土方十四郎(現在51篇)

 そっと指先に触れると、自然な動きで指を絡め、恋人繋ぎをしてくれるのが嬉しい。

 顔を見上げれば、決してこちらを見ないのに、頬が緩んでいる事が分かるのが愛しい。

 並んで歩くと、私の歩幅に合わせようとして時々足がもつれる姿が可愛い。

 私を抱きしめる時、力加減を計ろうとしてか一瞬だけ戸惑うのがおかしい。

 この当たり前の日常の中で、いくつもの小さな幸せを感じさせてくれる貴方に、私は恋をしていた。



 今日もまた、彼の左手の指先に触れると、握り返してくれる大きな温かい手。私のために、二人でいる時はタバコを右手で挟むようになった事には気付いてる。そんな事を考えながら、いつものように土方さんを見上げて見つめているとーー。
 
「そんな熱のこもった目で見てんじゃねェよ。……これでも我慢してんだからよ」

 やはりこちらを見る事なく言われた言葉。だがその意味を理解できない私は、首を傾げるしかなかった。
 そんな私の反応に、土方さんが溜息をこぼす。

「せっかくお前への想いを小出しにして抑えてるってのにーー暴発しちまうだろうが」

 そう言った土方さんは、今までに無く強引に私を抱き寄せると、深く口付けてきた。
36/51ページ
応援👍