坂田銀時(現在95篇)

ドアを開けると、部屋の前に猫がいた。
そっと手を伸ばして少し癖のある銀色の毛を撫でると、遠慮がちにすり寄ってくる。

「……外は寒いよ。おいで」

そう言って招いてみれば、素直に部屋に入ってきた。
玄関に座り、真っ直ぐに見つめてくる目は私に何かを語りかけている。

「何か言いたい事でもあるの?」

もう一度毛を撫でようと手を伸ばすと、猫は当然のように私の手をペロリと舐めた。
そのまま指に舌を絡め、びくりと震えた私を見る猫の目は、先ほどとは違って飢えた獣のようだ。

「……ふ……っ」

思わず漏れた吐息は猫の本能を刺激したのか、その舐め方も大胆になって行く。
指から手の平、腕、頬、そして……唇。

「……猫はお姫様のキスで人間に戻る事ができました……ってか」
「何よそれ。喧嘩して気まずかっただけでしょ?」
「お前だってすぐに俺の意図を読んでたじゃねェか。猫好きのお前ならぜってェ見捨てねェと思ったからよ」

たった今まで猫のフリをしてこちらのご機嫌を伺っていた癖に。
自信ありげにそう言った銀時は、嬉しそうに笑いながら再び私にキスをした。

20180222(木)22:22
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