがとうございました」

　なんだか嬉しくなって、私も笑顔でお礼を言うと、ハッとしたように視線をそらす土方さん。でも「ああ」と答えてくれたその表情は、とても柔らかいものだった。