Happy Birthday to…
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翌日、十月十日夕方。
珍しく早朝から入っていた依頼をこなして帰った銀時は、戸を開けた瞬間、その奥にあった光景に絶句した。
「……な……なんじゃこりゃァッ!」
玄関からリビング一帯が折り紙で作られたオーナメントで飾り付けられ、天井にはくす玉。テーブルにはご馳走が並び、新八と神楽、土方、沖田がお妙の指示を受けながら、飾り付けの仕上げをしていた。
「新八〜、銀ちゃん帰って来たアル!」
「ホントだ。すみません土方さん、柚希さんを呼んで来て頂けますか?」
「何で俺なんだよ」
「行けよ土方。んでそのまま逝っちまえ」
「総悟てめェ……!」
「はーいはい、その辺にしておきましょうね。柚希さーん、銀さんが帰りましたよー」
飾り付けの手を止めた妙がキッチンへと向かい、柚希を呼んでくると、二人の手にはクラッカーが握られている。
「お帰りなさい。お疲れ様」
呆気にとられている銀時に向けて笑顔で言った柚希は、銀時以外のメンバーにクラッカーを配ると、皆に視線を送った。そしてーー。
「せーの……」
パァン!
柚希の掛け声とともに、全てのクラッカーが鳴り響いた。
「お誕生日おめでとう、銀時」
「おめでとー銀ちゃん、何歳になったアルか?」
「おめでとうございます、銀さん」
「また店に来た時にもお祝いしましょうね。銀さんの自腹でドンペリ入れますから」
「ったく、何で俺がこんな事……」
「どうしたんですかィ? 旦那。固まっちまったままで」
沖田の言葉で皆の視線が集まった銀時の顔には、クラッカーの紙テープが見事に束になって引っかかっている。
「お前ら……」
その束を邪魔くさそうに掴んだ銀時だったが、何故かその手を顔に押し付けたまま、しばらく離そうとはしなかった。
「どうしたアルか? 銀ちゃん」
「銀さん? 大丈夫ですか?」
子供たちが心配そうに銀時の顔を覗き込む。すると銀時は突然紙テープの束を土方に向かって投げつけ、新八と神楽の頭に手を乗せた。
「うわっ! 何してくれんだよ、万事屋!」
「ウルセーよ。皆して顔を狙ってきやがって、目に入っちまっただろーが」
そう言いながら二人の頭をワシワシとかき混ぜる銀時の目は、少し赤くなっている。
「あれェ? 旦那、ひょっとして感動で泣いてるんですかィ?」
「違ェよ! 紙テープが目に入ったっつっただろーが!」
ドS全開の笑顔で揶揄ってくる沖田に向けて、足で蹴り上げる真似をした銀時だったが、ふと気付いたように言った。
「……柚希?」
たった今、自分にお祝いの言葉を言ったばかりの柚希が、慌てたようにキッチンへと走っていく。しかもその後を追うように、土方までもキッチンに向かって歩き始めたのだ。これが気にならないはずがない。昨日の二人の姿が心に引っかかっていた銀時は、我慢できずに自らもキッチンへと向かおうとした。
ところが、その歩みは新八たちに止められてしまう。
「あ、銀さんはここにいて下さい」
「何でだよ、俺は柚希に……」
「今日は銀ちゃんの誕生日祝いネ。主役がキッチンに入るなんて野暮は許されないアル」
「新ちゃんたちの言う通りですよ、銀さん。柚希さんはすぐに戻ってきますから」
「すぐにって、じゃあ何で土方が……」
そう銀時が言った時。
