昨日かぶき町を案内してもらった事で、少し町に馴染めた気がする。
　知らない場所、気付かなかった物、そして自分だけでは作れない人との繋がり。坂田さんのお陰で、私の世界はグンと広がった。

　その反面、どこを歩いていても声をかけられ、人の輪の中心にいる坂田さんを目の当たりにした私は怖くなる。
　彼がどれだけこの町に愛されているのかを知った事で、私のような余所者がこんなに優しくしてもらって良いのかと言う不安が生まれた。

「きっと純粋に、慣れない私を気遣ってくれてるんだろうな」

　そんな事は分かっているのに、引け目を感じてしまう自分がいて。

「坂田さんは『銀ちゃん』って呼んで良いと言ってくれたけど……」

　素直に愛称で呼べるまでには、もう少し時間が必要な気がした。