沖田総悟(現在18篇)

何故か駆り出されてしまった肝試し。
町内会の子供達のためにと企画された物だけれど、そもそもお化けの類は大の苦手な私がまさか驚かす側に回るとは思わなかった。
しかも暗がりに一人で隠れていなければならず、半泣きになりながらお墓の陰に隠れていると……。

「う〜ら〜め〜し〜」
「きゃぁっ!」

突如後ろから聞こえた声に驚いた私は、被せるように叫びながら四つん這いでその場から逃げようとした。
ところがすぐに背中から何かが覆い被さり、身動きが取れなくなってしまう。
あまりの恐怖にガタガタと震えていた私だったが、やがて耳元からくすくすと笑う声が聞こえてきた。

「ほんっとに怖がりなんですねィ。面白いモン見せてもらいやした」

聞き覚えのある声にゆっくりと振り向けば、それは沖田さん。
彼もおばけ要因だったのか、落ち武者の格好で私に覆い被さっていた。

「ちょっと驚かすだけのつもりだったんですが、こんなに良い反応をされちまうとは」

そう言って嬉しそうに笑う沖田さん。
さすがにこれは悪い冗談だと怒ろうとした私だったが、何故か真っ先に出たのは涙だった。
恐怖が安堵に変わったせいか、止めどなく零れ落ちる涙。
それを見た沖田さんは、笑顔から一転。体を起こして慌て始める。

「そんなに驚いちまうとは……アンタをそんな風に泣かせるつもりじゃ無かったんです。すいやせん」

目に見えて落ち込む沖田さん。
その姿を見た私は、涙を拭きながらペロリと舌を出して言った。

「ちょっと驚かすだけのつもりだったんだけど、こんなに良い反応をされちゃうとはね」

もちろん本当は演技なんかじゃない。ただ落ち込んでいる沖田さんがあまりにも可哀想で、強がりを言ってしまったのだ。
でもそんな気遣いは無用だったと、この直後に知る事となる。

「こりゃ一本取られやしたね。だが俺ァ引き分けってのが嫌いなんでさァ……」

その言葉を認識する間も無く、重ねられた唇。離れる瞬間、小さく「好きでさァ」と聞こえたように思えたのは気のせい?
目を見開いて驚く私に、沖田さんは笑顔で言った。

「これ以上の驚きはねェでしょう。二対一で俺の勝ちでさァ」

20180310(土)00:03
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