「お待たせ〜!」
柚希の声と共にキッチンから現れた物。それは銀時の好きないちごをふんだんに使った、三段重ねの豪華なケーキだった。
柚希と土方がそろそろと持ち運び、テーブルの真ん中へと下ろす。そのてっぺんには、
ーーHAPPY BIRTHDAY 銀時
という大きなチョコプレートが乗せられていた。
「あーもー緊張した〜。この瞬間までに崩しちゃいけないから、気を使って大変だったんだよ」
「……そりゃまァそうだろうよ……しかしこんなでっけェケーキ、よく準備できたな」
銀時が呆れ顔で言うと、柚希が口を尖らせながら答える。
「だって、よく食べるメンバーなんだもん。それにシロ……じゃなかった、銀時が昔言ってたじゃない。いつかケーキをお腹いっぱい食べてみたいって。今ならその夢が叶えられるかなと思ったの」
「子供の頃の話じゃねーか、それ」
「そうだよ。でもさすがに料理と一緒にこんなケーキまでは作れないから、予約注文したんだけどね。昨日お店に最終確認しに行った時、持ち帰り方法を考えてなかった事に気付いたわけですよ。で、困っていたら、偶然お店の前で土方さんに会って、パトカーで運ぶ事を思いついちゃった、と」
柚希のまさかの言葉に、さすがの銀時も目を丸くした。
「マジかよ! よくそんなのを、この頭の固い副長サマが引き受けたな」
「つい先日から始まった『特マヨキャンペーン』とやらの当選券と交換で、職権乱用したんですぜ。ったく、士道不覚悟で今すぐ切腹しやがれってんだ。介錯なら喜んでしやすぜ」
「『土方さん公認でサボれるんですかィ』とか言って、面白がって一緒にパトカーに乗ったお前に言われたかねェよ!」
言い争い始めた土方と沖田を横目に、銀時は思い出す。
ーーそんじゃ昨日俺が見た二人は、交渉成立した辺りって事か? そりゃァ愛するマヨをゲットできりゃ頬も緩むだろうけどよ。それにしては土方の表情が……。
小さな引っ掛かりを感じはしたが、本当に疚しいところがあれば沖田まで巻き込む事は無いだろう。今のところは納得しておくか、と銀時は大きくため息をつきながら自分に言い聞かせる。
そんな銀時がチラリと視線を送った柚希から返ってきたのは、
「たまたま当選券を持ってたんだもん。まあ持ちつ持たれつってやつかな?」
と悪びれる事なく舌を出しながら言った柚希の笑顔だった。
珍しく早朝から入っていた依頼をこなして帰った銀時は、戸を開けた瞬間、その奥にあった光景に絶句した。
「……な……なんじゃこりゃァッ!」
玄関からリビング一帯が折り紙で作られたオーナメントで飾り付けられ、天井にはくす玉。テーブルにはご馳走が並び、新八と神楽、土方、沖田がお妙の指示を受けながら、飾り付けの仕上げをしていた。
「新八〜、銀ちゃん帰って来たアル!」
「ホントだ。すみません土方さん、柚希さんを呼んで来て頂けますか?」
「何で俺なんだよ」
「行けよ土方。んでそのまま逝っちまえ」
「総悟てめェ……!」
「はーいはい、その辺にしておきましょうね。柚希さーん、銀さんが帰りましたよー」
飾り付けの手を止めた妙がキッチンへと向かい、柚希を呼んでくると、二人の手にはクラッカーが握られている。
「お帰りなさい。お疲れ様」
呆気にとられている銀時に向けて笑顔で言った柚希は、銀時以外のメンバーにクラッカーを配ると、皆に視線を送った。そしてーー。
「せーの……」
パァン!
