背中越しの約束
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二つ隣の町へと手紙を届ける依頼は一時間とかからず終了。
初めての場所だから少しは迷うかと思っていたが、意外とあっさり目的地が見つかり、二人は時間を持て余すこととなる。
「簡単なお仕事だったねぇ」
「そりゃそうだろ。普段はこんなもんだぜ。いつも波乱万丈な冒険活劇みたいな依頼ばっかじゃ、こっちの身がもたねェし」
だから万年金欠なんだけどな、ってな事をボヤきながら銀時は再びスクーターを走らせた。
万事屋方面に向かいながら町を走り抜けていたが、不意に銀時が言う。
「なァ、今って寒いか?」
「どうして? 別に寒くはないよ。むしろポカポカしてて気持ち良いかな」
「だったらせっかくだし、少し遠回りになるが海を見ながら帰ろうぜ」
「海?」
銀時からの突然の提案に、柚希の目がキラキラと輝く。
「行きたい!」
「即答だな。りょーかい」
柚希の答えを聞いた銀時はすぐ次の信号を曲がり、海へと進路を変えた。
「ねぇねぇ、海までどのくらいかかるの?」
「そうだなァ、二十分くらいだと思うぜ」
「だったらそこのコンビニに寄って。おやつ買ってくるから」
「マジで? 柚希のおごり?」
「当たり前でしょ、運転してくれてるんだもん。ちょっと待っててね」
まるで遠足に行くかのように浮足立ちながら、リュック一杯にお菓子を買い込んでくる柚希。もちろんその中身は、銀時の好きな物ばかりが詰め込まれている。
「走りながらでも食べられる物を選んでるから、欲しい物があれば言ってね」
「おう。サンキュ」
スタート前に全てを見せてあるため、いつでも銀時の口に放り込む準備は万全だ。案の定、少し走った所ですぐに注文は始まった。
「なァ柚希、チョコ食べたい」
「はいはい」
「今度はクッキー」
「ちょっと待ってよ」
「口直しに塩せんべい」
「……次々種類を変えていかないでよね!」
そうは言いながらも、リュックの中をかき回しつつ銀時の口に注文の品を運ぶ柚希。しかも塩せんべいの後は喉が渇くだろうと、言われる前からいちご牛乳をスタンバイしておく甘やかしぶりだ。
「ご満足頂けましたか?」
それだけ食べればさすがにお腹が膨れたのか、大きなげっぷをする銀時に苦笑いをしながら柚希が言った。
「うむ、余は満足じゃ」
「どこのバカ殿よ、それ」
「何でバカ殿限定!?」
二人の掛け合いも絶好調で、ますますテンションも上がってきている。
――ただ二人で海へと向かっているだけなのに、こんなにも楽しいなんて。
言葉にはしていないが、各々の心には同じ思いがあった。
「そろそろ海岸線に出るし、スピード上げてみるか。しっかり掴まってろよ、柚希!」
「分かった!」
銀時に言われてリュックを背負いなおした柚希は、ギュッと銀時の背中にしがみつく。広く温かい背中はとても安心感があって、柚希の顔が綻んだ。
「あ、も少し体を押し付けといて良いからね。いつも新八ばっか後ろに乗せてっから、銀さんあんまし2ケツの醍醐味を感じられてないんだわ」
「そういう事ばっかり言わないの。ほら、安全運転でお願いね」
「へーへー。姫君の仰せのままに」
少し残念そうにしながらも、笑顔で答えた銀時はアクセルをふかしてスピードを上げる。やがて潮の香りが風に乗って届き、目の前に現れたのは――。
「海だ~!」
思わず柚希が立ち上がり、バランスを崩した銀時が慌てて立て直す。
「バカヤロー! 危ねェだろ」
「ごめんごめん。だって海が見えたんだもん。つい興奮しちゃって」
「ったく、大人になって少しは落ち着きが身に付いたかと思ってたけど、相変わらずだな」
「それはお互い様でしょ」
キラキラと太陽の光を反射している海を眺めながら答える柚希は、本当に嬉しそうだ。銀時に言われた嫌味も気にならないのか、満面の笑みで海を指差しながら言う。
「町からそう遠く無いからどんなもんかと思ってたけど、凄く奇麗な海だね」
「だろ? 新八や神楽も気に入ってるんだぜ」
「そうなんだ。……じゃぁ今度は皆で一緒に来よう。お弁当を持ってピクニック感覚でさ」
「良いんじゃねェの? アイツらも喜ぶだろうしよ」
「約束だからね!」
指切りの代わりか、銀時の首に腕を絡ませる柚希。横から顔を覗き込むと、銀時はチラリと視線を向けて口角を上げた。
視線が絡み、ほんの一瞬だけこちらを向いた銀時に『自ら』唇を重ねた柚希は、もう一度小さく「約束だよ」と耳元で囁いてシートに座り直す。その顔がほんの少しだけ赤らんでいた事に、銀時は気付いていただろうか。
「さ~て、日も傾き始めてるし、そろそろ帰るとしますか」
前を向き、何事も無かったかのように言った銀時の頬にもうっすらと赤みが差してはいたが、柚希からは見えない。
背中越しに柚希がコクリと頷いたのを感じ取った銀時は、
「しっかり景色を堪能しとけよ」
