眠れない夜(アスキラ)

 これで、何度目の寝返りになるだろう。俺は今夜も眠れない夜を過ごしていた。

 いつもは大して気にもとめないフットライトが、今はやけに目障りで。
 何もかも忘れて眠らせて欲しいのに。その光は、嫌でも自分を現実の世界へと呼び戻す。

 溢れ出そうな激情を必死に押さえつけながら、今俺は一人、この長い夜をなんとかやり過ごそうとしていた。

「……あと何回、お前を泣かせるんだろうな」

 今日もキラと戦った。
 戦いたくなんてないのに。俺達の置かれている状況は、それを決して許してはくれない。

「あと何回……切り裂けばいい?」

 思い出を。





 俺達はまだ生きている。
 でも、俺の心はもう死んだも同然なんだ。
 お前を傷つける度に――お前に傷つけられる度に。

「キラ……」

 こんなにもお前が必要なのに。お前がいなければ、生きる意味などありはしないのに。

「キラ……」

 小さく紡いだ言の葉は、お前に届くことなく消える。

 もしもお前がMSに乗っていなければ、こんな痛い思いをしなくて済んだのだろうか。
 もしも俺がザフトにいなければ、こんな切ない思いをしなくて済んだのだろうか。

 もしも――。

 そんな言葉ばかりがぐるぐると頭を駆けめぐる。眠りを妨げる、その思い。

「もう戻れないのか? 三年前の俺達には」

 胸を走る強い痛み。この苦しみを癒せるのはキラ、お前だけなんだ。

「キラ……」

 今夜も、眠れない夜は更けていく――。

~END~
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