Trick or treat.

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「今頃、新八君たちはどこまで行ってるのかな」

 何かの作業を終え、キッチンから出て来た柚希が言った。

「さあな、神楽が一緒だから、商店街にある店全部を襲撃してくんじゃねーの?」

 怠そうに答えた銀時は例のごとく、ソファでゴロゴロしながらジャンプを読んでいる。ただしその服装はいつものズンボラジャージとは違い、狼の衣装を着ていた。ちなみに柚希の衣装は赤ずきんだ。
 今夜はハロウィンの為、かぶき町は賑わいを見せている。近隣の子供たちも、今夜だけは夜遊びが解禁され、思い思いの仮装をして商店街を回っていた。

「せっかく私たちもコスプレまで付き合ったんだから、一緒に回っても良かったんじゃない?」

 そう言いながら柚希が銀時の足元に近寄ると、当たり前のように銀時は体を起こして席を空ける。そこに柚希が腰かけるのが、二人にとっては自然な流れだった。

「シロの好きなお菓子をたくさんもらえたかもよ?」
「冗談じゃねェ。こんなおっさんが、子供と一緒にお菓子なんてもらってられっかよ」
「そう? 別に悪い事じゃ無いと思うけどな。長谷川さんなんて、率先して『子供たちの付き添いだ』ってついてってくれたよ」
「いや、多分それ目的が違うからね? マダオの真の目的は、食料の確保だからね!」

 呆れる銀時に、「知ってるよ。長谷川さんってば、ほんと面白い人だよね」と笑いながら柚希が言えば、何故か銀時が拗ねた顔を見せる。不思議に思った柚希が「シロ?」と名を呼ぶと、銀時は突然グイと柚希の肩を抱き寄せて言った。

「ムカつく」
「はい?」
「お前がそんな顔で他の男の話をするのって、銀さん結構ムカつくんだよね。しかも相手がマダオだし」
「……シロって、そんなにやきもち妬きだったっけ?」
「さァな」

 天井を見上げながら、わざとらしく口を尖らせている銀時は、まるで子供のようだ。それを見てやれやれとため息を吐いた柚希は、ソファの横に持ってきておいた赤ずきんのバッグをチラリと確認して言った。

「やきもち妬きの坂田銀時くん。本日限定の呪文は知ってますか~?」
「はァ?」

 突然の質問に、今度は銀時は疑問の声をあげる。

「今日しか言えないあの呪文、シロも知ってるよね?」
「いきなり何なんだよ、柚希
「ね、あの呪文言ってみてよ」

 ニヤニヤと怪しい笑みを見せながら言う柚希に訝しげな表情を見せながらも、何だかんだで柚希には逆らえない。仕方なく銀時はその呪文を口にした。

「……トリックオアトリート」
「はい、どうぞ」

 瞬間、満面の笑顔になった柚希が差し出したのは、赤ずきんのバッグ一杯に入ったお菓子。いくらかは市販の物も混じっているが、そのほとんどは手作りなのだろう。可愛くラッピングされている。

柚希、これ……」
「さっき子供達が出かける前に配ってたでしょ。ちゃんとシロの分も準備してあったんだよ。しかも中身はシロ専用のスペシャルバージョン!」
「……サンキュ」

 余程嬉しかったのか、少しだけはにかみながら言った銀時はそれを受け取ると、一番上に乗っていたクッキーの包みを開けて頬張った。
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