坂田銀時(現在95篇)

彼の腕の中、啄ばむようなキスが頬に何度も落とされる。
そこには愛情なんて無いのだと自分に言い聞かせながら、触れる熱を受け止めていた。

「……そんな目で見んなよ」

眉間にしわを寄せて言う彼に、私は目を伏せて答える。
同時に熱い雫が頬を伝ったけれど、気付かないフリをした。

「物分かりが良過ぎるってェのも、難儀なもんだな」

そう言ってフッと息を吐いた彼は、どんな顔をしているの?

「――いつか」
「え?」

瞼に唇を押しつけながら言われ、温もりだけで彼の存在を探る。

「いつかまた会えたなら……」

そう言った彼の吐息は瞼から頬を渡り、私の唇を撫でる。しかし直接は触れる事の無いまま私から離れて行った。

「今度こそくれよな。お前の全て」
「白や……銀時っ!」

目を開けた時にはもう、彼の姿は無くて。

「いつかなんて……ありもしない希望を持たせないでよ……っ!」

去り際に残された、血のにじむ彼の鉢がねを握り締めながら、私は一人静かに涙を零した。

20180521(月)17:05
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