今朝もまた、コンビニではジャンプ争奪戦が繰り広げられていた。
　例の如く坂田さんと目が合い、ペコリと頭を下げる。何故か一瞬坂田さんの表情が曇った気がしたけれど、確認する事も出来ず、私はいつも通り職場に向かった。

　夕方、仕事を終えて家に帰る途中、神楽ちゃんに会った。

「銀ちゃんと何かあったアルか？」

　前置きもなく突然聞かれ、何の事かと訊ね返せば、

「昨日まではテンションの高いアホの坂田だった銀ちゃんが、今朝コンビニから帰ってきたらテンションだだ下がりヨ」

　との返事。

「土曜日にかぶき町を案内してもらったけど、今朝はコンビニの中にいるのを見かけて挨拶しただけだし……」
「銀ちゃんに声かけたアルか？」
「ううん、私は外だったし、坂田さんには頭を下げただけ」

　そう答えると、神楽ちゃんは複雑そう顔をして、ため息をついた。

「あの、私……坂田さんに何か悪い事をした？」

　不安になる私に、神楽ちゃんは言う。

「銀ちゃんもマダオだけど、優花里はもう少し男心というものを知った方が良いネ。とりあえずまずは『銀ちゃん』って呼ぶ練習しとけヨ」

　私よりずっと年下のはずなのに、目の前の神楽ちゃんがとても大人びて見えた。

「呼び方はともかくとして……マダオって何？」