聖夜に君と幸せを
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【聖夜に君と幸せを】
そろそろ日付が変わる、12月24日の夜。
万事屋メンバーと一緒にクリスマスパーティーをした私は、一人のんびりと片付けをしていた。
新八くんは既に帰路につき、神楽ちゃんは食べ過ぎて押入れで熟睡。銀時はというと、がぶ飲みしたワインのせいか、ソファで完全に酔い潰れてしまっていた。
「やれやれ、いつもの事とは言え……」
散らかし放題の部屋を見ながらボヤキはしたが、こういう何気ない日常の面倒臭さもまた嬉しくて。
今の自分は、平穏な環境に身を置けているんだなぁと実感できる。
汚れた食器を片付け、テーブル周りも簡単に掃除してしまえば、あとは明日でも良いだろう。
そう考えた私は、眠りこけている銀時に声をかけた。
「ほらシロ、起きて。布団は敷いてあるからあっちで寝よう。風邪ひいちゃうよ」
一応眠ってしまった段階で毛布をかけてはおいたものの、このままでは間違いなく体調を崩すだろう。起こすのは可哀想だけれど、流石に私が彼を布団まで運ぶ事はできない。
「ねぇシロ、起きてってば」
「ん〜……」
体を揺らしてみても、反応はあれど起きる気配はなく。
こうなったら最後の手段、と私が選んだのはーー。
「……ッ!」
突然ガバリと銀時が起き上がる。
泥酔していたはずなのに、それを全く感じさせない鋭い目つきで私を睨んで来た理由は、たった一つだ。
「なんだ、柚希かよ……おっそろしい殺気を叩きつけてきやがって」
「だって何回呼んでも起きないんだもん。はい、このままお布団へゴー!」
「……こういう起こし方は辞めて……銀さんさすがに心臓もたないわ」
私を認識した途端、いつもの死んだ魚のような目に戻った銀時は大きなあくびをする。千鳥足で私に支えられつつ布団へと向かうと、そのまま素直に布団に潜り込み、あっという間に眠ってしまった。
「相当アルコールが回ってたのね。の◯太も真っ青の早寝だわ」
思わず吹き出しそうになったのを両手で押さえて堪えた私は、足音を立てないように襖を閉めるとそっと台所へと戻った。
時計を見れば、もう日付は変わり25日になっている。
「さて、と」
私もそろそろ寝なきゃいけない。でもその前に、最後の仕上げが残っていた。
普段あまり使っていない、棚の奥にしまっておいた紙袋を取り出す。
中には小さな包みが三つ。私から万事屋メンバーへのクリスマスプレゼントだ。
プレゼントを渡すなんて、何年振りだろう。また新たな幸せを噛み締めながら、部屋の隅に置かれているツリーの下に二つの包みを置く。
もちろんこれは、新八くんと神楽ちゃんのだ。
「神楽ちゃんは高級酢昆布セット。新八くんはイケメン風メガネ。朝になったら、気付いてくれるかな?」
初めてプレゼントを準備した昔の事を思い出す。
貰うのも嬉しいけれど、自分が準備した物で相手が喜んでくれる姿を見られる事が、どれだけ幸せなのかを知った瞬間だった。
「朝が楽しみ」
二人の顔を想像しながら私は笑みを浮かべると、最後の一つを持って奥の部屋へと向かう。
そして銀時の枕元に、そっと包みを置いた。
「シロは高級チョコレート……っと。本当は、残る物にしようかとも思ったんだけどねー。お店の人たちのオススメだったし」
プレゼントを買おうと店を巡っていた時、あちこちから声をかけられた。
既にかぶき町では、私が万事屋に居候している事は知られている。いつの間にか私は、この町に溶け込めていた。というよりは、町が銀時を通して私を受け入れてくれたと言った方が正しいかもしれない。
「皆、親身になって考えてくれたんだよ。これはかぶき町からのクリスマスプレゼントだね。メリークリスマス。……シロ」
大切な名を小さく口にした私は、ほんわかと心が温かくなるのを感じていた。
今夜は良い夢を見られそうだな、と思いながら布団に潜り込む。やがて心地良く訪れた眠気に、私はそのまま身を委ねたのだった。
眠りに就いてから、どのくらいの時間が経っただろうか。ふと何かの気配を感じた私は、ぼんやりと目を開けた。
