沖田総悟(現在18篇)
『初恋は実らない』別キャラエンドです
昔からよく耳にする言葉。
でも私はそんな話、全く信じてはいなかった。
ーーそう。
あの子の存在を知るまでは。
気付いた時にはもう、私の幼馴染である総悟の目に映っていたのは、たった一人だった。
色気なんて欠片も無い、凶暴で大食漢、でも可愛くて優しいあの子だけを総悟はいつも見つめていた。
「総悟に似合うのは、自分と同等に戦える女の子、か」
戦いのイロハも知らない私に、彼の隣を独占する資格はない。
正面からぶつかったり、背中を預けるなんて到底無理な話だ。
私があの子を初めて見たのは半年ほど前。
総悟と一緒に出かけていた際に、天人に襲われた時だった。
私が人質に取られてしまい、総悟が身動きを取れなくなった時に助けに入ったあの子。
お互いを罵り合いながらも、誰よりも息の合った戦い方であっという間に天人を叩きのめし、私を無傷で助け出してくれた。
「大丈夫ですかィ」
総悟は私に手を差し伸べてくれたけど、その目はあの子を見ていた時とは明らかに違っていて。
この時私は初めて、幼馴染の素顔に触れた気がした。
「私よりあの子の所に行ってあげて。私を庇って怪我をしてるから」
「あいつはこのくらいでくたばる奴じゃねェんで、大丈夫でさァ」
小さな笑みから読み取れる『信頼』は、私の心をかき乱す。
それと同時に、私に望みなどありはしないのだと確信させられた。
あれから時は過ぎ。
私にも新たな出会いがあり、総悟への想いは過去の物となった。
それでもふとした時に総悟を見ると、あの頃抱いていた淡い恋心を思い出す事がある。
幼馴染への長い初恋期間は、きっといつまでも忘れる事は無いだろう。
でもそこに上書きできるほどの長い時間を、今大切に思う人と過ごす事が出来れば、もしかしたら……。
「どうしたの? そんな所でボーっとしちゃって。ほら、そろそろ時間だよ」
優しい笑顔と、差し出された大きな手。
私はその手を取り、笑みを返す。
「うん、それじゃぁ行こっか。――退さん」
20180329(木)07:26
昔からよく耳にする言葉。
でも私はそんな話、全く信じてはいなかった。
ーーそう。
あの子の存在を知るまでは。
気付いた時にはもう、私の幼馴染である総悟の目に映っていたのは、たった一人だった。
色気なんて欠片も無い、凶暴で大食漢、でも可愛くて優しいあの子だけを総悟はいつも見つめていた。
「総悟に似合うのは、自分と同等に戦える女の子、か」
戦いのイロハも知らない私に、彼の隣を独占する資格はない。
正面からぶつかったり、背中を預けるなんて到底無理な話だ。
私があの子を初めて見たのは半年ほど前。
総悟と一緒に出かけていた際に、天人に襲われた時だった。
私が人質に取られてしまい、総悟が身動きを取れなくなった時に助けに入ったあの子。
お互いを罵り合いながらも、誰よりも息の合った戦い方であっという間に天人を叩きのめし、私を無傷で助け出してくれた。
「大丈夫ですかィ」
総悟は私に手を差し伸べてくれたけど、その目はあの子を見ていた時とは明らかに違っていて。
この時私は初めて、幼馴染の素顔に触れた気がした。
「私よりあの子の所に行ってあげて。私を庇って怪我をしてるから」
「あいつはこのくらいでくたばる奴じゃねェんで、大丈夫でさァ」
小さな笑みから読み取れる『信頼』は、私の心をかき乱す。
それと同時に、私に望みなどありはしないのだと確信させられた。
あれから時は過ぎ。
私にも新たな出会いがあり、総悟への想いは過去の物となった。
それでもふとした時に総悟を見ると、あの頃抱いていた淡い恋心を思い出す事がある。
幼馴染への長い初恋期間は、きっといつまでも忘れる事は無いだろう。
でもそこに上書きできるほどの長い時間を、今大切に思う人と過ごす事が出来れば、もしかしたら……。
「どうしたの? そんな所でボーっとしちゃって。ほら、そろそろ時間だよ」
優しい笑顔と、差し出された大きな手。
私はその手を取り、笑みを返す。
「うん、それじゃぁ行こっか。――退さん」
20180329(木)07:26