眠れない夜(アスキラ)

 これで、何度目の寝返りになるだろう。僕は今夜も眠れない夜を過ごしていた。

 目を開けていても、閉じていても変わらない闇。その事実は今の僕には辛くて……悲しくて。
 張り裂けそうな心を必死に押さえつけながら、今僕は一人、この長い夜をなんとかやり過ごそうとしていた。

「……あと何回、君と刃を交えたらいいの?」

 今日もアスランと戦った。
 戦いたくなんてないのに。僕たちの置かれているこの状況は、それを決して許してはくれない。

「あと何回……殺し合えばいいの?」

 心を。





 僕たちはまだ生きている。
 でも、僕の心はもう何度も死んでいるんだよ。
 君に刃を向ける度に――君に刃を向けられる度に。

「アスラン……」

 こんなにも君が大切なのに。君がいなければ、僕は何もできないのに。

「アスラン……」

 小さく紡いだ言の葉は、君に届くことなく消える。

 もしも僕がMSに乗っていなければ、こんな苦しい思いをしなくて済んだのだろうか。
 もしも君がザフトにいなければ、こんな悲しい思いをしなくて済んだのだろうか。

 もしも――。

 そんな言葉ばかりがぐるぐると頭を駆けめぐる。眠りを妨げる、その思い。

「戻りたいよ、三年前のあの頃に……」

 こぼれ落ちる涙。これを止められるのはアスラン、君だけなんだよ。

「アスラン……」

 今夜も、眠れない夜は更けていく――。

~END~
2/2ページ
応援👍