桂小太郎(現在12篇)

「小太は何で、銀時達みたいに髪を切らないの?」

 攘夷戦争に参戦して少し経った頃。ふと気になって尋ねた。

「髷があると、戦いの時に邪魔にならない?」
「確かにそうかもしれんが……まあ色々とな」
「色々って何よ。ひょっとして願掛け?」

 小太郎なら然もありなん。真面目な性格だし、一日も早く先生を奪還できるようにとか、皆が無事終戦を迎えられますようにとか、そういう願いかな? なんて事を考えていると――。

「願掛けでは無いぞ」
「あれ? そうなの?」

 予想が外れ、意外に思った。

「だったら何? まさか小太流のオシャレだったりして」

 理由が気になって詰め寄りながら聞いた私に、小太郎がため息を吐く。

「覚えていないのか? お前が言ったのではないか。『小太は髪を伸ばすと、ちょっと先生に似てるね』と」
「え? それは確かに言ったけど……だからって別に伸ばし続けなくても良かったのに。小太は先生じゃ無いんだよ」
「確かにその通りなんだがな」

 腰の位置まで伸びた自らの髪を束ねながら苦笑いをした小太郎は、私から顔を背けて言った。

「お前がいつも、何かにつけて先生ばかり気にしていたから……外見だけでも似せれば少しはこちらを見るかと思って……」

 語尾が小さくなった小太郎の顔は、真っ赤になっている。思わずポカンとしたけれど、それが彼なりの告白だと気付いた私は、呆れながら答えた。

「先生は先生、小太は小太だもん。だから私はいつだって小太の側にいるんだよ」

 よほど驚いたのか、物凄い勢いで私を振り向く小太郎。そして一瞬くしゃりと顔をゆがませた後、先生よりもほんの少しだけまぶしい笑顔を見せた。

2018/10/23
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