神威(現在12篇)
ウサギは寂しいと死んでしまうという話を聞いた事がある。
真実か否かは知らないけれど、少なくとも私の知っているウサギには、寂しいなんて感情は無いと思っていた。
「また誰かと戦ってきたの?」
物音も立てずに私の部屋に現れ、あちこち破れた服を脱ぐ神威。
全身傷だらけになりながらも、その顔は嬉しそうだ。
「『侍』って遊び相手を見つけたんだ。暫くは退屈しないだろうね」
ん、と腕を伸ばして見せるのは、けがの手当てをしろと言う合図。
私は一つため息を吐くと、神威の為だけにいつも用意されている救急箱を取り出した。
「私は貴方の看護師じゃないよ。もうこれっきりにして欲しいんだけど」
そう言いながら消毒液を取り出した時。
ヒュッと冷たく鋭い何かに全身を貫かれる感覚が、私を襲った。
驚いて神威を見れば、顔はいつもの笑顔なのに、まるで別人のような空気をまとっている。
「か……むい……?」
「俺にそんな口きいて良いと思ってんの?」
「だって……いつも傷だらけでうちに来るから……」
「それが何でかって、理由を考えた事ないわけ? お前ってバカなの?」
「な……っ!」
あまりの言い草に言葉を失った私を見て何を思ったか、突如神威は私の腕を強く引っ張った。
次の瞬間にはもう、私の体は神威に抱きしめられていて。
「俺の傷を治せるのは、お前だけだろ」
頭の上から落ちてきたのは、少しだけ拗ねた声だった。
20180308(木)00:03
真実か否かは知らないけれど、少なくとも私の知っているウサギには、寂しいなんて感情は無いと思っていた。
「また誰かと戦ってきたの?」
物音も立てずに私の部屋に現れ、あちこち破れた服を脱ぐ神威。
全身傷だらけになりながらも、その顔は嬉しそうだ。
「『侍』って遊び相手を見つけたんだ。暫くは退屈しないだろうね」
ん、と腕を伸ばして見せるのは、けがの手当てをしろと言う合図。
私は一つため息を吐くと、神威の為だけにいつも用意されている救急箱を取り出した。
「私は貴方の看護師じゃないよ。もうこれっきりにして欲しいんだけど」
そう言いながら消毒液を取り出した時。
ヒュッと冷たく鋭い何かに全身を貫かれる感覚が、私を襲った。
驚いて神威を見れば、顔はいつもの笑顔なのに、まるで別人のような空気をまとっている。
「か……むい……?」
「俺にそんな口きいて良いと思ってんの?」
「だって……いつも傷だらけでうちに来るから……」
「それが何でかって、理由を考えた事ないわけ? お前ってバカなの?」
「な……っ!」
あまりの言い草に言葉を失った私を見て何を思ったか、突如神威は私の腕を強く引っ張った。
次の瞬間にはもう、私の体は神威に抱きしめられていて。
「俺の傷を治せるのは、お前だけだろ」
頭の上から落ちてきたのは、少しだけ拗ねた声だった。
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