土方十四郎(現在51篇)

 雲一つない真っ青な空に、立ち上る紫煙が見える。

「こいつがねェと、口寂しくていけねェんだよ」

とまるで体の一部のように銜えているマヨボロの吸い殻は、既にいくつも足元に落とされていた。
 壁にもたれかかり、静かに煙を吐き出すその顔は愁いを帯びていて、見ているだけで切ない気持ちになる。

 いつか言えるのだろうか。ずっと胸に秘めている、『好き』というたった二文字の大切な想いを。

「副長、お待たせしてすみません。例の件ですが……」
「おう、ご苦労だったな」

 約束の時間よりかなり遅くなってしまった自分を責める事無く、労いの言葉をかけてくれる副長。
 鬼と呼ばれながらも、実は誰よりも優しさを持っている副長に想いを寄せる自分が報われる日は未だ、遠い――。


ver.2 2018/1/12
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