坂田銀時(現在95篇)

その日万事屋に立ち寄ると、銀時はソファでうたた寝をしていた。
よっぽど楽しい夢を見ているのだろうか。だらしなくにやけた顔は、間抜けだけれど幸せそうで、起こすには忍びない。

「ちょっとおしゃべりでもと思ったけど、今日は諦めますか」

そう小声で呟いた私は、帰る前にもう一度見ておこうと銀時の寝顔を覗き込んだ。
規則正しい寝息が眠りの心地良さを伝えてきて、見ているこちらまで幸せになる。

「いつも見上げるばかりだけど、時にはこういうのも良いね」

銀時を上から見る機会なんて滅多にないから。これはレアな体験だな~なんて事を考えつつ踵を返そうとした時――。

「そんじゃ、堪能していけよ」

の声と共に体がふわりと浮かぶ。気が付けば私は、銀時の上にうつ伏せで乗っていた。

「え? 何が起こったの?」

慌てる私の目の前には、すっかり目覚めた銀時の顔。

「時にはこういうのも良いだろ? お前からキスを迫ってるみたいでよ」

そう言った銀時はニヤリと笑い、ゆっくりと目を閉じる。
その表情はこれ以上なく妖艶で。
思わず心臓が飛び跳ねた私は、戸惑いながらも引き寄せられるように、唇を重ねた。

20180317(土)10:04
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