あの包帯の人は、一体何者なんだろう。坂田さんの知り合いのようだったけれど、天敵だと言っていたのが気にかかる。

　もやつきを胸に残しながら、今日も仕事に精を出していると、来客を伝えるチャイムが鳴った。

「いらっしゃいま……」
「御用改めに来やした」

　店の奥から出てきた私を、まっすぐ見つめてそう言ったのは沖田さん。スーパーで会った時とは違い、とても真剣な表情をしていたため、私は少しだけ怖くなった。

「あの……御用改めって……？」
「アンタ、高杉とはどういう関係なんですかィ？」
「高杉？」

　知らない名前に首をかしげる。今まで関わったお客の中にも、高杉姓の者はいなかった。

「ごめんなさい。高杉という方は存じ上げません。一体どういう方ですか？」
「しらばっくれなさんな。昨日立ち話してたじゃねェですかィ」
「立ち話？」

　記憶を辿って思い出せる立ち話の相手は……あの包帯の人しかいない。

「ひょっとして、片目に包帯を巻いてる方ですか？」
「やっぱり知ってるんだな」
「知ってると言うほどでは……昨日会ったのが2度目ですし、名前も今初めて知りました」
「だったらあの時、何を話してたんですかィ？」
「何をと言われても、坂田さんの知り合いかと聞かれて、そうだと答えただけなんです」

　持ち得る情報をそのまま伝えると、嘘偽りの無い事は伝わったようだ。でもーー。

「万事屋の旦那の知り合いか……。こりゃァちと面倒なことになるかもしれやせんねェ」

　そう言った沖田さんの顔には、言葉では言い表すことのできない複雑な笑みが浮かんでいた。