動く人影が見え、ゴソゴソと何かをやっているのが分かる。その頭の形から銀時と言う事が分かったため、プレゼントに気付いたのかな?とワクワクしながら、私は寝たフリをして様子を見ていた。
ところが、どうも様子がおかしい。
銀時がこちらに近付いてくるのは分かるのだが、わざわざ気配を消している。
私にそんな事をする必要なんて無いのにと思いながらも、寝たフリを続けていると……。
カサッ
頭の上に何かが置かれた音がした。
そのまま布団へと戻ろうとする銀時を私が薄目で伺っていれば、不意に銀時の動きがピタリと止まる。そしてはぁっと大きなため息を吐き、こちらを振り向いた。
「……チッ。かっこわりィな。気付かれちまってたのかよ。起きてんだろ?柚希」
私が起きていた事に気付いた銀時が、バツが悪そうに言う。月明かりに浮かぶ銀時の顔は、ほんの少し恥ずかしそうに見えた。
「ごめん、何かが動く気配がしたから……」
何だか申し訳なく思いながらも、バレてしまったのなら仕方ない。私は先程から気になっていた疑問をぶつけた。
「これは何?」
枕元に置かれた小さな箱に手を伸ばす。
薄暗くてはっきりとは見えないが、可愛らしくラッピングされているのは分かった。
「……お前と同じだよ。女に贈る品なんざ分かんねーから、気に入るかは知んねーけど」
少し口を尖らせながら頭を掻く銀時。照れ具合から見て、これは相当悩んで選んでくれたのだろう。
その気持ちだけでも嬉しくて、私は言った。
「シロからクリスマスプレゼントをもらえるなんて、思ってもみなかったから嬉しいよ。あっちで開けても良い?」
「……ああ」
この部屋で電気を点けると神楽ちゃんが起きてしまう。私はそっと部屋を出て、隣の部屋へと移動した。
明るい部屋で改めて箱を見れば、クリスマスらしいラッピングが施されている。
丁寧に包みを開けると、中には小さな白い花をあしらったピアスが入っていた。
「可愛い……!」
思わず感嘆の声をあげた私に、後から部屋に入ってきた銀時がドヤ顔を見せる。
「だろ?銀さんの隠しきれないセンスの良さが、こんなとこにも現れちゃった感じ?」
「ズンボラ星のジャージを年中着てる人が、センスが良いかは分からないけどね」
「何その厳しいツッコミ。柚希ちゃんってば昔はそんな人じゃなかったのに……ッ!」
「もう、冗談だってば。凄く素敵だよ。嬉しい」
ちょっとからかうつもりが、割と本気で傷付いていたようだった為慌てて撤回した私は、改めてプレゼントを喜んだ。
早速付けて見せると、銀時が満足そうに微笑む。
「……やっぱ似合うな」
「ふふっ、ありがと。シロからこういう物をもらう日がくるなんてね。大切に付けさせてもらうよ」
「当たり前だっつーの。それを付けてる限り、お前は俺のモンだからな」
「え……?」
銀時の言葉の意味が分からなくて、私は首を傾げた。そんな私に、銀時はわざとらしくため息をつくと、手を伸ばしてくる。
そっと私を抱き寄せ、ピアスをつけた耳たぶに優しく口付けながら、銀時は言った。
「これを付けてる限り、柚希は俺を忘れらんねーだろ。要するに、もう二度とお前を手放す気はねェって事だよ。ったく、わざわざこんな事言わせんなバカヤロー」
そのまま私に顔を見せず、強く抱きしめてくる銀時。
きっと恥ずかしさで顔があげられないのだろう。その証拠に、伝わってくる鼓動はとてつもなく速い。
そんな銀時の気持ちが嬉しくて、どうやってこの気持ちに応えようかと私は必至に考えを巡らせた。
そして、言う。
「ずっと外さないよ。私も……忘れたくないから」
ハッとしたように体を震わせた銀時が、私を抱きしめていた腕の力を緩める。
ゆっくりと体を離すと、切ない表情で私を見る銀時の顔があった。
それは昔と変わらない、私を求めてくれている時の顔。
「……シロ」
改めて、大切な名を呼んだ。
「ありがとう」
「……ん」
ふわりと優しい笑みを浮かべた銀時が、私の頬に手を添える。私も微笑み返し、ゆっくりと目を閉じた。
「メリークリスマス、柚希」
小さく囁くように、銀時が言う。その言葉が耳に届くと同時に、私の唇は銀時の温もりを感じていたのだったーー。
