志村新八(現在1篇)

「し〜ん〜ちゃん!」
「え……?うわっ!」

街を歩いていた時、突然後ろから声をかけられた僕は、思わず悲鳴をあげた。何故なら振り向いたと同時に、眼鏡を取られてしまったから。

「いきなり何するんだよ!」

怒る僕の目の前には、嬉しそうに僕の眼鏡をかけた1つ年下の幼馴染がいた。

「えへへ、似合う?」

サイズの合わない眼鏡を、少しずり下げながらかけた彼女は、いつもと雰囲気が違って見える。正直に言ってしまえば確かに似合っていて、思わず萌えそうになったのを必死に耐えた。

「人の物を勝手に取らない!ほら、返してよ」
「えー!似合うって言ってくんなきゃやだ。今日は眼鏡の日なんだって。私も便乗して眼鏡っ娘になるんだもん」

ペロリと舌を出してみせる彼女はとても可愛くて。強く言ってやりたいのに、つい見惚れてしまった。

そんな僕の反応は予想外だったのか、彼女の楽しそうな表情が一転して、不安げになる。

「……そんなに似合わない?」

その声は震えていた。
こう言うところはほんと、小さい頃から変わらないんだよなァ。
いくつになっても泣き虫で、甘えん坊で。

ーーだから、僕は放っておけないんだ。君の事を。

「似合わないよ」
「……え……?」

涙を浮かべる彼女の頭をポンポンと叩いた僕は、彼女から眼鏡を取り外した。

「だって眼鏡は僕のトレードマークだからね。君はそのままの方が可愛いよ」

笑顔を見せながら眼鏡をかけて彼女を見れば、驚いた顔をして僕を見ている。

「僕、何かおかしな事言った?」
「……なんか新ちゃんじゃないみたいで……眼鏡の日だからかなぁ。いつもよりカッコよさ10割増しって感じ」

そう言った彼女はうっすらと頬を染めながら、はにかむように笑った。

20181001(月)23:23
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