「銀ちゃん、銀ちゃん……銀ちゃん」

　外回りで一人歩きながら、何度も呟く。

「銀ちゃん、銀ちゃん……こうして唱えるだけなら、何も抵抗は無いんだけどなぁ」

　本人を目の前にした時、果たして私は呼べるのだろうか。一度感じてしまった引け目は、そう簡単には消せそうにない。

「銀ちゃん……口にするのはこんなに簡単なのにね」

　そう言いながら目的の店の手前まで来た時、すれ違った人の肩にぶつかってしまった。

「ごめんなさい！」

　慌てて謝り、ぶつかった相手の顔を見ると、それは先日見かけた危険な包帯の男。

「周りが見えなくなるほどに、愛しい男の名だってか？　妬けるねェ」

　ククッと笑ったその男は、私の顎をつまんでクイと持ち上げ、鋭い眼差しを向けてきた。

「テメェは銀時の知り合いか？」
「……貴方こそ、坂田さんのお知り合いなんですか？」
「質問に質問で返すたァ、いい度胸だな。俺ァ奴の天敵だよ。……で？　テメェは銀時の何なんだ？」

　そう言った男は、更にズイと顔を近づけて来た。
　射るような眼差しに怯え、答えられぬ私に痺れを切らしたのか、男は質問を変える。

「否か応かで答えりゃ良い。銀時と繋がりはあるのか？」
「……はい」

　何とかそれだけ答えれば、男は「そうか」と満足そうに口角を上げた。