〜了〜
そろそろ日付が変わる、12月24日の夜。
万事屋メンバーと一緒にクリスマスパーティーをした私は、一人のんびりと片付けをしていた。
新八くんは既に帰路につき、神楽ちゃんは食べ過ぎて押入れで熟睡。銀時はというと、がぶ飲みしたワインのせいか、ソファで完全に酔い潰れてしまっていた。
「やれやれ、いつもの事とは言え……」
散らかし放題の部屋を見ながらボヤキはしたが、こういう何気ない日常の面倒臭さもまた嬉しくて。
今の自分は、平穏な環境に身を置けているんだなぁと実感できる。
汚れた食器を片付け、テーブル周りも簡単に掃除してしまえば、あとは明日でも良いだろう。
そう考えた私は、眠りこけている銀時に声をかけた。
「ほらシロ、起きて。布団は敷いてあるからあっちで寝よう。風邪ひいちゃうよ」
一応眠ってしまった段階で毛布をかけてはおいたものの、このままでは間違いなく体調を崩すだろう。起こすのは可哀想だけれど、流石に私が彼を布団まで運ぶ事はできない。
「ねぇシロ、起きてってば」
「ん〜……」
体を揺らしてみても、反応はあれど起きる気配はなく。
こうなったら最後の手段、と私が選んだのはーー。
「……ッ!」
突然ガバリと銀時が起き上がる。
泥酔していたはずなのに、それを全く感じさせない鋭い目つきで私を睨んで来た理由は、たった一つだ。
「なんだ、柚希かよ……おっそろしい殺気を叩きつけてきやがって」
「だって何回呼んでも起きないんだもん。はい、このままお布団へゴー!」
「……こういう起こし方は辞めて……銀さんさすがに心臓もたないわ」
私を認識した途端、いつもの死んだ魚のような目に戻った銀時は大きなあくびをする。千鳥足で私に支えられつつ布団へと向かうと、そのまま素直に布団に潜り込み、あっという間に眠ってしまった。
「相当アルコールが回ってたのね。の◯太も真っ青の早寝だわ」
思わず吹き出しそうになったのを両手で押さえて堪えた私は、足音を立てないように襖を閉めるとそっと台所へと戻った。
時計を見れば、もう日付は変わり25日になっている。
「さて、と」
私もそろそろ寝なきゃいけない。でもその前に、最後の仕上げが残っていた。
普段あまり使っていない、棚の奥にしまっておいた紙袋を取り出す。
中には小さな包みが三つ。私から万事屋メンバーへのクリスマスプレゼントだ。
プレゼントを渡すなんて、何年振りだろう。また新たな幸せを噛み締めながら、部屋の隅に置かれているツリーの下に二つの包みを置く。
もちろんこれは、新八くんと神楽ちゃんのだ。
「神楽ちゃんは高級酢昆布セット。新八くんはイケメン風メガネ。朝になったら、気付いてくれるかな?」
初めてプレゼントを準備した昔の事を思い出す。
貰うのも嬉しいけれど、自分が準備した物で相手が喜んでくれる姿を見られる事が、どれだけ幸せなのかを知った瞬間だった。
「朝が楽しみ」
二人の顔を想像しながら私は笑みを浮かべると、最後の一つを持って奥の部屋へと向かう。
そして銀時の枕元に、そっと包みを置いた。
「シロは高級チョコレート……っと。本当は、残る物にしようかとも思ったんだけどねー。お店の人たちのオススメだったし」
プレゼントを買おうと店を巡っていた時、あちこちから声をかけられた。
既にかぶき町では、私が万事屋に居候している事は知られている。いつの間にか私は、この町に溶け込めていた。というよりは、町が銀時を通して私を受け入れてくれたと言った方が正しいかもしれない。
「皆、親身になって考えてくれたんだよ。これはかぶき町からのクリスマスプレゼントだね。メリークリスマス。……シロ」
大切な名を小さく口にした私は、ほんわかと心が温かくなるのを感じていた。
今夜は良い夢を見られそうだな、と思いながら布団に潜り込む。やがて心地良く訪れた眠気に、私はそのまま身を委ねたのだった。
眠りに就いてから、どのくらいの時間が経っただろうか。ふと何かの気配を感じた私は、ぼんやりと目を開けた。
動く人影が見え、ゴソゴソと何かをやっているのが分かる。その頭の形から銀時と言う事が分かったため、プレゼントに気付いたのかな?とワクワクしながら、私は寝たフリをして様子を見ていた。
