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坂田銀時(現在95篇)

 銀さんに好きな人がいることは知っていた。
 でも諦めきれなくて告白したら、帰ってきた軽い返事。

「良いぜ」

 上辺だけの承諾は、私に心がない証拠。
 それでも良いと割り切ってキスをせがむと、お安い御用と唇を重ねてきた。

 ──ねえ、その人とはもうキスしたの?

 熱い舌に蕩かされながら、思う。

 ──ねえ、その人にはどれだけ大きな愛を注いでいるの?

 絡む視線と嫉妬が、私を濡らす。
 揶揄われていると分かっていても、心と体が銀さんを求めていた。

「今だけで良いから……私だけを見て。私のことだけ考えて。私だけを……感じて」

 思い切ってキス以上のことをせがむ。
 そんな私に、銀さんは意地悪く口角を上げて言った。

「今だけで良いのかよ」

 それは、思ってもみなかった言葉。
 良いはずなんて無いと首を横に振れば、銀さんの笑みが更に深くなった。

「だったら今だけなんて言葉、必要ねーだろ」
「だって銀さんには好きな人が──」

 そう言いかけた私の唇に指を当てて遮ったのは、銀さんの指。
 思わず続く言葉を飲み込むと、代わりに銀さんが言った。

「銀さん、好きな女に『今だけ』なんて言われたくねーんだけど」

〜了〜

2021/8/23
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