坂田銀時(現在95篇)

普段は散々おちゃらけている癖に、ふとした時に見せる寂しげな笑顔が印象的だった。

いい加減な男なんて嫌いなのに、ここぞと言う時には手を差し伸べられる行動力に、いつの間にか惹かれていた。

ーー嫌な奴

自分を見ていない相手に惚れるなんて無駄な事、する気は無かったのに。

ーーこんなの、私らしくもない

誰かを追いかける日が来るなんて思いもしなかった。

「ねぇ、銀時」

雨の中、松の木に凭れながら空を仰ぎ見ている銀時の腰に手を回す。

ーー誰ヲ想ッテ泣イテルノ?

本当は聞きたいのに、言葉にしてしまったら終わりな気がするから。

「きっともうすぐ雨は止むよ」

と言って強く抱きしめた。
濡れた布越しに感じる銀時の冷たい体が悲しかったけれど、私の体温が少しでも温められるのなら。
そう思って胸元に口付けると、上から小さく吹き出す音が聞こえた。

「お前らしいな」
「……何の事?」

ゆっくりを頭を上げれば、そこには優しい微笑みをたたえた銀時がいて。

「普段はキッツイ癖に、ここぞって時には誰よりも優しい。……俺がこんな風に素の自分を見せられるのは、お前だけなんだぜ」

ポンと私の頭に手を置いた銀時の頬が少しだけ赤い事に気付き、心臓がトクンと跳ねる。
今しかないと思い、覚悟を決めた私が「銀時、私……」と言いかけた時。

「それを言うのは男からっしょ?」

銀時の言葉が耳に届いた時には、優しく唇が重ねられていた。

20180507(月)20:30
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