坂田銀時(現在95篇)

数日前まで満開だった桜は既に大半が葉桜となり、花見客もすっかり足が遠のいてきた頃。
私は銀さんを誘って桜並木を歩いていた。

「こんなしおれた桜を見て、何が楽しいんだよ」

そう言って不満げにダラダラと歩く銀さん。
確かに花はしおれて花弁も散ってしまっているけれど、これもまた風情があると言うのに。
銀さんには伝わらなかったか……と残念に思いながらも、せめて気持ちを盛り上げようと頑張ってみた。

「あのねぇ、隣にも花はいるでしょ」

ほらほら、と自分を指差しながら言えば、目を丸くする銀さん。

「何よその顔。葉桜も良いけどお前を愛でる方が良いな、くらい言ってみなさいよね」

更に私がそう付け加えると、銀さんは苦笑いをしながら桜を見上げるだけで何も答えてはくれなかった。

「甘い言葉の一つや二つ、ノリで良いから聞かせてくれたって……」

口を尖らせて拗ねると、銀さんの手が私の頭に乗せられる。

「ばァか」
「ちょっと!いきなりバカって酷くない?」

突然悪口を言われてムッとする私に、銀さんは言った。

「んなセリフ、言えるはずなんてねェだろ」
「……っ!」

言葉と同時に銀さんの顔が近付いたかと思うと、重ねられた唇。

「俺は言葉より態度で示す方なんだわ。ってなわけで、このままここで愛でちまって良いんだよな?」

驚きで固まる私の瞳に映ったのは、葉桜をバックに意地悪く微笑む銀さんだった。

20180404(水)17:34
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