土方十四郎(現在51篇)
【風の強い日】
少し風の強い日。
風になびく長い髪を押さえながら、空を仰ぐお前を見かけた。
その眼差しは何故か寂しそうで、思わず駆け寄り手を伸ばす。
「あれ?どうしたの、土方さん」
触れる直前、俺に気付いて振り向いたお前の瞳は、いつもと変わらぬもので。俺は咄嗟に伸ばした手を引っ込めると、懐からタバコを取り出した。
「別に」
言葉が見つからず、つっけんどんに返せば「そうなの?」と不思議そうに首をかしげる。だがそれ以上詮索してくることは無かった。
「お前こそどうした?」
「私?」
代わりに俺が聞けば、返ってきたのは苦笑いと、「別に」という俺と同じ言葉だけ。
「そうか」
俺はタバコに火を点けると、深く煙を吸い込んだ。立ちのぼる紫煙は、一瞬で風に流されていく。
「お前は消えてしまうなよ」
「え?何?聞こえなかった」
そう言いながら覗き込んでくるお前に、心の中で呟いた。
ーー聞こえねーように言ったんだっつーの。
誰よりも大切だから。
失いたくないから。
さっきだって、お前が風に攫われそうな不安に襲われて手を伸ばしてしまったのだが、そんな事、言える筈もない。
「さっさと屯所に戻るぞ」
俺はぶっきらぼうに言うと、踵を返した。
さりげなく、お前の頭を撫でながら。
「え?ちょっと、土方さん!」
慌てて追いかけてくる足音は、いつもと変わらぬ元気なもの。
やがて不満げな顔で隣に並んだお前を視界の端に映しながら、俺は小さく笑みを浮かべた。
20180726(木)17:28
少し風の強い日。
風になびく長い髪を押さえながら、空を仰ぐお前を見かけた。
その眼差しは何故か寂しそうで、思わず駆け寄り手を伸ばす。
「あれ?どうしたの、土方さん」
触れる直前、俺に気付いて振り向いたお前の瞳は、いつもと変わらぬもので。俺は咄嗟に伸ばした手を引っ込めると、懐からタバコを取り出した。
「別に」
言葉が見つからず、つっけんどんに返せば「そうなの?」と不思議そうに首をかしげる。だがそれ以上詮索してくることは無かった。
「お前こそどうした?」
「私?」
代わりに俺が聞けば、返ってきたのは苦笑いと、「別に」という俺と同じ言葉だけ。
「そうか」
俺はタバコに火を点けると、深く煙を吸い込んだ。立ちのぼる紫煙は、一瞬で風に流されていく。
「お前は消えてしまうなよ」
「え?何?聞こえなかった」
そう言いながら覗き込んでくるお前に、心の中で呟いた。
ーー聞こえねーように言ったんだっつーの。
誰よりも大切だから。
失いたくないから。
さっきだって、お前が風に攫われそうな不安に襲われて手を伸ばしてしまったのだが、そんな事、言える筈もない。
「さっさと屯所に戻るぞ」
俺はぶっきらぼうに言うと、踵を返した。
さりげなく、お前の頭を撫でながら。
「え?ちょっと、土方さん!」
慌てて追いかけてくる足音は、いつもと変わらぬ元気なもの。
やがて不満げな顔で隣に並んだお前を視界の端に映しながら、俺は小さく笑みを浮かべた。
20180726(木)17:28