柚希の掛け声とともに、全てのクラッカーが鳴り響いた。
「お誕生日おめでとう、銀時」
「おめでとー銀ちゃん、何歳になったアルか?」
「おめでとうございます、銀さん」
「また店に来た時にもお祝いしましょうね。銀さんの自腹でドンペリ入れますから」
「ったく、何で俺がこんな事……」
「どうしたんですかィ? 旦那。固まっちまったままで」
沖田の言葉で皆の視線が集まった銀時の顔には、クラッカーの紙テープが見事に束になって引っかかっている。
「お前ら……」
その束を邪魔くさそうに掴んだ銀時だったが、何故かその手を顔に押し付けたまま、しばらく離そうとはしなかった。
「どうしたアルか? 銀ちゃん」
「銀さん? 大丈夫ですか?」
子供たちが心配そうに銀時の顔を覗き込む。すると銀時は突然紙テープの束を土方に向かって投げつけ、新八と神楽の頭に手を乗せた。
「うわっ! 何してくれんだよ、万事屋!」
「ウルセーよ。皆して顔を狙ってきやがって、目に入っちまっただろーが」
そう言いながら二人の頭をワシワシとかき混ぜる銀時の目は、少し赤くなっている。
「あれェ? 旦那、ひょっとして感動で泣いてるんですかィ?」
「違ェよ! 紙テープが目に入ったっつっただろーが!」
ドS全開の笑顔で揶揄ってくる沖田に向けて、足で蹴り上げる真似をした銀時だったが、ふと気付いたように言った。
「……柚希?」
たった今、自分にお祝いの言葉を言ったばかりの柚希が、慌てたようにキッチンへと走っていく。しかもその後を追うように、土方までもキッチンに向かって歩き始めたのだ。これが気にならないはずがない。昨日の二人の姿が心に引っかかっていた銀時は、我慢できずに自らもキッチンへと向かおうとした。
ところが、その歩みは新八たちに止められてしまう。
「あ、銀さんはここにいて下さい」
「何でだよ、俺は柚希に……」
「今日は銀ちゃんの誕生日祝いネ。主役がキッチンに入るなんて野暮は許されないアル」
「新ちゃんたちの言う通りですよ、銀さん。柚希さんはすぐに戻ってきますから」
「すぐにって、じゃあ何で土方が……」
そう銀時が言った時。
「お待たせ〜!」
柚希の声と共にキッチンから現れた物。それは銀時の好きないちごをふんだんに使った、三段重ねの豪華なケーキだった。
柚希と土方がそろそろと持ち運び、テーブルの真ん中へと下ろす。そのてっぺんには、
ーーHAPPY BIRTHDAY 銀時
という大きなチョコプレートが乗せられていた。
「あーもー緊張した〜。この瞬間までに崩しちゃいけないから、気を使って大変だったんだよ」
「……そりゃまァそうだろうよ……しかしこんなでっけェケーキ、よく準備できたな」
銀時が呆れ顔で言うと、柚希が口を尖らせながら答える。
「だって、よく食べるメンバーなんだもん。それにシロ……じゃなかった、銀時が昔言ってたじゃない。いつかケーキをお腹いっぱい食べてみたいって。今ならその夢が叶えられるかなと思ったの」
「子供の頃の話じゃねーか、それ」
「そうだよ。でもさすがに料理と一緒にこんなケーキまでは作れないから、予約注文したんだけどね。昨日お店に最終確認しに行った時、持ち帰り方法を考えてなかった事に気付いたわけですよ。で、困っていたら、偶然お店の前で土方さんに会って、パトカーで運ぶ事を思いついちゃった、と」
柚希のまさかの言葉に、さすがの銀時も目を丸くした。
「マジかよ! よくそんなのを、この頭の固い副長サマが引き受けたな」
「つい先日から始まった『特マヨキャンペーン』とやらの当選券と交換で、職権乱用したんですぜ。ったく、士道不覚悟で今すぐ切腹しやがれってんだ。介錯なら喜んでしやすぜ」
「『土方さん公認でサボれるんですかィ』とか言って、面白がって一緒にパトカーに乗ったお前に言われたかねェよ!」
言い争い始めた土方と沖田を横目に、銀時は思い出す。
ーーそんじゃ昨日俺が見た二人は、交渉成立した辺りって事か? そりゃァ愛するマヨをゲットできりゃ頬も緩むだろうけどよ。それにしては土方の表情が……。
小さな引っ掛かりを感じはしたが、本当に疚しいところがあれば沖田まで巻き込む事は無いだろう。今のところは納得しておくか、と銀時は大きくため息をつきながら自分に言い聞かせる。
そんな銀時がチラリと視線を送った柚希から返ってきたのは、
「たまたま当選券を持ってたんだもん。まあ持ちつ持たれつってやつかな?」
と悪びれる事なく舌を出しながら言った柚希の笑顔だった。
