坂田銀時(現在95篇)

久しぶりのオフ。
せっかく時間があるからと、近所の桜並木に足を伸ばしてみた。
既に花は満開で、真っ青な空に美しく映えている。

途中のベンチに腰を下ろし、桜と行き交う人達を交互に見ていると、つい気になってしまうのは夫婦やカップル。幸せそうに花を見ながら語り合ったり、写真を撮ったりする姿は正直羨ましかった。

「……帰ろ」

花の美しさは堪能したいけれど、今日は何故か無性に寂しくて。
ベンチから立ち上がった私は、せっかく来た記念にと一枚だけスマホで桜の写真を撮り、その場を立ち去ろうとした。

「おね〜えさん、俺の写真も撮ってくんない?」

スマホをポケットにしまいかけた時、後ろから聞こえた声。
振り向くとそこには銀さんが立っていた。

「銀さんもお花見に来てたの?」

知り合いに会うとは思っていなかった私は、驚きながら答える。そんな私に銀さんは笑顔を見せてくれた。

「ニュースで満開宣言してたしな。せっかくだからと思ってよ」

銀さんが指をさした方向には、たこ焼きを奪い合う新八くんと神楽ちゃんの姿がある。
あまりにいつも通りの彼らがおかしくて、つい吹き出した私が「あのシーンを写真に撮れば良いの?」と言うと、銀さんは肩をすくめた。

「んなわけねーだろ。俺が撮りたいのは……」

そこまで言った銀さんは私の横に立ち、肩を抱き寄せる。そしてもう片方の手で私のスマホを持ち、液晶をこちらに向けた。

「俺たちの写真だってーの」

器用にカメラを起動して押されたシャッター。それは美しい桜を背景に、誰よりも幸せそうな二人の姿をとらえていた。

20180327(火)18:40
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