ところが、どうも様子がおかしい。
銀時がこちらに近付いてくるのは分かるのだが、わざわざ気配を消している。
私にそんな事をする必要なんて無いのにと思いながらも、寝たフリを続けていると……。
カサッ
頭の上に何かが置かれた音がした。
そのまま布団へと戻ろうとする銀時を私が薄目で伺っていれば、不意に銀時の動きがピタリと止まる。そしてはぁっと大きなため息を吐き、こちらを振り向いた。
「……チッ。かっこわりィな。気付かれちまってたのかよ。起きてんだろ?柚希」
私が起きていた事に気付いた銀時が、バツが悪そうに言う。月明かりに浮かぶ銀時の顔は、ほんの少し恥ずかしそうに見えた。
「ごめん、何かが動く気配がしたから……」
何だか申し訳なく思いながらも、バレてしまったのなら仕方ない。私は先程から気になっていた疑問をぶつけた。
「これは何?」
枕元に置かれた小さな箱に手を伸ばす。
薄暗くてはっきりとは見えないが、可愛らしくラッピングされているのは分かった。
「……お前と同じだよ。女に贈る品なんざ分かんねーから、気に入るかは知んねーけど」
少し口を尖らせながら頭を掻く銀時。照れ具合から見て、これは相当悩んで選んでくれたのだろう。
その気持ちだけでも嬉しくて、私は言った。
「シロからクリスマスプレゼントをもらえるなんて、思ってもみなかったから嬉しいよ。あっちで開けても良い?」
「……ああ」
この部屋で電気を点けると神楽ちゃんが起きてしまう。私はそっと部屋を出て、隣の部屋へと移動した。
明るい部屋で改めて箱を見れば、クリスマスらしいラッピングが施されている。
丁寧に包みを開けると、中には小さな白い花をあしらったピアスが入っていた。
「可愛い……!」
思わず感嘆の声をあげた私に、後から部屋に入ってきた銀時がドヤ顔を見せる。
「だろ?銀さんの隠しきれないセンスの良さが、こんなとこにも現れちゃった感じ?」
「ズンボラ星のジャージを年中着てる人が、センスが良いかは分からないけどね」
「何その厳しいツッコミ。柚希ちゃんってば昔はそんな人じゃなかったのに……ッ!」
「もう、冗談だってば。凄く素敵だよ。嬉しい」
ちょっとからかうつもりが、割と本気で傷付いていたようだった為慌てて撤回した私は、改めてプレゼントを喜んだ。
早速付けて見せると、銀時が満足そうに微笑む。
「……やっぱ似合うな」
「ふふっ、ありがと。シロからこういう物をもらう日がくるなんてね。大切に付けさせてもらうよ」
「当たり前だっつーの。それを付けてる限り、お前は俺のモンだからな」
「え……?」
銀時の言葉の意味が分からなくて、私は首を傾げた。そんな私に、銀時はわざとらしくため息をつくと、手を伸ばしてくる。
そっと私を抱き寄せ、ピアスをつけた耳たぶに優しく口付けながら、銀時は言った。
「これを付けてる限り、柚希は俺を忘れらんねーだろ。要するに、もう二度とお前を手放す気はねェって事だよ。ったく、わざわざこんな事言わせんなバカヤロー」
そのまま私に顔を見せず、強く抱きしめてくる銀時。
きっと恥ずかしさで顔があげられないのだろう。その証拠に、伝わってくる鼓動はとてつもなく速い。
そんな銀時の気持ちが嬉しくて、どうやってこの気持ちに応えようかと私は必至に考えを巡らせた。
そして、言う。
「ずっと外さないよ。私も……忘れたくないから」
ハッとしたように体を震わせた銀時が、私を抱きしめていた腕の力を緩める。
ゆっくりと体を離すと、切ない表情で私を見る銀時の顔があった。
それは昔と変わらない、私を求めてくれている時の顔。
「……シロ」
改めて、大切な名を呼んだ。
「ありがとう」
「……ん」
ふわりと優しい笑みを浮かべた銀時が、私の頬に手を添える。私も微笑み返し、ゆっくりと目を閉じた。
「メリークリスマス、柚希」
小さく囁くように、銀時が言う。その言葉が耳に届くと同時に、私の唇は銀時の温もりを感じていたのだったーー。
〜了〜
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