神威(現在12篇)

「私をどうするつもり?」

 鎖に繋がれた私は、部屋に入ってきた男に問う。
 戦闘中彼に捕らえられ、気絶したまま連れてこられたのがこの部屋だった。窓の無い、外から施錠されているこの部屋は多分、船の中だ。

「さあね。君はどうされたい?」
「馬鹿にして……絶対逃げてやるんだから!」

 私が殺気を込めて睨めば、何故か男は笑い出した。

「何がおかしいのよ」
「おかしいんじゃないよ、嬉しいんだ。君との戦いは楽しかったし、ここでも俺を楽しませてくれそうだからね」
「一体何を……」
「もっと恨んで、もっと憎んで、俺の事だけ考えてよ。そんでもって、心も体も俺に縛られちゃえば良いだろ」
「訳わかんない。アンタの目的はな……っ」

 突如見せられた鋭い目が私を萎縮させ、言葉を失わせる。

「俺の名前は神威。これからは名前で呼ばなかったら……殺すよ?」

 だがその物騒な言葉とは裏腹に、私の顎に添えられた手と、与えられたキスは優しかった。

2018/10/24
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