と言うと速度を上げ、万事屋へとスクーターを走らせたのだった。
〜了〜
2018/3/11
初めての場所だから少しは迷うかと思っていたが、意外とあっさり目的地が見つかり、二人は時間を持て余すこととなる。
「簡単なお仕事だったねぇ」
「そりゃそうだろ。普段はこんなもんだぜ。いつも波乱万丈な冒険活劇みたいな依頼ばっかじゃ、こっちの身がもたねェし」
だから万年金欠なんだけどな、ってな事をボヤきながら銀時は再びスクーターを走らせた。
万事屋方面に向かいながら町を走り抜けていたが、不意に銀時が言う。
「なァ、今って寒いか?」
「どうして? 別に寒くはないよ。むしろポカポカしてて気持ち良いかな」
「だったらせっかくだし、少し遠回りになるが海を見ながら帰ろうぜ」
「海?」
銀時からの突然の提案に、柚希の目がキラキラと輝く。
「行きたい!」
「即答だな。りょーかい」
柚希の答えを聞いた銀時はすぐ次の信号を曲がり、海へと進路を変えた。
「ねぇねぇ、海までどのくらいかかるの?」
「そうだなァ、二十分くらいだと思うぜ」
「だったらそこのコンビニに寄って。おやつ買ってくるから」
「マジで? 柚希のおごり?」
「当たり前でしょ、運転してくれてるんだもん。ちょっと待っててね」
まるで遠足に行くかのように浮足立ちながら、リュック一杯にお菓子を買い込んでくる柚希。もちろんその中身は、銀時の好きな物ばかりが詰め込まれている。
「走りながらでも食べられる物を選んでるから、欲しい物があれば言ってね」
「おう。サンキュ」
スタート前に全てを見せてあるため、いつでも銀時の口に放り込む準備は万全だ。案の定、少し走った所ですぐに注文は始まった。
「なァ柚希、チョコ食べたい」
「はいはい」
「今度はクッキー」
「ちょっと待ってよ」
「口直しに塩せんべい」
「……次々種類を変えていかないでよね!」
そうは言いながらも、リュックの中をかき回しつつ銀時の口に注文の品を運ぶ柚希。しかも塩せんべいの後は喉が渇くだろうと、言われる前からいちご牛乳をスタンバイしておく甘やかしぶりだ。
「ご満足頂けましたか?」
それだけ食べればさすがにお腹が膨れたのか、大きなげっぷをする銀時に苦笑いをしながら柚希が言った。
「うむ、余は満足じゃ」
「どこのバカ殿よ、それ」
「何でバカ殿限定!?」
二人の掛け合いも絶好調で、ますますテンションも上がってきている。
――ただ二人で海へと向かっているだけなのに、こんなにも楽しいなんて。
言葉にはしていないが、各々の心には同じ思いがあった。
「そろそろ海岸線に出るし、スピード上げてみるか。しっかり掴まってろよ、柚希!」
「分かった!」
銀時に言われてリュックを背負いなおした柚希は、ギュッと銀時の背中にしがみつく。広く温かい背中はとても安心感があって、柚希の顔が綻んだ。
「あ、も少し体を押し付けといて良いからね。いつも新八ばっか後ろに乗せてっから、銀さんあんまし2ケツの醍醐味を感じられてないんだわ」
「そういう事ばっかり言わないの。ほら、安全運転でお願いね」
「へーへー。姫君の仰せのままに」
少し残念そうにしながらも、笑顔で答えた銀時はアクセルをふかしてスピードを上げる。やがて潮の香りが風に乗って届き、目の前に現れたのは――。
「海だ~!」
思わず柚希が立ち上がり、バランスを崩した銀時が慌てて立て直す。
「バカヤロー! 危ねェだろ」
「ごめんごめん。だって海が見えたんだもん。つい興奮しちゃって」
「ったく、大人になって少しは落ち着きが身に付いたかと思ってたけど、相変わらずだな」
「それはお互い様でしょ」
キラキラと太陽の光を反射している海を眺めながら答える柚希は、本当に嬉しそうだ。銀時に言われた嫌味も気にならないのか、満面の笑みで海を指差しながら言う。
「町からそう遠く無いからどんなもんかと思ってたけど、凄く奇麗な海だね」
「だろ? 新八や神楽も気に入ってるんだぜ」
「そうなんだ。……じゃぁ今度は皆で一緒に来よう。お弁当を持ってピクニック感覚でさ」
「良いんじゃねェの? アイツらも喜ぶだろうしよ」
「約束だからね!」
指切りの代わりか、銀時の首に腕を絡ませる柚希。横から顔を覗き込むと、銀時はチラリと視線を向けて口角を上げた。
視線が絡み、ほんの一瞬だけこちらを向いた銀時に『自ら』唇を重ねた柚希は、もう一度小さく「約束だよ」と耳元で囁いてシートに座り直す。その顔がほんの少しだけ赤らんでいた事に、銀時は気付いていただろうか。
「さ~て、日も傾き始めてるし、そろそろ帰るとしますか」
前を向き、何事も無かったかのように言った銀時の頬にもうっすらと赤みが差してはいたが、柚希からは見えない。
背中越しに柚希がコクリと頷いたのを感じ取った銀時は、
「しっかり景色を堪能しとけよ」
と言うと速度を上げ、万事屋へとスクーターを走らせたのだった。
〜了〜
2018/3/11
