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沖田総悟(現在18篇)

【紅】

 べにを引くのが苦手だ。
 ただ唇に色を乗せるだけだというのに、どれだけ回を重ねても何故か上手くいかず、違和感しか無い。

「もう、何がいけないわけ?」

 今日もまた鏡の中には、おかしな紅を引いた自分が映っている。
 はぁっと大きくため息を吐き、諦め半分で紅を落とそうとしていると、不意に総悟が声をかけてきた。

「そろそろ先方との約束の時間……相変わらず不器用ですねィ。ブサイクなツラにますます磨きがかかって、いい感じに滑稽でさァ」

 そう言って蔑むような笑みを浮かべ、ジロジロと私の顔を覗き込んでくる総悟。正直むかつきはしたものの、挑発には乗るまいと必死に平静を装った。

「よくもまぁそんだけ酷い言葉を並べられるわね。アンタにはデリカシーってもんが無いの?」
「何言ってんですかィ。デリカシーがあるからこそ、こうしてココに来てるんですぜ」
「……ねぇ総悟、デリカシーの意味って知ってる?」
「もちろんでさァ。『珍味』って事でしょう?」
「そっちの意味で覚えたんかーい!」

 まさかの答えに平静を保てず、思わず突っ込んでしまう。こうなっては仕方ないと、勢いのまま文句を言うべく「もう、何でいつも総悟は……っ」と言いかけた時だった。
 続く言葉が、総悟によって強引に遮られる。何度も唇を食まれ、時折舌で舐められる感触にゾクリと震える度に、総悟が鼻で笑うのが分かった。
 その後ようやく解放された私が見たものは、総悟の唇にうつった紅。それをペロリと舐めとった総悟は、鋭い眼差しを私に向けて言った。

「アンタこそデリカシーの意味、分かってるんですかィ? 紅を差すのは……俺の前だけにしなせェ」

〜了〜
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